梅香る(うめかおる)

[Topへ]

梅(うめ)

・奈良時代以前に中国からもたらされた梅は、バラ科サクラ属の落葉高木で、異国情緒あふれた花として、万葉集の時代には、花見の代表ともされるほどだった。やがて平安時代になると、次第に桜が花見のヒロインになってゆくが、いち早く春を告げる花として、また花開くときの独特の甘い香りの特徴は、やはり和歌に詠まれ続け、連歌、発句の時代を下っても、桜と並ぶ春の花として好まれ続けた。

・差好文木(こうぶんぼく)、春告草(はるつげぐさ)、木の花(このはな)、初名草(はつなぐさ)、香散見草(かざみぐさ)、風待草(かぜまちぐさ)、匂草(においぐさ)など、さまざまな名称を持ち、また菅原道真の伝説にちなんだ飛梅(とびうめ)などという言葉もある。あるいは梅園(ばいえん)、梅林(ばいりん)などなど。白き花の梅をあえて白梅(はくばい)と詠んだり、赤き花を紅梅(こうばい)と詠んだりもする。

くちづけの香りは梅な夕べして

待ちわびてふと嗅ぐ夢や梅の頃

古地図の廃墟の庭よ梅の花

廃村の廃墟の柵や梅はなほ

高台のもてれて嗅げば梅の街

[芭蕉]
梅が香にのつと日の出る山路かな

[凡兆(ぼんちょう)]
灰捨てて白梅うるむ垣ねかな

[飯田蛇笏]
山川のとどろく梅を手折(たお)るかな

東風(こち)

・春の東風は道真の「東風吹かば」の歌のごとく、春を告げる風である。朝東風(あさごち)とか夕東風(ゆうごち)とか、正東風(まごち)とかいう言葉もあるようだ。

足なみは東風の宵かな街の歌

桟橋に東風嗅ぐ野良とあそびして

東風の来て弔辞の紙のひるがえる

[一茶]
亀の甲並べて東風に吹かれけり

鶯(うぐいす)

・スズメ目ウグイス科ウグイス属の鳥で、東アジアに分布。日本列島にも広く生息し、「ホーホケキョウ」という独特の雄の鳴き声で知られる。広くは留鳥(りゅうちょう)であるが、人里から山中へ、またより広範囲へ生息場所を変える漂鳥(ひょうちょう)の性格も持っている。

・春告鳥(はるつげどり)、春鳥(はるどり)、花見鳥(はなみどり)、歌詠鳥(うたよみどり)、匂鳥(においどり)など様々な名称を持ち、また初音(はつね)や、初鶯(はつうぐいす)などと使用されることもある。面白いところでは、経読鳥(きょうよみどり)なんてのもある。

エンジェルな春告鳥のたよりかな

初音して耳こそばゆくおなかの子

うぐひすの月夜の恋のファンタジー

鶯餅(うぐいすもち)

・あんこを包んで青黄粉(あおきなこ)をまぶして、鶯の風情をかもしだした和菓子。

待つひとのうぐいす餅に手は伸びて

鶯餅ひとにはひとの甘きとこ(当時のまま)

野焼く(のやく)

・春先に草原などの枯れ草を焼き、森林化を防いだり、土地を肥やしたりする。害虫を殺す効果もあると考えられ、昔から行われてきた。

・野焼(のやき)、野火(のび)、草焼く(くさやく)、堤焼く(つつみやく)など。

またひとり野焼だべりに交じりけり

宵雲にくすぶりのぼる野焼かな

畑焼く(はたやく)

・上と同類で、畑や畦を焼くことを、畑焼くとか、畦焼く、畦火(あぜび)などという。

年老て畑焼く息子となりにけり

畦火高く怯える犬に引かれけり

細魚・水針魚(さより)

・表示できない難しい漢字でも示される「さより」は、針のように細長い三十センチほどの魚である。ダツ目・サヨリ科の海産魚で、秋刀魚もダツ目であるから、似た恰好である。淡白な味で、刺身、天ぷら、吸い物などから、塩焼きにまで調理される。腹膜が真っ黒なことから、腹黒い奴の比喩にも使用される。

春の雪

・立春後の雪ならば、溶けの早さは寒ならず。寒さの中に暖の期待もあらん。春雪(しゅんせつ)、春吹雪(はるふぶき)、など。

傘まわしけだるくあそぶ春の雪

春雪(しゅんせつ)や情け知らずて花くずし

[来山(らいざん)]
湯屋まではぬれて行きけり春の雪

春の霜(はるのしも)

・春霜(しゅんそう)ともいう。遅霜(おそじも)も春の響きあり。霜の別れは「八十八夜の別れ霜」というが、まあもっぱら3月中が別れ際のことが多いかなと。

ぶらんこの砂忘れられ春の霜

遅霜にやられた苗を送るかな

春浅し(はるあさし)

・まだまだ春の温かみは遠く深まらずの想いあらば、春浅し、浅き春、浅春(せんしゅん)などと歌うべし。

春浅く砂踏み君のやわらかさ

もつれ髪浅みし春のうつらごと

春めく(はるめく)

