初詣(はつもうで)

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除夜の鐘(じょやのかね)

 年末から年始を挟んで打ち鳴らされる108回の鐘は、煩悩の数を表すとも、一年の歳月を表すともされる。つき始めるタイミングはそれぞれで、絶対的な決まりはない。 「百八の鐘」ともいう。以下は「ウィキペディア」の部分引用。

 除夜の鐘(じょやのかね)は、日本仏教にて年末年始に行われる年中行事の一つ。12月31日の除夜(大晦日の夜)の深夜0時を挟む時間帯に、寺院の梵鐘を撞(つ)くことである。除夜の鐘は多くの寺で108回撞かれる。

喧騒を闇へ返して鐘の音

[飯田蛇笏(いいだだこつ)]
除夜の鐘幾谷こゆる雪の闇

[石田波郷(いしだはきょう)]
百方に餓鬼(がき)うづくまる除夜の鐘

[中原中也(詩の一部)]
除夜の鐘は暗い遠いゝ空で鳴る

去年今年(こぞことし)

・「古今和歌集」の巻頭を飾る歌に、在原元方(ありはらのもとかた)の
  「年のうちに春は来にけりひととせを
       去年とやいはむ今年とやいはむ」
というのがある。内容は、
  「旧暦の正月の前に立春が来てしまったが、
     春の巡り来たまでのこの一年を、
    去年と呼んだらいいだろうか、
       今年とよんだらいいだろうか。」
といったものだが、ここから、去年から今年に流れ去る時の流れを表わす、分類としては「正月の季語」となった。

去年今年夜間警備の靴高く

去年掛けて今年を祝ふ仲間かな

去年今年つら/\と書く事もなし

[飯田蛇笏]
去年今年闇にかなづる深山川(みやまがわ?)

初詣(はつもうで)

・除夜の鐘は仏教的行事なのに、明けて初詣は神道的行事。クリスマスならキリスト教で、何でもありのうちに、神社にお参りに出かけ、年明けはじめの祈りを捧げるもの。

初参(はつまいり)、初社(はつやしろ)、初祓(はつはらい)、初神籤(はつみくじ)など。

丑(うし)どもの押し交(か)ふ声や初社

飛んできた金受け止めて初詣

いつ消えた凶の財布や初神籤(はつみくじ)

振り袖にあなたのことを初まいり

[大橋櫻坡子(おおはしおうはし)(1895ー1971)]
住吉に歌の神あり初詣

[西行法師]
なにごとの
  おはしますをば 知らねども
 かたじけなさに なみだこぼるゝ
          (山家集拾遺)

[初詣ではなく、伊勢神宮に立ち寄った際の和歌だが、初詣にも似合うもの。]

蓬莱(ほうらい)

 正月飾りといえば、家の門に神宿る松を飾る「門松(かどまつ)」、玄関入り口に飾る「しめ飾り」などがあるが、床の間にも「蓬莱飾(ほうらいかざり)」、略して「蓬莱」を飾る。その名称は、中国古来の伝説に基づいていて、東の海にある蓬莱という島に由来する。正月の飾り物は、年神(としがみ)を迎えることにあるそうだ。

ほうらいの海老水墨をうらみけり

[芭蕉]
蓬莱に聞(きか)ばや伊勢の初便(はつだより)

[蕪村]
ほうらいの山まつりせむ老の春

[青蘿(せいら)=松岡青蘿]
蓬莱のうへにやいます親二人

雑煮(ぞうに)

 お正月にいただく、餅の入った羹(あつもの)。すまし汁でなく味噌汁の地域もあり、具材も様々だが、餅が入っているのが基本となる。もちろん例外も存在する。

三途に顔を覗かしちまって雑煮かな

邯鄲(かんたん)の覚めて乏しきはつ雑煮

[許六(きょりく)]
脇差を横に廻して雑煮かな

[路通(ろつう)]
雑煮ぞと引きおこされし旅寝かな

[蕪村]
三椀の雑煮かゆるや長者ぶり

屠蘇(とそ)

・平安時代に中国から伝来した行事で、邪気を払い長寿を祝う意味を持つ。薬草などを配合した「屠蘇散(とそさん)」を赤酒、日本酒、みりんなどに漬け込んで、時に砂糖などで甘みを付けて、基本は東を向いて年少者から順に飲んでいくようだ。もっとも今日では、正月祝いに飲む普通の酒なども、屠蘇と呼んだりする場合もある。屠蘇酒(とそしゅ)とも。

樽酒に屠蘇ぶちこんでから騒ぎ

[相生垣瓜人(あいおいがきかじん)]
雑煮より屠蘇を密かに好しとせり

[中村汀女(ていじょ)]
次の子も屠蘇を綺麗に干すことよ

初日(はつひ)・初日の出

・年明けて、初めての日の出のこと。初日影(はつひかげ)、初日山(はつひやま)、初明かりなどとも。

句で〆ておろがみ奉る初日の出

はよ出ろと初日を誘う小鳥かな

去厄の憑きもの晴れて初日射(はつひざし)

