コスモスの歌

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コスモスの歌

「あたいの唄」
  ………いくつかの詩と和歌  (朗読1)
「コスモスの唄」
  ………和歌によるひと日のらくがき (朗読2)(朗読3)
「よろこびの一頁」
  ………発句みたいなエピソード (朗読4)
「どくらくぎん」
  ………だらしないあけみに捧げる小さな和歌集、か~もね。 (朗読5)
「ねばーらんどの唄」
  ………つかのま詩集 (朗読6)(朗読7)

あたいの唄

あたいの唄

あたいはね
   あんたなんかで はかれない
 わたつみさえも うちに溶かして……

  いのりする
     もつれた夢は なか指の
   離さないでね 浴衣花火よ

    華やかな
      まばゆさ色した イミテーション
       言の葉さえも
         化粧あふれて……

   ハウス栽培
      栄養さえも 均質な
     はなすことさえ 与えられては……

 あたいはきっと
    あたいひとりで 消えてゆく
   戦えないけど……
      消されたくないから

    星に逢う
      銀河のはては たなばたの
       寄り添うほどに 語り合えたら

   たったひとりの
      ほんとうのあなた……

ふぁみれすな落書

宿題なんて
   なんのためやら 世のなかの
 むなしき秋さ
    ちょっと寄り道

ふぁみれすな
  idle time ひとりして
 ふてくされます 窓さきアイビー

  わたしは軽食
    fish and chips

Hermann Hesseに
   関数教わる おろかさを
 梁塵秘抄(りょうじんひしょう)と おどる法皇

こんがらがります。
  ああ、こんがらがります……ささがにの?
   てすと逃れて
       ささめごと……か~もね。

速読を
  功徳も毒の 口説(くぜつ)なら
 夢で覚える スペルなどして……

それもまた
  馬鹿らしいけど 赤点は
 いやなら嫌と 人なみめざして……

あがいてしまう
  わたしなのです。

   あるいはそれは、現代の
  ……奇病なのかな。

遠くから
   おどろかさないで はしゃぎ声
 引き戻されて 耳を澄ませば

カフェを手に
  わたしとリキ也が ふたりして
 駆け落ちなんて 馬鹿なおしゃべり

嘘みたい
  ドラマチックな うわきして
 高鳴る胸の 鼓動なのかな

和歌みたい
   書き写してます わたくしの
 不意にあふれる
    ひとり……わびしさ……

    クラスには
       誰もいなくて わたくしの
     こころのうちの ピーターパンかも

       ただひとり
          逸脱してます コーヒーは
         ミルクのなかに
            夢をひと粒

     それもまたつかの間のこと
        やがてわたしはやりきれないノート閉ざして、
       そそくさと、ふぁみれすを立ち去るのでした。

          dinner timeの来る、
              その、前に。

あなたへの思い

 あなた/\
   あなたのことが 大好きで
  駆け出すほどに……
      あなた遠のく

    木もれ日の
      もれ来る野には やわらかな
     風が吹きます あなた欲さに……

  すみれ草
     あなたに摘んで 差し上げて
   笑われたいな わたし十七

眺めてインテリア

ランプ /\
  真っ赤なルージュは ラリックの
 たましいさえも 飾り色して

    キッチンは
      大理石かも
        とびらには
      まだらの紐か
         (百二十万?)
         誰が買うやら

        ふかふかの
      ベットに夢は 横ならび
         いつかだれかと
        ねむるものかな

    テーブルは
       ソファーつなぎな 双子して
      兄きブラウン
         売れ残りかも

     「貼り紙広告」
        とねりこを
          棚にしました
         うるしぬり
           職人技の
             こころ粋して

       小物には
          吸い寄せられる おとめして
         ひそむ魔物か 宵のおさいふ

     端末は
      絵文字メールか アステカか
        インカそれとも くさび文字かも

        「お手洗いして」
          かさぷたの
            気になるときは
              ばんそうこう
            貼ってしまおう
          それでおしまい

       いまだけは
         フロアーわたしの ものだよね
           さいふの紐は……
         ほどかないけど

     のがれたとびら
       子猫に夢を 奪われて
      ながめて暮れる 街の夕ぐれ

   のほほん
     春めく夕べ
       とまりして
     色づく秋の
       歩行者信号

         お腹すいたね、
           クレープ食べたい。

夕まぐれの唄

夕まぐれ
   あなたと影な コスモスと
 わたしを刻む 高台の丘

けぶりして
   夕ぐれ秋の さみしさを
 木材に焼く 遠きバラック

三日月に
   すがりつくよな 虫たちの
  いのりもとなく 風のいたずら

いまはもう
   束縛なんか されないで
 ほかの誰かの ものになれとは……

くれないに
   焼けただれては 夕やけに
 染まるわたしの ジェラシーなのかな

捨てられて
  やさしささえも 忘れては
    いまでも君の 笑顔欲しくて……

消されゆく
   君への思い なごりして
  いのりともなく みなだひと粒

サソリより
   ともすほたるの ほのおより
 静かな願い 君が好きだと

三日月に
  流れて星は ひと粒の
    はかなく消えて
   虫のねばかり……

さようなら
   お別れしましょう 手を振ります
 振り向かないで あなた未来へ……

まもなくです
   うらみに燃される わたくしの
 なごりみたいな 最後のいのりよ

   風よ、届けよ
     夕まぐれの唄

いつくかの落書

折られたつばさ
   抱きしめながら 包帯を
 ぐるぐる巻きした わたしカナリア

マフラーを
   編んでみたいな
  あなたには
     モコモカそれとも
    夕やけ色かな?

