天の川

[Topへ]

天の川

・恒星数約2000億~4000億個、直径約8-10万光年の我々銀河系(天の川銀河系と呼ぶことも)に所属する地球から眺めると、銀河の中心方向に向かって、すなわち射手座方向に向かって厚い光の帯が、反対側(冬の星座)には薄い帯が、恒星のまとまりとして流れるように見える。

・夏になるともっとも目につく、夏の大三角(はくちょう座のデネブ、わし座のアルタイル、こと座のベガ)の中を流れていくので、夏の季語でも良さそうなものを、宵から晩にかけて、目に付きやすい時節として、七夕の渡るべき川として、秋の季語とされている。

・他に銀河(ぎんが)、星河(せいが)、天漢(てんかん)、銀漢(ぎんかん)、雲漢(うんかん)、銀湾(ぎんわん)など。

天の河よたかの夢の道しるべ

憧れを風にかざして銀河かな

[芭蕉]
荒海や佐渡によこたふ天河

[白雄]
天の川星より上に見ゆるかな

[よみ人知らず]
天の川 霧たち渡り
  彦星の 梶の音聞こゆ
    夜の更けゆけば
          (万葉集十巻)

七夕(たなばた・しちせき)

・もともと盆と関連して、機織(はたお)り小屋を設けて、女性が神のために布を織ることを、棚機(たなばた)と、織る女性を棚機女(たなばたつめ)と呼んでいた。そこに、牽牛と織姫が年に一度の再会を果たすという中国の伝説と、それと関わる乞巧奠(きっこうでん)という行事などが結びついて、日本行事化したものとされる。

・琴座のベガを織姫星とし、鷲座のアルタイルを牽牛、あるいは夏彦星として、二星のあいだを流れる天の川を、二人を隔てる川みたてて、旧暦の七月七日に祝う行事だったが、今日では新暦の七月七日に祝うことが多いか。

棚機(たなばた)、七夕竹(たなばただけ)、星祭(ほしまつり)、七夕雨(たなばたあめ)など。

七夕の竹しならせて君の指

君の名を文字にかくして星祭

[芭蕉]
七夕や秋を定むる夜のはじめ

[阿波野青畝(あわのせいほ)]
星の竹ねむのごとくにねむりをり

梶の葉(かじのは)

・桑科(くわか)の「梶の木(かじのき)」は山野などに育ち、ユニークな形の葉を持っている。七夕の夜にはこの葉を七枚用意して、七つの和歌に願いを込めて奉るという行事がある。サトイモの葉っぱの夜露で墨をすって、梶の葉に和歌を書いたりしたそう。墨の乗りが良いせいでもあるが、神聖な雰囲気の葉っぱの様子からか、梶の木が神社などに植えられることが多かったこともあるかもしれない。竹に短冊というスタイルは、江戸時代に始まったようである。

梶の七葉(かじのななは)、梶葉(かじのは)の歌、など。

梶の葉は七つの/み歌の物語

[時乃遥]
梶の葉に七つ目だけは君のこと

[蕪村]
梶の葉を朗詠集(らうえいしふ)のしほり哉(かな)

[一茶]
梶の葉の歌をしやぶりて這ふ子かな

立秋(りっしゅう)

・二十四節気の一つで新暦の8月7日前後にあたる。これをもって秋の入りとして、「暑中見舞い」もこの日より「残暑見舞い」となる。また立秋から処暑(しょしょ)までの期間を指す場合もある。

秋立つ、秋来る、秋に入(い)る、今朝(けさ)の秋、今日の秋、など。

今朝の秋ふる里を去る駅舎かな

立秋に○を付けてはみたけれど

[蕪村]
秋立や素湯(さゆ)香(かうば)しき施薬院(せやくゐん)

[飯田蛇笏(1885-1962)]
秋たつや川瀬にまじる風の音

[藤原敏行(としゆき)]
秋来ぬと
  目にはさやかに 見えねども
 風の音にぞ おどろかれぬる
          (古今和歌集、秋)

秋風(あきかぜ・しゅうふう)

・秋風といっても、秋の気配を感じる頃から、冬近くまでさまざまだが、句全体の内容から、自然に肌寒さも違って感じられるもの。秋の風、金風(きんぷう)など。

いつの世の秋風誘う供養塔

[去来(きょらい)]
あき風やしら木の弓に弦(つる)はらん

[曽良(そら)]
終宵(よもすがら)秋風きくや裏の山

[原石鼎(はら せきてい)(1886-1951)]
秋風や模様のちがふ皿二つ

朝顔(あさがお)

・奈良時代か平安時代頃に遣唐使が持ち帰ったヒルガオ科の一年性植物。漢名は「牽牛子(けんごし)」といい、当初は下剤作用などから薬用植物だった。だから牽牛花(けんぎゅうか)とも呼ぶ。これは旧暦七月七日の七夕頃に咲くからである。江戸時代に観賞用としてブームを巻き起こし、さまざまな品種改良を重ねて、隆盛を極めた。