[丈草(じょうそう)=内藤丈草(1662-1704)]
白粥の茶碗くまなし初日影

[鳳朗(ほうろう)]
大空のせましと匂う初日かな

行く年(ゆくとし)

・一年が去ってゆく意味で、年末頃の感慨として使う場合も、大晦日の代わりに使う場合もある。年行く(としゆく)、年歩む(としあゆむ)、年送る、年守る、年流るなど。

軸星に去りゆく歳の祈りして

君のいたそば淋しくて年おくり

年巡る丑待ちながら三十路かな

[増田龍雨(りゅうう)]
行年や夕日の中の神田川

[飯田蛇笏]
たちいでて年浪流る夜の天

大晦日(おおみそか・おおつごもり)

・晦日はもともと三十日(みそか)の意味で、旧暦の月の最後を意味し、大晦日は特に一年の最後の日を指すことになった。「つごもり」は「月隠れ」の意味で、旧暦で月の見えなくなるという、月の最後を意味した。大が付くと年末なのは一緒。「大年(おおどし)」ともいう。

大年のかをり均しく二三軒

ごった煮の車窓の顔よ大晦日

タナトスの鎌の気配も大晦日

[西鶴=井原西鶴(いはらさいかく)(1642~1693)]
大晦日定めなき世の定めかな

[正岡子規]
漱石が来て虚子が来て大三十日

[奥坂まや]
大年や灯ゆるめず滑走路

初景色(はつげしき)

・新年始めてみる風景。明けゆく空の東の雲は「初東雲(はつしののめ)」、空が茜色に染まり出す「初茜(はつあかね)」、夜明けとなれば「初明り」、日の出は「初日」、朝日に青くなった空は「初空(はつぞら)」「初晴(はつばれ)」、霞が掛かれば「初霞(はつがすみ)」、風吹けば「春の初風(はるのはつかぜ)」、浜辺の凪なら「初凪(はつなぎ)」、富士が見えれば「初富士(はつふじ)」など、初を付ければ済んでしまう。

詠みかけの和歌をまるめて初景色

ぽつり/\街の灯落ちて初茜

初あかり場末に薄く雪化粧

初空(はつぞら)は富士の高嶺となりにけり

御山のがれ宮しのびつゝはつ霞

初風にぬくもり込めて凧二つ

[鈴木真砂女(すずきまさじょ)]
初凪(はつなぎ)やものゝこほらぬ国に住み

[富安風生(とみやすふうせい)]
初富士の大きかりける汀(みぎわ)かな

[文法と表現について語るもまた面白し]

新年(しんねん)

年新た(としあらた)、年迎う(としむかう)、年立つ、年明く、年変るなど。

あらたまる年あらたなる誓いかな

つじ神に御献げしけり年迎

[菖蒲(しょうぶ)あや]
路地の子が礼して駆けて年新た

元日(がんじつ)

・一年の「元」つまり初めの日。一方、元旦(がんたん)、元朝(がんちょう)は、もともとは、新年の日の出を表す言葉。

元日にあそび声らの清らかさ

[芥川龍之介]
元日や手を洗ひをる夕ごころ

御降り(おさがり)

・いらなくなった服を与える事ではない。正月の間は「降る」と言葉を避けて、雨や雪が降るのを「雨の御降り」などと呼んでみたりするそう。

[夏目漱石]
隠れ住んで此御降や世に遠し

クリスマス

・キリスト教において、キリストの誕生を祝う祭で、誕生日だった訳では無いが、12月24日から25日に掛けて祝うのは、ローマ帝国内で勢力のあったミトラ教の祝日が関係しているともされる。宗教的祭事よりも、民間祭事の傾向が強く、それもあってキリスト教でなくても、広く祝うような祭事となった。

聖夜(せいや)、降誕祭(こうたんさい)、聖歌など。

We Wish You a Merry Christmas

ぽつねんと君をなくしてクリスマス

愛されてみたくて Merry Christmas

注連飾(しめかざり)

・年の暮れに、不浄な物の侵入を閉め出す(〆、占め)ために、その年の新藁(しんわら)で作ったお飾りを、玄関や神棚に飾り付ける。このことを「注連飾る」といい、飾られるものを「注連飾り」という。一年の最終日(31日)に飾るのは、「一夜飾(いちやかざり)」といって嫌われる。他に「注連縄(しめなわ)」なども、季語とする場合もある。