   チョコレート
      ふたつに割って さりげなく
     手渡してみる 今日は何の日

ポテチ ポテチ
   ショコラ お茶して つまみ食い
  みつか未満な ダイエットかも

あの人は
  どこにもいない にぎやかな
   街の明かりを
     まどう靴おと

横顔に
  月のあかりは さしのべて
 眠るあなたへ
   そっとくちづけ……

       (おわり)

コスモスの唄

コスモスの唄

 わたくしの
   ゆられています らくがきも
  口ずさむよう コスモスの唄

    触れてみる 胸のふくらみ
      さみしさの あかしなのかな
     鼓動ばかりは

      名も知らぬ
        道ばた秋の さみしさは
          虫のねばかり つのる夕ぐれ

    ぽつねん
       風に吹かれて コスモスの
     入り日に唄う 小首かしげて

  ねえあなた いつかきっと……
    声を掛けたって 答えないから
      わたしは消えて どこ吹く風の
    とんぼの運ぶ こだまばかりさ

おはようの歌

おはようも あじ気ないくらい
  またニュース 埋没している
 うちの侘びしさ

秋ですね。
  そう秋なのです、
 秋だから……
   食欲くらいは、
  わたしひと並。

見あげれば
  にやけまなこの 鏡して
 くちびる秋の わたしなのかな

おかしいね
   あるいはこれが 一番素敵な
 よろこびなのかな 今日のプロローグ

歯をみがく
  ときめくような 期待を夢に
 深呼吸する ひともいるかな

「いってきます」
  「いってらっしゃい」
 ただ、それくらいの
   あいさつもなくて、
  ぽつり、靴履く。

鳥たちの
  彩る羽根を
 さわやかな
   風は吹きます
  朝はまっさら

あさまだき
  よんべの酔ひの なごりして
 バスを待ちます はげかけのひと

「ん」をさけて
  哀しみ秋を 知らずして
 登校児童 はしゃぐしりとり

    わたくしは
      筋雲ながめて 深々と
     ためいきつきます いつもいつもを

   あゆむほど
     とぼ/”\あゆみ とぼ/”\と
    遅くなります なにかこわくて

チャイムの響

無機質な
  化学(ばけがく)仕掛け 校門を
 くぐれば誰(たれ)か
   むじゃきな独房

  ハウスみたい
    苗の規格も おしゃべりも
   たゞパンジーの 色のみにして

     おはようの
       けだるく返す あいさつも
      くじけてしまうの 今日もだいなし

  凹凸も
   なくて平たい キャンバスに
    ひと筆書きした 個性なのかな

teacherの しのぶ足音
  ささくさと 席に着きます
 あの人この人

  チャイムが
    鳴り響きます。
 こつぜんと
   ざわめき一つ
それから、整然。

わたしひとり
  いちょうもみじは ぎんなんの
 はなしも知らず そっとため息……
    だって……

教室は
 人の型(なり)した お人形
  話しかけても 伝わらないもの

 担任の
  たましいさえも 抜け落ちて
   おうむみたいだね 棒読み教科書

  ノートには
   ゆびさき震え わたくしの
    くだけかけした 思いはかなく……

  かなたにひそ/\
    みそか声する……

ギリシア文字 アルファベータを
  こねまわす なんの定理か
 秋はむきりょく。

ペン入れの
  キャラクターじみた 消しゴムを
 転がしたなら もみぢ舞い込む

    いつしか一限
      過ぎてゆきます。

休み時間
  ゴシップみたいだね さえずりの
 華やぐ小鳥 色もとり/”\

  机には
    怯える猫か わたくしの
       寝たふりしてます。
     まるで……
        ピエロみたいだ……

   ようやくチャイム
      いつしかご教授。

古典なら
  チャイム代わりの 琴くらい
 奏でゝみせろよ 竹取物語

 ひとりまた 逸脱してます
   切れ/\の 古文めかして
  しのぶ文(ふみ)かも

いつわりのふる歌

もみじ/\
 風の散りしく たはむれて
  舞ひ/\おどれ こゝろたのしも

ぬばたまの
 まよひ子猫の すゞ高み
  かなしからずや 夕やみの空

ちはやふる
   かゞる御橋の まよひ火か
 けぶる枯れ野を 染めるものかは

たわむれを
  せんとや生まれ けむものを
 まことならずや 汝(なれ)のたわむれ

たわむれを
  せんとや生まれ けむものを
 こゝろならずも またなみだかも

うらゝかな 小春日和よ
  うたゝ寝は わたくしさへも
 こゝろ和ます。

それからお気にの
  歌を奏でて……

  あーあ、
    やっぱり古文じゃ
      なくなっちゃった。

    あきれてわたくし、
     腕まくらする。

    いつかは誰かの……
      腕に抱かれて……

        それまでひとり、
      わたし、うたゝね。

    ♪♪♪♪♪♪♪♪

    なーんてね、
     あきれてしまうな、
   鼓動、落書き。

 先生遠くて、
   棒読み教科書。

    みんなは夕べの
     ドラマに夢中さ。

   自分で描かない……
     作られた……
       ……ものがたり。

    いにしえの 大宮人の たましいは
       いのちなのかな わたしよりずっと……

逃れたいもの

かねが鳴ります、
  かねが鳴る。
 わたしの鐘ではないけれど、
    ひなびたこころに鐘が鳴る。

   記した落書、ひっそりと、
  カバンにかくして、
     知らんぷり。
   かねが鳴ります。
  かねが鳴る。

 休み時間の、つかの間を、
   さえずるみたいな、秋の日を、
  わたしひとりは、ぽつねんと、
    不思議なものに、思うのです。

      遠く近くのからさわぎ、
        かなたかなたは静寂の、
       静止画みたいなセピア色、
          かねが鳴ります。
         かねが鳴る。

    「チャイムの響きは、
      いつの日も、
     変わらないものかも、しれません。」

   声かけられて、ついそんな、
     くだらないこと、答えたら、
    目を丸くする、この人は……

       わたしにとって、誰でしょう。
     ともかくあわてて、つくろって、
      たわけた話もしたけれど……

   話さなかに 呼び鈴(りん)の
     ちょっと待ってと つぶやいて
    不意に端末に 消えさった
      目の前にいる この人は誰?

