ベートーヴェン 交響曲第7番 第2楽章

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交響曲第7番2楽章

Allegretto
a moll,2/4

概説

・全体の作りは本文を見てください。この第2楽章はオスティナート型変奏曲とソナタ形式的な中間部とコーダの意味合いが絶妙に結びついて、1楽章同様ただ1つのリズム動機R1による、ある種の造形美を獲得しているようです。さらに考え調べればその時間だけまだまだ得られるものがあるでしょう。個人的にはシューベルトの未完成の替わりにこの第7番交響曲がもし2楽章どまりの未完成交響曲だったら、どうだろうか、などと下らない事を考えてしまったりなんかして。

A部分前半(1-101)

導入とオスティナート型主題O提示(1-26)(a moll)

<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
・管楽器による(a moll)のⅠの2転和音が鳴らされ楽曲が開始。2転の持つ次ぎに移行したくて転げ出しそうな不安定さを知りたければ、この楽章の頭を何度も聞くのが手っ取り早い。
・続いてA部分を構成する、常に変わらずに提示されるオスティナート的な意味を持ったビオラ旋律と、これから合計4回続けて繰り返される主題Aの土台としてのベースラインが提示され、真の主題の前夜として日の出を待つ。(何だか変な楽曲解析を模索中か?)このオスティナート主題をOとする。
・ついでに、このオスティナート主題Oの開始のリズム(タータタタンタン・・・またこれか)は第1楽章のリズム動機R1のように第2楽章全体を統一する為の重要リズム動機となる。1楽章に続く一つの楽章に一つのリズム、ベートーヴェンがこの2楽章に込めた試みの意図が明らかになってくる。このリズムはスタッカートを使用して表わされ、短調でトーンも暗いが、リズミカルで霧の中の舞踏のよう。あまり使うこともなさそうだが、これをリズム動機R1とでもしておこう。
・全体の構成としては、例えばバス定旋律と和音形が一通り表わされた後の主声部導入を実際の主題として、バス定旋律繰り返しに乗せて主題の様々な変奏が行われていくバロック変奏曲の一つのパターンのように、この楽曲でも定旋律と和声がまず提示され(1-26)、27小節から旋律的旋律が導入、続いてその変奏が拡大しながら続いてA部分前半後半を形成する。ただしこの楽曲では最重要オスティナート型旋律はベースラインではなくヴィオラ旋律Oの部分であるし、27小節目から現われる旋律的主題はその後次々に形を変えるのではなく、ずっと同じ旋律のままオスティナート型旋律と一体化して、最後のクライマックスでフゲッタ風の対位法の力を借りて性格変奏による別の旋律型に変化するだけなので、実際上はオスティナート主題と旋律的主題が結びついた形で一つの主題Aを形成していると考えることが出来る。このため27小節目からヴィオラと第1チェロで開始される旋律的主題をPと定義して、OPの絡み合った(27-50)を全体で主題Aとし、この考えに基づいて楽曲解析することにしよう。その前に全体構成の続きをまとめておくと、A部分前半と後半にまたがる変奏の間に、中間部的B部分がオスティナート変奏曲から離れた、情景の異なる場面を提示し、再び変奏曲に返す構成になっている。この時の中間部の効果を元に、その後A部分がクライマックスを迎えた後に、再度中間部Bを短く提示しそのまま終止部に移っていく。この2回目の中間部Bの効果と意義についても十分に考えてみるだけの価値があるが、今回は残念ながら飛ばしましょう。

旋律的主題A提示(27-50)

・弦楽器によって、主題前夜(1-26)を含めて4回のオスティナート主題Oによる変奏を支える同一ベースラインの旋律に乗せて、オスティナート主題Oと、それに対して誕生した旋律主題Pが絡み合って主要主題Aが形成される。OとPは緊密な対位関係を持ち、2重奏で全体として主題Aを形作る。その関係はオスティナート型の同質性を持って見ればOが主で、Pは最終的にOから派生した対主題であるが、旋律的主体性を考えれるとPが重要な役割を果たし、結果としてOPが絡み一つの主題Aとして機能している。オスティナート主題Oだけの提示を主題Aとしても構わないが、楽曲全体における旋律Pの印象と効果を考えると、OPの重なり合うこの部分を主題Aとして、それ以前の部分を主題派生前の原型とでも置いた方が、この楽曲をうまく説明できそうだ。よってこの部分を主題Aとすることにする。
・ただし学生楽曲解析でこんな回答を提出すれば赤点居残りちゃぶ台崩壊は必至なので、初めの主題O提示部分をテーマとして、君のためにはこの部分を第1変奏としておこう。以下はこの楽曲解析の変奏番号に1を足して行ってくれたまえ。(何様だ!)
・この主題の和声を眺めてみると、次の調に転調するかのように現われた長3和音が、次の和音で短3和音に変わって、後退したかのように調性のやり直しを行う、ためらいながらの転調が非常に効果的に使用されている。