牽牛花ゆびでつゝいて機(はた)休め

朝顔に寝ぼけた蟻のしずくかな

[蕪村]
朝がほや一輪深き淵のいろ

[樗良(ちょら)(三浦樗良)]
朝皃(あさがほ)や露もこぼさず咲きならぶ

[加賀千代女]
朝顔につるべ取られてもらひ水

蜩(ひぐらし)・かなかな

・カメムシ目セミ科の蝉の種。日の出前、日没後頃、薄明のうちに、カナカナとトリルのような独特の鳴き声を上げる。そのためカナカナ蝉とも呼ばれる。漢字は日暮(ひぐらし)などとも書く。

かな/\とかなた/\のかなたかな

朝な夕なひぐらし風に吹かれけり

夜明け前ひぐらしに酔う厠(かわや)かな

初秋(はつあき・しょしゅう)

・秋の初めだが、陰暦の七月を差すこともある。新秋(しんしゅう)、秋口(あきぐち)、孟秋(もうしゅう)など。

影慕ふ初秋さして温度計

孟秋の破(や)れ間をあさる鼠かな

[太祇(たいぎ)]
初秋や障子さす夜とさゝぬ夜と

[蕪村]
初秋や余所(よそ)の灯見ゆる宵の程

[飯田蛇笏]
秋口のすはやとおもふ通り雨

(秋の)初風(はつかぜ)

・広くはその季節の初めの風をさすが、とりわけ秋の初風を差すことが多いので、「初風」だけでも、秋の季語になっている。

初風の揚げの港となりにけり

初風は恋に揺れてよアドバルン

[高井几董(たかいきとう)(1741-1789)]
初風や回り灯籠(どうろ)の人いそぐ

[長谷川かな女]
秋初風狭山の夜の藪(やぶ)うごく

[大石悦子]
浦の子に秋の初風吹きにけり

新涼(しんりょう)

・秋になって涼しさを感じる時。 秋涼し(あきすずし)、涼新た(りょうあらた)、など。日常感覚からは、夏と冬が「暑し」「寒し」で表現され、春が「暖か」ならば、秋こそが「涼し」となりそうなところ。この「涼し」は夏の季語とされているので、改めて「秋涼し」とか「新涼」という表現で、秋初めの涼しさを表現する。

秋すゞし貝殻に聞く波の音

点てた茶に涼しき秋の筧(かけひ)かな

秋めく・秋づく

・秋らしい気配が、すっとこころに入り込むくらい、戻れない季節の営みを感じること。

秋めいて始発のベルの高らかさ

秋(あき)

・二十四節気において、立秋当日から、立冬前日までを、歳時記上の秋と定義する。五行説では木火土金水のうち「金」を、色は「白」を当てる。これを三分して、初秋、仲秋、晩秋と定義する。

・一方で、月単位で捉える場合、陰暦なら文月(ふみつき)、葉月(はづき)、長月(ながつき)が秋に当てはまり、今日の暦では、九月十月十一月が秋とされる。

白秋(はくしゅう)、白帝(はくてい)、素秋(そしゅう)、三秋(さんしゅう)、九秋(きゅうしゅう)、金秋(きんしゅう)など。

哀しみをこらえて太る秋のでぶ

なみだ目をこらえて秋は午後の街

[時乃遥]
秋となくあなた浮かべてシャワーかも

[芭蕉]
此秋は何で年よる雲に鳥

[飯田蛇笏]
くろがねの秋の風鈴鳴りにけり

[石田波郷(いしだはきょう)(1913-1969)]
秋いくとせ石鎚山(いしづち)を見ず母を見ず

八月(はちがつ)

 前半に立秋を過ぎるから、八月は秋の季語というのは、八月を夏と捉える現代の季節感に対して劣勢で、歳時記上のブレがあるように思われる。

八月の旅を尽くして渡すかな

[正岡子規]
八月や楼下(ろうか)に満つる汐(しお)の音

文月(ふみづき)

・陰暦七月。七夕の短冊や梶の葉に書き連ねる所から文月と呼ばれるともいう。文月(ふづき)、七夕月(たなばたづき)、文披月(ふみひらきづき)、などとも。

ゆび先に想いゆだねて文の月

文月や提灯揺れて渡し船

[芭蕉]
文月や六日も常の夜にハ似ず

[千代女(ちよじょ)]
文月や空にまたるるひかりあり

原爆忌

 一九四五年の八月六日に広島に、九日に長崎に原爆が落ちた、その日を忌する季語。「原爆の日」など。

俳人どもまたもてあそぶ原爆忌

広島よかなたの朝の/よいのり唄

中元(ちゅうげん)

・中国の歳事に、正月十五日を上元、七月十五日を中元、十月十五日を下元と定めたものが取り入れられ、さらに仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)と結びついて、いつしか親類や上司などへの物品贈与の伝統へと到ったもの。ただし贈答の習慣が盛んになったのは近代に入ってからという。