  たがひとも
     ひとでなくして 符号へと
   埋没しては 逃げるかげろう

     わたくしの 鼓動を早み
       哀しみを 知らぬ友垣
      それは遠くて……

    つかみ取れない……
      不可思議な……領域……

 こんなけがれた
   この世はなんの ためにこそ
  生み落とされて わたしこなごな。

凍えてた
  貫くつららの 痛みして
 逃れる午後よ 日なた欲しさに

   ……それは早退の、
      仮病、だけれど……

校門を
  逃れるときの 哀しみは
 風の追いくる ざわめきとして

   ……まぎらかしては
    つま先立ちして……

門(かど)を逃れ
  耳をふさげば さわやかさ
 なだめて秋の 風のやさしさ

   ようやくあらたまる
      こころなのかな……

路傍には
  道ゆく人の おだやかさ
 コスモスを手に ママと坊やよ

うすべにの
  隠し化粧は 誰(た)がために
 するものかしら ミラーごしして

母さんの
 温もりなんて 今はもう
  欲しくないもの 空き缶けります。

父親は
  とき/”\奇妙な けがれして
 ひとみにひそむ けものみたいな……

親鳥の
  かげろうみたいな 巣立ちして
 ぼんやり生きてる わたしなのかな

  そして遠く/\
     ぬくもりはなずむように……
   ただ、他人ばかりが、
      不可思議なすがたして……

    ……いつの間に
    日だまり秋の うなだれて
     靴をひもとく わたしなのかな

あらたかな
  ぽかぽか日和
 取り戻そう
   いつものベンチ
    ……ポチの公園

  お犬さま
   飼い主を引く 鼻さきに
 突き抜けるよう 秋はみず色

   羽ばたいて
     飛んでゆけたら
    みなひとの
      アルカディアさえ
     あるのかしらと……

    わたしって……
       相変わらず馬鹿。

ひとりぼっちの夕まぐれ

家には誰も
  いませんそれは むかしより
 変わらない定理 たったひとつの……

あの日ママは
  なんだかパパと 喧嘩して
 飛び出す秋の 真っ赤な夕ぐれ

うしろ髪
  あきらめきれない おもかげを
 追い求めては つまさきもつれて……

恐いよう
  泣き出すたびに 子守歌
 そのやさしさよ 貝のそら耳

部屋のドア
  真っ赤な /\ 夕焼けよ
 わたしを刺すの?
   それとも、なぐさめ?

   どうしても
      こらえきれない 押し寄せて
    はち切れそうな 鼓動ばかりは

  引き出しにそっと
    しまい込んでた きららめき
   やさしく触れて こころなだめて……

夕やみ /\
 はぐらかします 哀しみは
   真っ赤なルージュ いつか?
  傷あと……

  閉ざしかけ
    思い染めてか 夕まぐれ
   遠くの方で 手を振るのは誰?

 助けてと
   開くとびらの 誰もいない
  扉の向こう 錆びた扉よ

   ……恐くなって
      あわてて鼻唄 からげんき
     階下に逃れて お食事しなくちゃ。

       いちだん にだん
         さんだん よだんと 威勢よく
        数え下界へ 降りるわたくし。

   いっせいに
     ともすともしは いつの日の
    よろこびなのかな
       リビング、あかるさ。

 それから、キッチンへ
   すべりこみます、わたくしの……

  ことことこっとん
     たいした調理じゃ ないけれど
    ぶった切ってた わたし大根

味見して
  サラダ・スープは お茶の子に
 ローズマリーな 肉じゃがもあり?

    それから盛りつけ
       ほんわかごはんさ。
      おいしい夕べが
        待っている。でもね……

  ひとりして
     味気なくして 静けさの
   ごはん侘びしく そっとチャンネル

道化師の歌

 あたりきの
   情緒を果てて ののしりは
  雄叫びにして 群れる色鳥

おどろいて
  リモコン消した わたくしの
 時計の針の さみしさくらいが……

    ほんとうの世のすがたして
      砂の去りゆくかなしみだけれど……

  なんだか不意に
    誰かの言の葉 欲しくなり
   冷たい端末 握りしめます

けれどもまた
  誰と彼との 関わりさえ
 代わり代わりの 変わらぬものなら……

   そんなコミュニケーションはまるで
       だらけた人工無能です。
     そんなコミュニケーションはまるで
        お人形さんの芝居です。
       そんなコミュニケーションはまるで
         ひとでなくして、言葉散りゆく……

     すがりつく
      そのかなたにも たましいの
    欠けらさえない 君は誰なの?

  あわててまた
    液晶つければ 道化師の
   むらがりはしゃぐ 誘蛾燈して

ジェスチャーがもう、
   普通ではないのです。デフォルメです。
 ひけらかしあう、猿のお笑い。

   そうまるで、
     猿山一途の 騒ぎして
    たれ彼餌に はしゃぐお笑い。

       それはまるで
         ひとのすがたの 物まねと
        グロテスクなの ひけらかしして……

  けれども、おかしい
    なんだか急に 噴き出して
      お猿さん お猿さんと 歌ってみたら
    ほんとうにそんなジェスチャーの
  満ちあふれては咎めない
    あいあいみたいなおりの中
      あたえた餌に食らいつき
        喜怒哀楽さえゆがんでた
      小さな島のものがたり
        あるいはこれこそ今の世の
       縮図みたいな、あきれては
     ああ馬鹿らしい、馬鹿らしい
   こんな眺めはわたくしの
     つまりはおこないが悪いのだ
   もうよしましょう、よしましょう。
     あわててリモコンいじったら、
       きまじめしてます天気予報、
     あまりのギャップに、噴き出して
        急につかれて……
         最後は 興ざめ。

宿題の歌

 誰あれもいない
   後片付け……だけど お父さん
    いたからどうした?
   話すこともなし。

     それからミントの
       ハーブティーかも

  スペアより
    ペパーミントか 待つ虫の
   響き合うよう こだまするかも

 (不意に)隠された
   べつばらケーキは よこしまな
  にやけまなこか なぐさめに似て

      レアーなチーズに
       ホイップしてます。

歯をみがく
   にやにやしてます かがみ越し
  かなたは今朝の わたしなのかな

  足あとを
    うらのぼります 階段は
   おもしみたいな
      おなかなのかな。

つまりは…………
  …………食べ過ぎ。

    宿題を
      済ませてしまおう。
     数式の、
       もつれた糸を、
      ほどく探偵。

   化学(ばけがく)も
     お化け屋敷と 駆け抜けて
    そらから秋の 星を見るかも。

        ちょっと……だけ、嘘。
          いかさま、ひと息、
         ノートの切れはし、もてあそぶ
        発句はふしだら?
           それとも、はせをか

