ベートーヴェン 交響曲第6番 5楽章

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概説

標題「牧人達の歌、それは嵐の後の幸せに満ちた感謝の気持ち」
ロンド的にしてソナタ的な形式
F dur、8/6拍子
Allegretto

提示部

主題A提示部(1-31)

①導入的部分(1-8)
<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
・前の楽章から途切れることなく連鎖楽節になっていて(F dur)の属3和音(C major)で開始されるが、それはつまり前の楽章の最後の調性の主和音に他ならない。さて、第1楽章冒頭主題と同じ空5度のバスの上でクラリネットが和音構成音3音によって楽曲を開始。4小節過ぎた所で(C major)の空5度バスが続いているにもかかわらず、チェロで(F major)の空5度が同時に鳴らされ、上声はホルンが(C major)の和音構成音を演奏し、2重調性部分を形成する。この属和音部分での主和音の先取りは交響曲第5番にも見られたし、すでに交響曲第3番英雄の1楽章において重要な役割を果たしていた。効果として覚えておくとよい。

②主要主題A(9-16)
・最後までそれぞれの和音の和音構成音だけで形成された主要主題Aがバイオリンで奏される。

③主題Aの繰り返し(17-31)
・伴奏が細分化され、楽器が増え、音量を増しながら更に2回主題Aが繰り返され、3回目には管弦総奏に到達する。

主題B提示部(32-49)

①副主題B部分(32-39)
・主題Aの最後の部分から派生して、またしても和音構成音だけからなる主題B(32-33)が2小節弦だけで奏される。
・続けて管楽器を伴い伴奏を変化させて主題Bが繰り返され(34-35)、(32-35)の4小節で一つの括りになっている。
・今度は主題Bの旋律にトリル修飾音が加わって、4小節の括りが繰り返される。(36-39)

③主題Bの最後の動機に基づく部分(40-49)
・第1楽章冒頭主題の最重要動機を思い起こさせるような動機に基づく部分。

④主題Bの終止から主題Aへの推移(50-63)
・終止的フレーズが2回繰り返されて終止カデンツ部分(54-)に入ると、(C dur)Ⅰの2転(つまり最後の属和音から主和音に向かう途中で)のまま保続低音が伸ばされ、楽章の導入と同じようにやがて(F dur)の主和音が空五度でバスに入って、主題Aを迎える。

主題A再提示部(64-79)

・伴奏形が変化して、主題が奏されるが、2回目の繰り返しの途中で(B dur)に転調すると、主題も変化して、そのまま主題Cに突入。

中間主題部(80-116)

①主題C部分(80-98)

・拍の裏(3拍目と6拍目)に偶成的和音変化を置き旋律に和声進行による揺らぎを持たせたような特徴のある主題Cが、短いながらそれまでとは違った色彩を与え中間部分の役割を十分に果たしている。・・・そろそろ燃料切れで疲れてきた。ちょっと飛ばす。

②そのまま再現部に向けた推移へ(99-116)
・音階的パッセージが現われて再現部に向かう。

再現部

主題A再現部分(117-139)

・主題Aは音階的パッセージに変奏され(主題Aの構成音に基づく厳格な変奏)、より穏やかでかつ潤って(・・・)再現。室内楽的書法で、単純な対主題が印象的。和音構成音に基づくパッセージと和音構成音だけの対主題で、これだけの効果が出せることを知った君は、一つ自分も書いてやろうと思って全然うまく行かないわけだ。再現部分も提示部分と同様主題を3回繰り返すが、パッセージが音階的で細かく動くため時間が横に引き延ばされているような印象を受ける。

主題B再現部分(140-176)

・今度は(F dur)のまま主題Bが提示され、こちらは提示部分とほぼ同じ。

主題A再再現部分(177-205)

・いや、決して分類の名前で遊んでいるわけではないのですが。今度の主題Aは、チェロとファゴットがユニゾンで伴奏なしで提示、しかも音階パッセージを止め、主題本来の形で提示されハッとするような効果を持つ。遅れて次第に楽器が導入され比較的短い間にクレシェンドをしながら雄大な管弦総奏でクライマックスに到達する。2声で始まった主題Aが14小節目に20声(鳴っている音の数の意味)に到達するこのクライマックスの形成は、改めて譜面を見た所、たった一つも非和声音がない。全部が和音構成音!さらにこの状態はコーダに突入する205小節まで変らない!!!翻ってみてみれば、元々の主題Aも、Ⅱ7の第7音は元々繋留音ではあるものの、和音構成音だけで作成され、繰り返しの中で辛うじて繋留が使われているだけだし、主題Bもトリルが出てくるまで完全に構成音だけで成立している。主題B部分の後半部分でイ音が効果的に使用されて新鮮に聞こえるのはその為でもあるのかもしれない。だからこそ、広義の非和声音に分類できる中間主題Cのバックビートでの偶成和音があれほどまでに効果を発揮したのだろう。それにしてもこの部分はⅡ7の7音さえも避けられている。丁度第1楽章の中間部が明確な理念によって主和音讃歌を奏でたように、最終楽章には和音構成音という明確なテーマがあったことに、今頃になって漸く気が付くのであった。それはもちろん楽曲を無視した理念ではなく、中間部を生かすための、経過音に満ちた音階パッセージをさらに生かすための、作曲理念であった。暇な人は非和声音に印でも付けて、どの部分に多いのか、数は幾つなのかなど調べてみてください。(ただし、非和声音ということでは先取和音は使用されている。むしろ和音構成音かどうかで分類した方がいいかも。)

コーダ(206-164)

・今度は音階パッセージの主題Aがファゴットとチェロのユニゾンで開始され、同様に楽器が順次投入され、クレシェンド、再びffでクライマックスが形成される。
・最後は余韻に当たる部分。もう次の曲に行かないと。

2004/7/2

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