主題A第1変奏(51-74)

・弦楽器だけで音域を広め、内声の動きを活発化、ゆっくりクレッシェンドしながら主題の変奏が行われる。途中から効果音として管楽器が加わり、管楽器での主題提示を待つ。

主題A第2変奏(75-101)

・フォルティッシモの管弦総奏によって第2変奏が行われるが、オスティナート主題Oはフルートで行われ、ヴァイオリンの対旋律Pと絡み合う。
・後半次第に音量を落とすと、主題Aがピアノで閉じられ、主題Aのエコーが3小節加わって次のB提示部分に移る。

中間部B(102-149)A dur

・非常に短いが、a-b-c-b'の形になっているこの中間部Bは、最後にもう一度表わされるものの、この部分がまさに楽曲の中間部として機能し、後半の繰り返しはクライマックスの後の楽曲終止、ソナタ形式ならコーダの部分に相当する。

a部分A dur
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・上声旋律から8分音符が消え、スラーによってなめらかに4分音符の旋律が演奏され、伴奏にこれまで使われなかった3連符が登場。この3連符が中間部B全体の伴奏形となる。そして同時に(A dur)の穏やかな世界に転調して、A部分に対置されるB部分を形作っている。このB部分はベースラインがリズム動機R1の1小節めだけを連続的に繰り返す同音保持を特徴として、やはりR1に従属している。それに対してクラリネットとファゴットで始まる上声は、その始まり(102-108)は第1楽章の序奏開始の旋律(1-6)から生み出されているようで、4分音符を主体にして116小節まででa部分を形作る。(102-116)

b部分E dur
・続いてB部分内の属調である(E dur)に転調し、クラリネットによる上下に大きく動く三連符を含んだより活発な旋律が現われ、華やかな印象を与える。(117-122)

c部分A dur
・中間部Bの主調である(A dur)に戻って、先ほどのa部分に対応して、やはり第1楽章の序奏開始の旋律の途中(4小節目)から取られたと思える(E→Fis→E→E→Gis→Fis→E)とそれに対応する終止型を一つのペアとして2回繰り返されるが、実際の調性は(A dur)のⅣ調の属和音と主和音の属和音の交替が長く続き、途中から(F dur)続いて(C dur)と転調するなど展開推移的要素に富んでいる。(123-138)

b'部分C dur
・転調した(C dur)で再びb部分の旋律形が繰り返され、最後の3連符下行形が拡大され繰り返され推移しA部分後半に戻っていく。

A部分後半(150-224)

主題A第3変奏(150-182)

・A部分前半最後の第2変奏からさらに発展した形で、主題Aが再現。今度はオスティナート主題Oが弦楽器ベースラインに登場し、それに対して旋律主題Pがフルート、オーボエ、ファゴットの3種類で奏され、伴奏形も初めて16分音符が使用されるなど主題AのOP形が3回目の変奏で最高点に到達。

主題A第4変奏(225-224)

・しかし、真のクライマックスは第3変奏まで形を変えずに繰り返されていたOP型が破棄され、変奏された新しい形によってもたらされる。しかもそれはフゲッタ風の対位法的導入によって導かれ、いったん2声から導入され直すことによって、短い小節数で長い拡大を経てクライマックスに到達したような効果を出している。この対位法的導入部分は、主題Aが第3変奏まで拡大してきた事象と同じ力を持っているようだ。さらにこの対位法的部分はオスティナート主題Oの断片と、それに対する16分音符の対旋律によって順次声部を拡大していくのだが、この対位法的に導かれた主題Oに対する対旋律こそ、第4変奏でOの対旋律となる旋律的主題Pの性格的な変奏(というより代替旋律)になっている。こうして最後の主題Aが完全に登場しホモフォニックな管弦総奏を築くクライマックスは214小節目からになるが、フゲッタ風導入部分からこのクライマックスまでをまとめて第4変奏とする。

終止部分(225-278)

・ピアノでB部分の部分aが中間部Bのエコーのように再現されるが次第に力をなくしリズム動機R1による特徴あるオスティナート主題のかけらとその終止変形の断片的な提示による終止によって曲を閉じる。

2005/1/2
2005/1/7改訂

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