そろそろまた、
 欲しくなります こたつ猫

 さみしさを
   あんか抱きしめ
  ゐまち月

  カーテン
    なみだに染まる
   きり/”\す

   わいんなんて
     飲めないか~もね
    ボジョレの日

  はせをして
    とく/\とくと ひゞくかな

     月見れば
       ちゃんちゃらおかしい
      だんごかな

 ふるさとは 更けゆく秋よ 旅仕度

  「狂句」
閑話休題
  こがらしにして
    こたつ猫

月さして
  和歌によりそう 思いかも

月かげや
  定よりに添う
 かづらかも

  な~んてね、
    ちょっとだけ 式子内親王

見知らずの あなたはいずこ
  くちべにを 染めてみたけど
 わたし十七

  だらしない
    宿題すらなく ノートには
   八重の桜か これならく書

 呆れはて
   ちゃんちゃら済ませ
  化学式 とざして仕舞って
    はいなおしまい。

ゆぶねの歌

階下へ
  降りるスリッパ 冷たくて
 驚かされます かんたろうの唄

   服を脱ぐ
    (むねのふくらみ 確かめて)
      お湯は夕べの シャボンして
    わたしをつなぐ ぬくもりの中

  侘びしさに
    シャワーを浴びて ひとり身の
   そっと膨らみ 触れてみたけど……

 その人は
   ここにはいない わたくしの
  見知らぬさきに きっと住んでいる

    委ねたくなる……
      ような。すべてをまかせ……
     たくなるような……
       そんなあなたに、
      いつか……どこかで

   おもかげの
    はかなく夢を シャボン玉
     はじけて消えて はいなおしまい

      それから不意に野分して……

  教室の
    シャボンはじけて 目にしみて
   引き戻されて わたしなみだ目

     ケータイに
       すがり付くよう ぬくもりを
      追い求めては まつむしの唄

    バスタブに
       どっぷり浸かる 疲れして
      紡いでみせろよ マリーゴールド

         こんなわたしに
        いつしか触れる
           ひともあるかな?

       ぶくぶくぶく
         馬鹿なこと言った
        真っ赤さに
          お風呂の泡よ
            のぼせたいかも

      それから急に
        遠くの方で 鳴り渡る
          虫の音よりも けたたましいもの

     驚けば
      ぽつんとひとり
       バスタブに
        テレフォンベルを
       聞き分けるかも

    遅くなるよ
       ただそれだけの ことなのだ
     出るのもめんどい 知らぬふりして

   浴室を
     逃れる窓は こおろぎの
    かすかに伝わる 恋の掛け合い

  わたしたちより
    ずっと懸命な いのりして
   精一杯の
     のろけなのかな。

 パジャマして
   猫さん刺しゅうは 春を待ち
  おまもりみたいな ふくよかさして

……もう寝ましょう
 引き出し影に 隠された
闇の手記かも ちょっと記して……

つかのまクリスマス

お元気ですか
  わたしの知らない
 あなたです

   うなだれないで
     はげましたいもの。

  けれどもわたし
    いじけごゝろの ひがみして
      うずくまってる 小春日和を……

        思い疲れ
          旗を忘れて まどろめば
         あなたくじけて 波へ消え去る

       慌てゝわたし……
      ……旗を振ります。



近頃は
  待ち遠しいな ハロウィンの
 かぼちゃあたまと 恋の予感と

  しぐれ /”\
     はなやぐ街の 喧噪も
   忘れにゃん子の 夢はなんだろう?

     プレゼント
       何がいいかな?
    あなたには
      手編みのセーター。
   そんな? 今どき。

 まあるい猫も
  耳そばだてゝ 鈴の音(ね)は
   もみの木かげの クリスマスイブ

お月見は
  お団子にして ハロウィンは
 カボチャそれから クリスマスには……

   ミサを奏でる
     オルゴールかも。

トナカイさん
  真っ赤なお鼻の エピソード
 付け加えます ポストカードに

父さんは
  凛々しく母さんは あでやかに
 わたくしの手を 握りしめたら……

   メリークリスマス
      チョコにイチゴに しちめん鳥
     誰(たれ)のほほえみ それはいつの日?