お中元、中元贈答(ぞうとう)、盆礼(ぼんれい)、盆見舞(ぼんみまい)など。

中元の絶え間の果の別れかな

[高浜虚子]
盆礼に忍び来しにも似たるかな

秋扇(あきおうぎ)

・立秋を過ぎた後、残暑に対する扇を呼ぶには、今となってはむしろいつわりの歳時記に思われるくらいで、むしろ秋の彼岸頃の扇を、そのように呼びたいくらい。団扇(うちわ)にも「秋団扇(あきうちわ)」「秋の団扇」という季語がある。さらに「扇置く」「捨扇(すておうぎ)」も季語だそう。

破れうちは煙となつて昇りけり

佞武多(ねぶた・ねぷた)

「青森ねぶた(あおもりねぶた)祭」は、青森県青森市で八月の二日から七日まで開催される夏祭り。国の重要無形民俗文化財でもあり、莫大な観光客を呼び寄せる。その発祥は、坂上田村麻呂(後に征夷大将軍)の蝦夷討伐(三十八年戦争)の時に、敵を油断させるために祭り囃子をしたという伝承から来るとも言われている。現在では巨大な張り子のなかに蛍光灯を灯して、煌びやかなパレードが徘徊しまくるというもの。

「ねぷた祭」「ねむた流し」など。またその踊り手を「跳人(はねと)」と呼ぶ。

さびしさもねぶたに尽きて星あかり

[吉田鴻司(こうじ)]
月の出やはねとの鈴の鳴り急ぐ

八月大名(はちがつだいみょう)

 ちょうど陰暦の八月頃に、田の草取りも一段落し、収穫までほっと一息、仕事が減ることから、かつては農家では八月大名などと呼ばれていた。そんな農耕の一季節。

御八月大名やとておはしけり

草市(くさいち)

 「草の市」「盆の市」「手向(たむけ)の市」など、盆に使用するものを売るための露店市を指した言葉。今では特定の地域以外、スーパーなどに食いつぶされたか。

盆の市今来(いまき)の人は立ち話

[眞鍋呉夫(まなべくれお)]
草市で買ふやはかなきものばかり

虫籠(むしかご)

 虫取り用の携帯サイズから、昆虫を飼っておくための入れ物など、さまざまなカゴやケースを総称して、虫籠と歳時記らしく呼んでみる。ほかにも「むしご」「むしこ」など。虫が鳴く虫を代表して秋の季語であるならば、虫籠もまた夏ではなく、秋の季語という理屈。

虫かごに飽きて休らう坊やかな

添水(そうず)

 今日では、竹の筒にしばらく水が滴ると、たまった水の重みで竹筒がシーソーのように反転して、同時に岩などを打ち鳴らして、竹の心地よい響きが楽しめるという風流装置。しかし、もともとは鳥や獣から田畑を守るための、「ししおどし」(鳥獣避けのさまざまな装置)の一種だったそうだ。鐘を打つ僧侶に似ていることから、同じ呼び名で「僧都」とも表現する。また、「添水唐臼(そうずからうす)」「ばったんこ」といった呼び名もある。

ほのかなるかをりを聞けば添水かな

[飯田蛇笏]
風雨やむ寺山裏の添水かな

草木、花など

 木槿(むくげ)、もくげ、きはちす。水引(みずひき)の花、水引草(みずひきそう)、水引。カンナ。鳳仙花(ほうせんか)、爪紅(つまべに)、つまくれない、つまぐれ。松虫草(まつむしそう)。露草(つゆくさ)、月草(つきくさ)、蛍草(ほたるぐさ)、帽子花(ぼうしばな)、青花(あおばな)。泡立草(あわだちそう)、背高泡立草。

[芭蕉]
道のべの木槿は馬に食はれけり

[白雄]
川音や木槿咲く戸はまだ起きず

[木内彰志(きうちしょうし)]
水引の紅をふやして雨の寺

[永井由紀子(ゆきこ)]
松虫草ケルンに走る雲の影

動物、魚、昆虫など

鰯・弱魚(いわし)、真鰯(まいわし)。鰍・杜父魚(かじか)、石伏(いしぶし)。別烏(わかれからす)、鴉(からす)の子別れ、秋の烏。草雲雀(くさひばり)、秋鈴(あきすず)、金雲雀(きんひばり)。蜉蝣(かげろう)、きぎろう。轡虫(くつわむし)、がちゃがちゃ。秋の蛍、秋蛍(あきほたる)、残る蛍、病蛍(やみほたる)。

[鳥居三朗(とりいさぶろう)]
真鰯の真青な背に無頼あり

[芭蕉]
漁り火にかじかや浪の下(もと)むせび

[青柳志解樹(あおやぎしげき)]
羽づくろひして子別れの鴉かな

[飯田蛇笏]
白樺にとまりおよぎの秋鴉

[石田波郷]
森を出て会ふ灯はまぶしくつわ虫

[飯田蛇笏]
たましひのたとへば秋の蛍かな

2008/8/23
2012/1/18 改訂
2017/09/11 改訂

[上層へ] [Topへ]