錆びかけの鉤(かぎ)繕はず注連飾

厄除けに注連の飾りを盗まれて

一夜飾一夜納(ひとよおさめ)を致しけり

[片山由美子(かたやまゆみこ)(1952-)]
越してきて一夜飾りとなりしかな

晦日蕎麦(みそかそば)

・江戸時代中期頃から、商人文化を中心として、毎月晦日(みそか)つまり三十日に蕎麦を食うという「晦日蕎麦・三十日蕎麦(みそかそば)」が流行り、やがてそれが年末の大晦日に蕎麦を食う習慣へと、転じたものとされている。

・「細く長く生きていく」願いがこもるとも言うが、由来には諸説ある。蕎麦を頂くのは三十一日がもっとも多いが、新年に変わった際に食べるとか、元旦になってからとか、地域によって異なるのは、雑煮と一緒である。

「年越し蕎麦」、「つごもり蕎麦」、「運気蕎麦(うんきそば)」など。

日がな一日捏ね打つ父やみそか蕎麦

椀底(わんぞこ)に隠し餅して運気蕎麦

[水原秋桜子(みずはらしゅうおうし)(1892-1981)]
宵寝して年越蕎麦に起さるる

若水(わかみず)

・元旦の朝に汲む水。宮中行事に由来し、元旦のはじめにくんだ水を、神棚に捧げたり、くちすすいだりする民間行事となった。地域にもよるが、選ばれし年男(としおとこ)が、若水を井戸や川から汲み、神棚に捧げ、これを「福沸(ふくわか)し」して、飲んだり雑煮にしたりする。「福水(ふくみず)」「若井(わかい)」「井華水(せいかすい)」など。

あばら屋に若水運ぶ影細し

[吉田鴻司(こうじ)]
若水の鉄気(かなけ)多きを供へけり

お年玉(おとしだま)

・年神への捧げ物を人間に払い下げて、それを家の主、年長者より年少者へと行き渡らせるもので、様々な物を与えていたが、今日ではもっぱら子や孫へ、金銭を手渡す行事となっている。

端末にのめり込む子にお年玉

誰彼に階級付けてお年玉

書初(かきぞめ)

・正月心に書道を致したり、改まって文字を書くこと。「始筆・試筆(しひつ)」ともいう。「吉書(きっしょ)」などは、もともと事が改まったときの初めての公的文書などを差していたのが、書き初めに転用されたもの。

晴を書く始筆の墨は淀みなく

君の名を書き初めしてはがらす窓

歌留多・骨牌(かるた)

・子供用の「いろは歌留多」や、子供には難解の「小倉百人一首」を並べて、誰かが詠んで皆が取りあう遊びは、特に正月の遊びとしてもてはやされる。

僕のだと一枚すねるかるたかな

[富沢赤黄男(とみざわかきお))]
賑やかな骨牌の裏のさみしい絵

獅子舞(ししまい)

・起源は大陸よりもたらされたとされるが、盛大な行事となった伊勢神宮の太神楽(だいかぐら)から、各地への流行へ転じ、正月の門付け(かどづけ・家の門で行う芸能)などとして定着したとされる。

獅子舞に友を喰われてなきだす子

草木花

 橙(だいだい)。楪・譲葉・交譲木・弓弦葉(ゆずりは)、親子草。羊歯・歯朶(しだ)、裏白(うらじろ)。穂俵(ほだわら)、ほんだわら、たわら藻(も)、なのりそ。福寿草(ふくじゅそう)、元日草(がんじつそう)。仙蓼・千両(せんりょう)、草珊瑚。万両(まんりょう)。藪柑子(やぶこうじ)、山橘(やまたちばな)。

[高崎武義(たかさきたけよし)]
うらじろの反りてかすかに山の声

[福田蓼汀(りょうてい)]
福寿草家族のごとくかたまれり

[八染藍子(やそめあいこ)]
針山も日にふくらみて福寿草

[今井つる女(じょ)]
千両の実をこぼしたる青畳

[富安風生]
万両のほかに生家の記憶なし

鳥獣魚虫

 千鳥・鵆(ちどり)、浜千鳥、川千鳥。初鶏・初鳥(はつとり・はつどり)、鶏旦(けいたん)。初声(はつこえ)。鱈・雪魚(たら)、真鱈(まだら)、鱈子(たらこ)。伊勢海老、鎌倉海老。嫁が君(よめがきみ)。かじけ猫、かまど猫、こたつ猫。

[正岡子規]
上汐(あげしほ)の千住を越ゆる千鳥かな

[飯田蛇笏]
ありあけの月をこぼるゝちどりかな

[高浜虚子]
初鶏や動きそめたる山かづら

[久保田万太郎]
初鶏やひそかにたかき波の音

[室生犀星(むろうさいせい)]
藁苞(わらづと)や在所にもどる鱈のあご

2009/01/12
2018/01/06 改訂

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