 しあわせは
   自分で見つける ものだねと
  幼い子らを 脅す夜あらし

   わたくしは
     温もり欲しさに ぬかるみを
    さ迷い歩く VOCALOID さ

 やさしさは
  眺み暮らせる ものでなく
   もみの木の葉に ふれて知るもの

それをまた
  見てくれにして おもちゃ箱
 餌づけされます はしゃぐひよ子ら

   指さきの
    風もかよわぬ 遊びして
     結びつきます こころならずも

   ただそれだけ……
      わたしにはもっと おそろしいもの
     お化けなんかよりずっと
    おそろしい姿なのして……

暗やみの歌

ともし灯の
  乏(とも)しくなれば おとずれる
 こころの底の お化けなのかな

   ぬばたまが
     押し寄せてきます。
       ぬばたまが……
     わたくしの
       いのり届かず、
         ふりしきる闇

 恐いよう
  誰かお願い さしのべて
   こゝろのひゞを あさる夜あらし

   逃れても
     逃れてもなお 墨染めの
    覆い被さる 闇の深さよ

   「教室のおもかげ」
  にこ/\と
     なみだをながす お人形
   砕けた胸の わたし人形

遊びたいな
   ペンキの色に 染まらずに
 こころにふれる 遊びしたいな

     無理してた
       お化粧したり はしゃいだり
      嘘の遊びを
        与えられては……

   誰もみな
     カラオケみたい ひとりして
    おうむみたいな
      くり返すばかり……

       色取りを
        服のみたがえ 並みして
         つまはじきする 規格外れと

     引き裂かれ
      穢され果てゝ 投げ込まれ
       焼かれてもがく 闇の人形

   かなしみの 夜明の唄を くちづさむ
      青い小鳥よ どこへいったの

  ちこちこち
    こちこちこちこ 針を打つ
   いのりは時の 数をさ迷う

     天井の
      模様のゆがみ 恐ろしさ
       慌てて起きて ともす電灯

  不意にファントムの
    やさしさ欲しくて 口ずさむ
   わたしならきっと ずっとあなたを……

 ほんとうの
   やさしさはきっと せゝらぎか
  鼓動みたいな さゝやきのなか

ぬいぐるみ 強く抱きしめ
   ささやくの 神さまなんて
  どこにもいないと

  遠くかなた
    ガチャリと響く ドアがして
   わたしを養う ものは誰かな

    ちょっと安心
      あるいはけーべつ?
     それもなんだか
       夢のかけはし

   うつらうつら
     まどろみあるいは もつれ合う
   今日と明日との あやとりみたいな……

 ごろごろごろ
   毛布(けっと)の杜(もり)を さ迷えば
  夢より来る ひづめ近くて

現実(リアル)と
  仮想のきわか いざよいに
 子守歌して 遠ざかる人

   わたし疲れて
     もやをさ迷う……

  夢に抱かれて
     ねむれや小鳥 空のうえ
   まばゆくひかる 春の星いつか……

眠れずに

     生まれては
       泥にまみれて 捨てられて
      踏みにじられて 褪せた人形

   分からないもの
     さ迷う靄(もや)に 息を絶え
    真っ赤な瞳 いつか朝やけ……

 ほんとうはね
   ほほえみながら 今朝の陽を
  浴びてみたいな むずかしいもの

   ……ノート閉ざして……
       こころを少し 落ちつけて
      小鳥らに聞く しあわせの唄

    うしろめたさ
      カーテンを引く おふとんに
     もどらなければ けれどもう朝

        ほがらかな 人に逢いたいな
          おだやかな ひたむきな懸命な
         清らかなあなた……

     しあわせの 歌い合えたら
       もたれては うなだれたいな
      たったひとりの……

   哀しみを
     枯れゆく野辺の 夜明けして
      つらぬき止めぬ 露のあとさき

          (おわり)

よろこびのいちページ

[一]
よろこびは……
  ……アラーム?
   それとも……
 ……春告鳥……

[二]
よろこびは
  顔を洗えば 水ゆるむ

よろこびは
  あらい顔して 水ぬるむ
 なんかは最悪。

[三]
蝶の舞う よろこびさえも がらす窓

だって、
  蝶の舞う よろこびにして 猫の妻
 なんて、作りすぎな嘘ばっかり。

[四]
よろこびは
  ときめく花の こころかも

[五]
よろこびは
  クッションいいっぱい ひばりかな

[六]
キッチンの よろこびたいな 新キャベツ

[七]
よろこびは
  バタートースト?
 ジャム? チーズ?

これってだんぜん春の季語?

[八]
よろこび newspaper……
  さくらかな

  ああ、さくらかな
   さくらかな

[九]
  巣づくりの
    よろこび響け
   歯みがき粉

[十]
   よろこんで
     お気にのシャツは
    うすでかな

 よろこんで
   薄手のシャツよ
  花模様
    なんて、だらしない作りごと。

[十一]
     よろこんで
       おはよう花の
      街角よ

たとえば、こんなのはきたならしい。
    よろこびに 霞を出でし 市井かな
  そんなくらいならきっと
    おはようと
       あなたに告げて
      花の街
        くらいの方がずっと芭蕉。かーもね。

[十二]
   アネモネの
     よろこばしきか
    花屋さん

[十三]
  よろこんで たんぽゝよける おんなの子
   よろこんで たんぽゝをける おとこの子

[十四]
    よろこびは のどかなバスの とまりかも

[十五]
      またメール
        よろこぶわたし
       さくらかな

          ああさくらかな
           さくらかな

[つかのまコマーシャル]
   antipastoな
     夢をみました 猫の子の
      ひそみにうずく ものはなにかな

[十六]
    よろこびは かげろうを聞く バスのうち

[十七]
  「窓辺風景」
   よろこびは ちゃり転がして 風ぐるま

こんなのは、
  「ママチャリの背よ」
  なんて説明より断然いい。

[十八]
  メールには
    よろこびかくして
   さえ返る

[十九]
      よろこびは
        うぐいすさえも
       信号機

[二十]
    よろこびは……
      にゃんこの昼の しおらしさ

[二十一]
  たんぽぽ /\
    ぷちよろこびな 舗道かな

最後を「道ばたに」なんておいたら、途端に、
  けがれも知らない 白のハンケチ
 なんて書き加えたくなって、
    あっという間に和歌の出来上がり。
   か~もね。

[二十二]
よろこび
  shopwindow
    若葉かな

[二十三]
    よろこびは
     あなたいざなう
      花見頃

[二十四]   そしてまもなく……
    よろこび……ひばりは……
   恋をするかも

[二十五]
     よろこびは……
        ……鼓動に蝶の 舞いあがる

[二十六]
   よろこびに
     ほっぺたつねる
    にやけ猫

[二十七]
     胸のうち
       よろこびあふれて
      さくらかな

[二十八]
       よろこびに
         君はもたれて
        花ざかり

[二十九]
     よろこんで
       猫のかけよる……
      わたしかな

[三十]
   あなたと春を、
     よろこびたいな
    いちページ。

           (おしまい)

どくらくぎん

だらしないあけみに
  そっと捧げる 絵かき歌。
   かーもね。

アンニュイは 朝のシャンプー あきらめて
   雨と眺める あじさいの花

いらだちは 祈るそばから いつの日も
  言い捨てられてた いつもあなたに……

うれしいな うち来るあなた
  卯の花も うなづく季節は
    生まれ日の歌

えらそうな
  駅長さんは エジソンに
 えらく似てます 駅の名ぶつ

おどろきは
  お辞儀しながら 降りてきた
 大人じみてた 幼ともだち

かなしみは
  カナリヤのこと 紙芝居
 かたことも歌 かなでないのは

[こんなのは着想まるだし]
かなしみは かな網ごしの かなりやの
   かたことも歌 かなでない秋

気まずさ
  きのうのいさかい 気がねして
 君に連絡 切られなみださ

苦しみ
  雲のはたては 隈(くま)もなく
 暗がりあえぐ 狂ったピエロよ

けだるさ
 倦怠期して 今朝のご飯
  仮病のふりか 決して作らず。

恋しさは
  この世の果てに 来ぬ人を
 焦がれてはまた 来ぬ人を待つ

さみしさは
 ささの葉風か さやさやと
  さりげなくして さそうたな夕

親しさは
 静かなふたり シーツには
  しのぶみたいな しあわせの唄

[こんなのは着想まるだしかもね]
   親しさは
     しんとひそまる 寝室の
    静かなほのお 偲ぶ恋かも

涼しさは
 鈴のね /\ 鈴の虫
  透き通るよう すりガラスの先

切ないよ
  せめても君の 背は広く
    席は遠くて 世界史受けてた

そそっかしい
  それなわたしの その夢は
 それじゃないあれじゃない
   それじゃあないったら、もう、
   (そんなんじゃないんだ
   そんなもんじゃないよ。もっともっと)
 空よりもずっと青いもの

