ブラームス 交響曲第2番 第2楽章

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概説

・第一楽章で探求した形式の実験がさらに突き詰められた楽章。大枠は主題領域(1-32)が中間部を経て62小節から回帰する三分形式なのだが、ユニークなのは33小節目からの解釈の揺らぎにある。これは後で見るとして、中間部主題は45小節目から開始される旋律であり、これにもとずく対位法的な展開が49小節目から開始する。ところが、聴覚上中間部的部分に入ったと感じるのは、まさに対位法的展開が開始される49小節目からであり、それ以前の部分は中間部主題の提示を含めて、ソナタ形式であれば提示部の中の出来事のようにして作曲されているのである。

・ここでひるがえって33小節からの楽想に着目すると、開始の(H dur)に対して属調関係の(Fis dur)で提示されるこの第1主題領域とまったく異なる音型は、中間部主題を導くための経過、あるいは導入とは到底思えない独立性を持っていて、まるでソナタ形式の第2主題を形成しているのである。すると中間部主題の提示は、この第2主題に対する応答の終止部旋律のように聞こえてくる。

・つまりは歌謡的な三分形式であれば、きっぱりと分かつはずの中間部分を、提示部から派生しゆく連続体のように作曲しているので、形式の織りなすいわば所在不明のような不安定さが、この小さな楽曲のメランコリックをいっそう引き立てているという、形式的作戦が取られている。

・にもかかわらず、楽曲的な面白さは、かえってⅡを多用するサブドミナント系和声の味わいや楽器に追い求めた方が、より心引かれるくらいであるが、文章で説明しにくいことは、ここに記されることは永遠に?ないのであった。

提示部(1-48)

第1主題部分(1-32)[H dur]

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・[Fis]の保続Ⅴ音上に開始するテーマは、チェロの低い響きで開始される。さながら秋雨の中のあきらめにも似たメランコリックの中で。(嘘)主題の順次下降音型に対応してファゴットが順次上行するは、中間主題の上行音型をあらかじめ内包していると言えるかもしれない。詳細は割愛するが、6小節目の属和音がダイレクトにⅢの一転に入り、それがⅥ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅰ、さらにⅠの準固有和音からドッペルに到るときの和声的な美しさは、複雑ではないが比類なく思われる。

・17小節からフゲッタ風の順次導入による小さな中間部を形成するが、これは主題の[3,4小節目]の素材に由来する。27小節目のアウフタクトから主題後半が回帰するように思わせつつ終止音型へと至らしめこの部分を終止する。この隙のない作りだけでも実際は2,3時間考察すべき価値は優にあるだろう。

エピソード的第2主題(33-44)[Fis dur]

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・裏拍を踏んだ和声的な静かな静かなフレーズが、「l'istesso tempo ma grazioso(リステッソ・テンポ・マ・グラチオーソ)」(テンポを保ってされど優雅さを忘れずに)で提示される。何でこれが楽曲になるやねん、と訝しくなるくらいのフレーズなんだが、耳で聞くとゆっくりゆっくり踏みしめるようなリズムと共に絶妙な表現を木管楽器がしてくれているのは妙だ。(途中でヴァイオリンも行うが)これはこの後顧みられない提示部だけのための第2主題である。

提示部終止部分(45-48)

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・印象的な上行音型のフレーズが提示部を締め括るのは、まるで第1主題に呼応するような響きであるが、これが実は中間部を形成する主題ともなるのであった。

中間部(49-61)

・ただし提示部終止部分はやはり提示部終止部分である。中間部主題は先ほどの主題に基づいて改めて管楽器に提示され、これに対旋律として16分音符を主体とする弦楽器の対旋律が付き従う。続いて管の響きが途切れ、弦だけで中間部主題とその対旋律がもう一度繰り返されると、その対旋律の冒頭だけを使用した動機的ストレットへとクライマックスを橋渡し、最後に消沈して再現部へ向かう。

再現部(62-91)

・再現部では修飾音型や楽器の使用など提示部との違いを細部まで楽しみたい。楽しみたいが今は時間がないので、発言は無かったこととして、印象的な和声で説明した6小節目のフレーズが、再現部では主題開始から12小節目まで引き延ばされた[73小節]に登場することなどを述べるに留めておこう。86小節目のアウフタクトから開始する主題後半部分の回帰は、第2ヴァイオリンでなされるが、第1ヴァイオリンがこれに豊かな16分音符の彩色を施しているところが非常に美しく、聞き所にもなっている。

コーダ(92-104)

・最後に一度中間部主題でもあった、提示部の終止部分のメロディーの断片が回顧され、第1主題で楽曲を終止する。

2009/10/9

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