交響曲第39番変ホ長調(K543)、第3楽章

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Menuetto

主題提示部分(1-16)Es dur

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・単純さの点では、第3楽章も驚異的だ。全楽器総奏で開始する主題は、スタッカートの特徴を持ち初めの4小節ⅠとⅣを繰り返し、低音が跳躍上行からしばし躊躇して下降するという山なり曲線を描けば、ヴァイオリンがそれに反行するように高いところから下降したところで留まって、8分音符で激しく跳躍上行する。次の4小節はこの4小節をⅤとⅠの交替で繰り返し、2つ合わせて8小節の主題前半が形成される。主題後半は前半に対すべく順次進行的に音域の狭い滑らかな線を描きながら、4小節の柔らかい部分(はあ?)を形成し、4小節の終止を持って主題を締め括る。その最後の部分はお約束、属調(B dur)に転調して完全終止するわけだ。

中間部分(17-24)Es dur

・主題と同じリズムを、主題と同じ(Es dur)で開始し、最後にⅡ和音のカデンツ風音階上行パッセージから属和音に至って、もう主題が回帰する。

主題再現部分(25-)Es dur

・主題が再現され、その後半が終止風に拡大されメヌエットを終える。ここでは第2楽章とは正反対の原理、逸脱や大きな変化を避ける事により、小楽曲を指向するようにプランが練られているわけだが、そのプランは呆れるほど簡単なトリオを見れば明らかだ。

Trio(45-68)

 ここでモーツァルトは、どこまでシンプルに楽曲を全うできるかその極限を試したのではないか。と考えたくなるほど簡素倹約を全うしたTrioは、恐らく譜面づらだけ眺めて、「これなら自分でも真似できちゃうぜ!」思いこんでしまう人が、音楽を知った人にも居るかも知れない。早まっちゃいけない。単純になればなればなるほどフレーズのプロポーション、旋律を支える伴奏型、楽器と音域の選択、合いの手楽器の参加法などの優劣は、明からさまに現われて、ちょうど一筆書きによる鉛筆のイラストが、簡単に絵画的センスを表わしてしまうように、一流の楽曲にするのは才能が居るものだ。そういう意味に置いてこの単純化は見事なのだが、言葉で説明するよりも譜面を見ながら何度も聞いた方がよく分かる。ごく簡単に加えておくと、トリオ主題提示(45-53)ではクラリネットが主題と伴奏音型を兼ねる中に、時々応答するフルートが印象的だ。和声は(Es dur)のままでⅠとⅤ7だけが使用される。これをリピートで繰り返すと、中間逸脱部分では一度(B dur)を経由して弦楽器だけの部分を形成。トリオ主題が再度返ってくる61小節の直前に、(Es dur)への回帰を告げるホルンの響きが印象的だ。2つのホルンの音の間で、同じ方向に進行しながら登場する完全5度は、ホルンの狩りの角笛的な音色の代名詞として、ホルン5度と呼ばれて親しまれている。続いて主題繰り返しが行なわれリピート。もう一度中間部分からトリオ後半を行なうと、メヌエットに戻って繰り返し楽曲を終える。

2006/06/15
2006/07/08改訂

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