たのしいな
  七夕宵の 太鼓して
 誰(たれ)かれ踊る たわむれたいもの

[こんなのはお猿の散文]
    たのしさは たなばたの旗 たなびいて
      だれもが踊る たいこ響けば

ちからづよく
  誓いとたぎる 血潮かな
 知性とはまた 違うかがり火

つまらなさ
  つれないだんご 月見して
 つながらない君 伝わらないもの

照れるよね
  適当な文字 手書して
 でもねあなたの テリトリーのなか

こんなのは「照れくささ」なんてこだわらない方がよいかも。

ときめきは
 遠くさえずる 鳥たちと
  となりにあなた 時さえとまれと……

泣きべそは
 なんでかんでか 投げ出して
  なにやらなにが なみだ坊やよ

にぎやかさ
  二度目は夏の 日曜日
 肉焼きながら 握りあう手も

ぬれますか
  ぬかるむ雨は ぬばたまの
 ぬくもり欲しさ ぬいぐるみ抱く

こんな思いに「ぬれやすさ」なんていけてない。

眠たげな
  ねえ春ですね ねこやなぎ
 猫は小庭に 寝耳かたむく

のどかさは 野に咲く花よ
   のびのびと
 残んの春を のせて吹く風

はじらいは
  はらはらしては 春の宵
 はじめて君に 話しかけてた

こんなのも「はずかしさ」より柔軟か~もね。

ひもじさは
  干からび胎児の ピアノ曲
 ひとりぼっちで 弾いてみたけど……

弾かれたサティも ひとりぼっちか

不思議だね
   ふたりの指さき 双子星
  ふれあう肌の 冬のぬくもり

「ふっと息して 冬のひめごと」なんて考えたけど、はてなくおばさんぽい。

へそまがり
  辟易してます 変な人
 隔てた恋の 返事ください

こんなのはがんばって「へりやすさ」なんて使わないもの。

ほのかさ
  星あかりした ほたる火と
 頬のぬくもり 他にはなにも……

まじめさは まさしくあなた
  真昼間の 真夏の駅に
   待ちつくしてます。

みだらさ
   みせばや胸の みごとさを
 みな脱ぎ捨てて 見せてみたくて

遊び歌なら、古語と戯れてもいいのかもね。

むなしさ
   むかしはひとも 無人駅
 向かいパン屋は 虫の合奏

めめしさ
  メール眺めて 目をそむけ
    メールかえして 目になみだかも

もどかしさ
   もうもどれない ものならば
  もう少しだけ もつれていたいな……

やりきれず
  焼きますノート やぶいては
 やさしさの影 闇のかなたへ

ゆるせなさ
 ゆりの花びら 指さきに
  ゆすり折っては ゆきずりの人

よろこびは
   よそよそしくも よきひとよ
 寄り添うような よこに眠れよ

磊落な、来客もあります。
  落花生の、落雁もあります。
 来園を願う。

りこうさ、それは
  リチウムイオンの 理念とか
 理論や数式の 理解じゃなくって

流浪(るろう)さ? なにそれ? おかしい
  瑠璃色のなみだ、あるいは 涙腺みたいな
 ルールも見あたらない ルーレットみたいなもの。

憐憫(れんみん)を 蓮華に垂れて
  憐情(れきじょう)は 礫岩(れきがん)へと
 歴々の菩提

うまく出来ないんで、ちょっとたのんじゃった、そんな歌かも。

  [狂歌]
老猾(ろうかつ)な
  牢獄のあるじ 路銀して
 路傍へ帰る 六時半かも

わびしさは
 わたつみの海 わたる帆よ
  わざと手を振る わたしひとりは

         (をはり)

ねばーらんどの歌

せせらぐ小石のかたちして

ふわりと羽をはばたかせ
  とびゆくもののかたちして
 雲はながれてわたあめの
    おもいになずむ夕まぐれ……

  おもいの欠けらはこんぺいとう
    きんきら星したお星さま
      にやけまなこの三日月も
    おそばにひかえてはしゃぎます。

        わたしは小石を精一杯
          ほおってみました腕むこう
            ぽちゃりとすましたせせらぎの
          か弱いくらいの答えして……

     運動しなくちゃなりません。
       深呼吸しなくちゃなりません。
         そうしなければ秋風の、
       色さえ褪せてしまうから。

   ああそれなのにわたくしは
     おうちに帰ってつかの間の
       お菓子ぶくろを取り出して
     つまみ食いするうち日はしずみ……

 うつらうつらのまどろみを
   してみたところがテーブルの
     夕げ仕度となりましょう。
   なにしろそれは味気ない……

ひとりぼっちなレトルトの
  なぐさめカレーのかなしみや
    福神漬けしたむなしさに
  思わずはっと振り向けば……

     時計の針は音もなく
       リズムを刻んでいるばかり
      味気なくしてスプーンの
        とまらないものごはんです。

   モダンなミントのティーならば
      別ばらケーキはよこしまな
     よろこびあふれ、踊りだす
       そんなフォークもあるけれど……

  なんちゃらおかしなみたまです。
    はしゃぐと見せてなみだ色、
      同情されては舌を出す。
    それからイチゴを深刻な
        顔してお腹も一杯です。

パキラな観葉植物は
  ペパーミントと解け合って
    咲かない花さえ咲くならば……

  そんな願いはいつわりの
    ポットのお湯をぬるくして
      根元に与えてやったなら
    葉っぱはゆれて笑ってた。

        お腹いっぱいねむくなる
          たゆたう夢の季節して
            不思議の森のしらゆきを
          甘くするのはだれでしょう?