・あるいは「春兆す(はるきざす)」とか。

かいま見て春めく恋の予感かも

春めいて parsley と sage な potage で

春めいて裂け目広まる古柱

[松尾静子(まつおしずこ)]
春めきて小夜(さよ)の客ある茶の間かな

斑雪(はだれ)

・溶けて地面・物などにまだらに残った雪、あるいは降ってもまだらの雪を指す。「はだれ、まばら、はだら、まだら」な雪で、いずれでも使用できる。他にも「はだれ野」とか、「はだれ霜」とかいう用法もある。

疎まれて惨めさぬかるはだれ雪

舞いもどる客の古着よはだれ雪

つまづいて君に触れたらはだれかな

淡雪・沫雪(あわゆき)

・ほかにも牡丹雪(ぼたんゆき)、綿雪(わたゆき)、かたびら雪、だんびら雪、たびら雪、などなど。

沫雪のぺろぺろ舐める犬っころ

のっしりと肩おびやかす牡丹雪 (以前のまま)

散りかけの梅おぎなうや牡丹雪 (以前のまま)

たなこゝろ/たなひらに/たわむれ消ゆやたびら雪 (ほぼ以前のまま)

[日野草城(ひのそうじょう)]
淡雪やかりそめにさす女傘

薄氷(うすらい・うすごおり)

・春に入ってなお薄い氷の張ること。

夕月を指に透かして薄氷

薄氷(うすらい)に指先つけて清めけり

魚氷に上る(うおひにのぼる)

・二十四節気の一つ。だいたい二月半ばにあたる。水温(ぬる)み氷の裂け目より魚の躍り出るの意味。中国の「礼記(らいき)」の「月令」に「東風凍(こおり)を解き、蟄虫(ちっちゅう)始めて振(うご)き、魚氷(こおり)に上り、獺(だつ・かわうそ)魚を祭り、鴻雁(こうがん)来る」とある。

なに魚か氷のうへに跳ねにけり

味噌豆煮る(みそまめにる)

・ちょいと昔にはずいぶんの家庭で自家製の味噌を作りおく時に、煮た大豆を臼ですり潰し、鞠ぐらいの玉にして包んで吊して乾燥させたものである。これを味噌玉(みそだま)という。秋にこれを砕いて麹や塩と仕込んで発酵させるのだそうだ。

[大石悦子(おおいしえつこ)]
味噌玉の面魂(つらだましい)を吊すかな

鶯笛(うぐいすぶえ)

・江戸時代よりある、鶯の鳴き声じみた音色の笛。竹や陶器などで作る。初音(はつね)の笛ともいう。

みやげ屋に鶯笛のさき並べ

[松瀬青々(まつせせいせい)]
霞む野に鶯笛を籟(なら)すかな

建国記念の日

・戦後ネーミングセンス○で亡くなりけりの悲しき例。「日本書紀」に記された神武天皇て即位したとされる日を、西暦に当てはめると紀元前660年2月11日だったことから、明治時代にこれを「紀元節(きげんせつ)」という名称で祝することが定められ、戦後分かり易いだけの言葉のリズムもセンスも欠片もない「建国記念の日」となった。ちなみに大日本帝国憲法はこの2月11日に発布されている。

・梅の頃なので梅花節・梅佳節(ばいかせつ)と呼ぶこともある。

古褪せたアルバムめくり紀元節

梅見(うめみ)

・観梅(かんばい)とも。桜の頃よりずっと寒き梅の花見の静けさよ。

片肘の車窓の先の梅見頃

[河東碧梧桐]
境内の刈芝を踏む梅見かな

[岡崎るり子]
首回りゆるきもの着て梅見かな

えり挿す

・「えり」は「魚」に「入」と書いて「えり」と読むのだが、表示されないので平仮名のまま。春先に掛けて川や湖などで行う仕掛け漁法で、竹や葦で作った簀(す)から「えり壷」に魚を追い込むというものらしい。琵琶湖のものが有名とか。「えり挿す」はその仕掛けを作ること。

[福永耕二(ふくながこうじ)]
えり(正しくは漢字)挿して浪をなだむる奥琵琶湖

バレンタインデー

・もともとローマの女神の中の女神ユノ祝日が二月十四日にあたった。翌日がルペルカリア祭なので、ユノの祝日に女性の皆さんは自分の名前を記して入れ物に入れると、翌日男どもがこれをくじ引きして、ペアになった男女が踊るのだか、なんだか、そんな行事があったらしい。(また投げやりになったな君は。)それが269年に殉教した聖ウァレンティヌス(テルニのバレンタイン)の祝祭と名を変えて、いかがわしい古代ローマの祭の名称を無くしたいキリスト教によって、バレンタインの祭へと移り変わっていったのだとか、なんとかんとか。

・あるいは「チョコの日」の方が作りやすいか。二月十四日の西洋のまつりごとを商売っ気だした、品位も糸瓜も存在しない大和魂がチョコレートの日として商売のネタになって大はしゃぎしたという構図である。

手作りのチョコも渡せずほろにがさ

Valentine Day なら Disneyland かも

[時乃遥]
あげチョコ de 本音トークなパジャマ会

2009/03/27

[上層へ] [Topへ]