俳句集『夢の季節』

(朗読)

夢の季節

ものの芽の寝ざめの夢も植木鉢

二日三日もどり寒さを夢見月

夢なんかからかう風を山わらう

うたた寝を夢みてどんな縫いぐるみ

たんぽぽの踏まれあうよな花ざかり

夢だけどあまーいキスしてれんげ畑(ばた)

病み終えて夢さえ風のひかる頃

夢にまで喧嘩っ早さがよもぎ餅

働けばたけなわ春の眠りかな

見はらせば蛙声(あせい)が夢の奏唄(かなでうた)

野茨の棘ゆめにさす恋ごころ

夢なおもしっとり降らせ虎が雨(とらがあめ)

ねむり木の夢みる頃をひとつ星

もういまは宅地ばかりが夢蛍

青嵐(せいらん)よ紙飛行機は僕の夢

すずむしの夢みる頃を軒風鈴

あんたとは夢で線香花火だわ

かなかなの間に間の夢や夕まぐれ

誰にだってたったひとつの夢花火

夢に逢うあなたとつがいの艶浴衣

触れてもう夢もあなたも送りの火

夢やこよい哀しみくらいの秋ですね

(夢やこよい哀しみくらいが秋の庭)

十六夜(いざよい)の月も夢みるかすり笛

愛しさもなみだも夢も夜長かな

うまおいの夢をなくして焼野原

秋の夜を夢追いびとのひとつ星

ペガサスのいななき眠りや秋の果

染めてなお夕陽はゆめを奪うもの

芒には夢に破れしものの影

朝露の夢み淡しや芳容(ほうよう)の月

夢去らば踏音(ふみおと)侘びしき霜柱

初しぐれ夢にさえわかれ言葉です

今ごろをなんで夢見る返り花

柊を恋する夢のひと盛り

まどろみは霜降夜(しもふるよる)のセレナード

ふたご座の夢忘れまい流星

こたつ寝のあなたの腕が夢枕

こんこんと夢山茶花に雪の影

わたくしの夢も知らずに山眠る

ふるさとよわたしの夢もしずり雪

去年今年(こぞことし)

夢なかのあなたにメリークリスマス

師走には夢など見てはなりません

歳(とし)おとこ忘年列車が夢芝居

つごもりの夢そば食えば祈りかな

夢よなおあしたへ続け除夜の鐘

去年今年(こぞことし)あたらしき夢ふるき夢

夢はまだ見るひまもなく初詣

夢でなしお年玉こそいのち綱

さく年の初夢かなえばふたりぼっち

きみとふたり夢から覚めてた初景色

覚書

・作成、2009/10/23-31

2010/2/14

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