      みらいは誰かのためにある
        わたしのためにもありますか?
          夢みる頃のわがままを
        もてあそぶようつかの間を……

    ルージュめかしたくちびるは
      あなたのものではないけれど
        あゆみの向かうかなたには
      見たこともない影ぼうし。

  真っ赤な顔は、歯をみがく
    おろかおろかな、おもしろさ
      鏡にむかうまえ髪なんか
    ぱさっとしてみるポーズです。

くちびるみたいなうつろえば
  あせた素肌の蒼色に
    あわてお気にのクリームを
      塗りたくってはみたけれど……

     おろかおろかな、おもしろさ
       お風呂につかってはじけ飛ぶ
         さっそう着物を脱ぎ捨てて
       恋も気品もどこへやら

   ゆぶねにきざすはやり歌
     今こそつかれを逃れさり
       せせらぎにして投げつけた
     小石のことを思います……

 わたしはお湯につかります
   わたしはここにいるけれど
     わたしの思いは流れゆく
   せせらぎなどは知らなくて……

あわててぶくぶく息をして
  たわむれたいなおさなさを
    寄せては返すかなしみを
  まぎらかしてはみたけれど……

    なんだかあふれるなみだです
      崩れかけてはじゃぶじゃぶと
        小波をあそぶわたくしの
      あれまつ虫の夜も更けて……

  気取り直しのパジャマして
    さっそうベットに引きこもり
      間にやら人の帰宅さえ
    知ったことではないけれど……

わたしにはわたしの唄がある
  そこではわたしがヒロインで
     わたしのための唄だから
  いまわたくしを唄うのです。

      ただそれくらい、わがままな
        精一杯のきりぎりす
          なんだかさえない一日の
        砂の粒さえうとうとと……

   お休みなさいまたあした
     わたしは夢を見るでしょう
       それはあなたのものでなく
     きっとわたしのものだから……

      お休みなさいまたあした
        わたしの夢はわたくしの
          たったひとつのけがれなき
        こころ秘かなまことです。

肝っ玉母さん

肝っ玉母さん
  そんな母さんに会いたいな
 びしばし叱る情熱と
   あたりちらした武士(もののふ)と

肝っ玉母さん
  そんな母さんはいないかな
 おもい立ったらがむしゃらに
   父さんさえもぶちのめす

  (ああそれなのにだらしない
     いざとなったら我がせこの
    思いよりそう甘えして
      くびかしげたりするのです)

肝っ玉母さん
  わたしを叱ってくださいな
 甘やかされて怯えてた
   わたしのこころをたくましく
     今すぐ叱ってくださいな

   二代目になるその日まで
     わたしを育ててくださいな
    そしたらきっとわたくしも
      やがては肝っ玉母さんに……

  なれるものかな、分らないけど、
    ただ願います、ひたむきに。
      甘やかされて、わたくしは
    叱られたいほど、さみしいの……

 叱ってくれる人もいない
   肝っ玉母さんを描いては
     わたしはきっと夢のうち
   つかの間あなたの子どもする。

ほんとうのたからもの

こちこちかっちんお時計さん
  こちこいかっちん動いてる
    そんなお歌を奏でたら
   古いといって笑われた

  げんせんかんのおかみさん
    ふしだらな夢を眺めたら
      時代錯誤のはゝきして
    それはどなたと笑われた

 まったくそれはその通り
   先カンブリアのみなそこの
     エディアカラたちたわむれて
   からまる節のあゆみです

     ガス灯ともしたロンドンの
       霧に染めゆく探偵の
         ワトソン君を道連れに
       北へ逃れる夜汽車です。

   無邪気にはしゃぐミッキーの
     黄金(こがね)に満ちた稲穂して
       子らの願いをわらしべに
     あら稼ぎするあこぎです。

(ああそれはそれミッキーの
   生みの親の願いではないけれど……)

けがれたくないみたまして
  むじゃきさそそぐまなざしを
    塗り替えてゆくミッキーの
  楽天主義した亡者(もうじゃ)です。

      あるいはわたしは過激派の
        左翼を担うルクセンブルク
       ローザみたいな情熱を
         こころに宿していのるでしょう。

   あなたにふれない領域を
     ひとりぼっちでとぼとぼと
       あゆむすがたは花咲の
     ポチよりはるかみじめです。

       あこぎなピエロになでられて
      反骨さえもならされて
     灰となるまでご奉仕の
      なかよく路傍を歩むなら……

 きらめかないけどわたくしの
   かかげて生きるかゞりです。
     夜汽車の高炉にくべまして、
   けむりを吐いて走りゆく。

       やがて夜あけの浜辺には
         水平線のむらさきと
           しあわせはこぶ小鳥らの
         ささやき声さえこだまして……

     わたしはきっと会えるでしょう
       それは神さまではありません
         闇のかゞりはぬばたまの
       これな思いさえ受け止めて……

   うなずいてくれる人、あなたです。
     わたしはそっと寄り添って
       ようやくだらしなくうなだれて……

     わあわあ /\ 泣くでしょう。
       それからすねてもみせるでしょう。
      それからつがいの羽をして
        水平線のかなたへと……

  たなびく雲を追いかけて
    かもめとはしゃいで消えるでしょう。
      そのときはもうわたくしの……
    唄はどこにも聞こえません。

   けれども空にはこだまする
     しあわせの唄があるでしょう。
       そのときはもうわたくしの
     かゞりは闇さえ照らすでしょう……

  おそれるものなどなにもない
    かもめとはしゃいで唄うでしょう。
      ピエロのひとみに怯えては
    ノートにこもることもなく……

 ただその人に抱かれて
  わたしは雲となるでしょう
 しずかにひそむうづみ火の
まだ見ぬくらい、あなたです。

まりもの唄

まりものお父さんは言いました
  もっと丸くなれと諭します
    まりもは頬をふくらまし
  こころは丸くなりません

まりものお母さんは言いました
  こんなはずではなかったと
    まりもは頬を赤らめて
  胸のまがたまかくします

けれどもやっぱりみなそこは
  どうしても好きにはなれませんでした
    こんな世界はわたくしの
  いどころとさえ思われず……

まりもは母さんに背きます
  まりもは父さんをうらみます
    二人はまりもをののしります
  家族はこなごなになりました

まりもはみなそこを逃れます
  そうしてお月をめざします
    ぷかぷかぷかぷか誘われて
  明るいほうへとゆくのです

まりもはみなもへむかいます
  そうしてお空をながめます
    それからはしゃぐ鳥たちの
   すがたを見ては驚いて

まりもは羽を伸ばします
  まりもはくちばしを伸ばします
    ばしゃばしゃ水を弾いては
  めまぐるしい太陽にいのるのです

(どうか切ないわたくしの
  精一杯のいのりして
    あなたにおすがりいたします
  わたしを飛ばしてくださいな)

どだいまりものことなどは
  天(そら)にとっては砂粒の
    欠けらの欠けらのまた欠けら
  たわむれ叶えてやりますか?

それはお空の定理には
  関わり無いほどたわむれで
    奇跡の奇の字もわずらわしい
  たいくつしのぎの魔法です

(ひまを逃れたスポイトの
  レモンの汁をアルカリに
    ちょっとたらしてみたばかり
  魔法だなんてあきれるわ)

まりもはたいそうはしゃぎます
  それからお空に向かいます
    いつしか羽も生えそろい
  泡も知らない風を受け……

    朝な夕なのはばたきと
      ついばむ作法も覚えたら
    まりもは今や鳥たちの
  仲間となって唄うでしょう

まりもはいつしか忘れます
  みなそこの里を忘れます
    父さん母さんはいつわりの
  まがいものした墓標です

まりもはいつしか大鷲と
  恋路の果てに結ばれて
    立派な子供を産みました
  けれどもそれはまりもです

みなさま笑ってはなりません
  むかしばなしの落ちばかり
    期待したとて無駄なこと
  わたしの思いは違うとこ
    まりもという名の大鷲の
      立派なすがたを羽ばたかせ……

まりもの子供は父親の
  すがたを倣(なら)って馳せるのです
    名まえばかりがまりもとは
  不思議なことだと父親も

思ったところがまりもです
  まあるいこころの輪を描く
    そう諭されては黙ります
  呼べば呼ぶほど懐かしい……

父さんにとってもまりもです
  母さんはもとよりまりもです
    まりものくせに大空に
  描く輪っかもまりもです

やがてはまりも独り立ち
  見送るまりもは母さんの
    羽根ふる紅のなみだして
  さよならしました夕暮れに……

ふいに浮かんだみなそこの
  まあるい頃のすがたして
    心配していた母さんの
  あまいお唄を思い出す……

センチメンタルあふれては
  寄り添う夜は更けるなら
    おっとの羽根にもたれては
  しずかなまあるいお月です

そのころ未来へ馳せのぼる
  息子のまりもはみずうみの
    自分をうつす影法師
  大鷲鳥のかたちして……

ひるがえるべきみなもには
  なんだか小さなまりもです
    はたしてあれは誰なのか
  銀のひかりと降り立てば……

たちまち水に呑まれては
  まあるいまあるいまりもです
    羽根さえさらりと抜け落ちて
  ぷかぷか浮かんで笑います

懐かしくなる冷たさに
  どっぷりつかったみなそこに
    どんどんくだってみましたら
  おとぎ話の里までも……

お辞儀をすれば母さんの
  まりものそのまた母さんの
    あるいは父さんのすがたです
  のどかなたゆたう毎日に……

いのちをつつくついばみの
  あくせく生きる毎日に
    別れをつげるあこがれが
  わあっとあふれてなみだです

いつしかまりもはみなそこの
  まりもの里に生きるのです
    母さんの羽根を忘れます
  父さんのこころざしを忘れます

まるで輪廻のものがたり
  すくわれないとは誰のこと?
    まりもの親さえ哀しまず
  まりもの子さえ哀しまず

(鳥となったまりもさえ
    鳥からかえったまりもさえ……
   孫を迎えたあの頃の
      お里に暮らすまりもさえ……)

哀しむことはなにもない
  のどかのどかのそれぞれの
    願いのどかにわらうのです

そうしていつか出会えたら
  おはようのあいさつを交わすでしょう
    それからそっと照れくさく
  ありがとうの言葉を述べるでしょう

さながらそれははぐくみあう
  感謝のようでありながら
    その実もっと単純な
  お祈りみたいなものならば……

わたくしはまりもの生涯を
  価値あるものに思うのです
    そうしてまりもにあこがれて
  こうして記してみせるのです。

こなゆきの唄

こなゆきこんこん舞いおりて
  こなゆきこんこん白くなれ
 くじけたこころも塗り込めて
   真しろくなればためいきも……

  こなゆきこんこん舞い降りて
    こなゆきこんこんましろにそ
   サンタのベルにあこがれた
     トナカイさんのおはなです

 それから聖者がおとずれて
   静かな夜を奏でます
     七人のこびとは白雪の
   お歌のなかに眠るでしょう

      ツリーともした電飾の
        青や緑とうつろへば
          宿した胸の坊やさえ
        たからものして眠るでしょう

    すべてはしろく包まれて
      やさしくなって眠りましょう
        欲しがるものはひとつだけ
      あなたのこころのやさしさを……

  ほのかな窓のかなたから
    ましろな雪のしらべです
      くじけものしてけがれなき
    わたしも夢を見るでしょう

ましろくなってささやくの
  誰かにそっと抱かれたい
    なんだか急に恥ずかしく
  指になでますガラスには……

  「あなたのためのわたくしの
     こなゆきこんこん白くなれ」

       にやけたサンタのながし目と
         あきれるようなトナカイの
           鼻さえ窓をよこぎって
         また降りつのるこな雪に

     わたしはそっとたましいを
       あずけてみましたクリスマス
         すべての願いをましろにそ
       雪は染めてかくれましょう。

ポターのうさぎは逃げ出して

   ポターのうさぎは逃げ出して
     じゃがいも畑をおもしろく
       掘りまくったらおやぶんに
     怒られたのはモグラです

  いえいえそうじゃありません
    しかりつけたがモグラです
      笛を吹くのはハーメルン
    ねずみを誘うしらべです

   ポターのうさぎはおやぶんを
     あざ笑っては利き腕の
       立派な穴掘り見せるのです
     もぐらの親分あきれます

        もぐらの子分は喝采です
          空いばりした親分さえ
            からかうものかうさぎさん
          たぬきを沈めた情熱よ
              ヒロインじみた気配さえ

     黄泉のねずみはペンライト
       うさぎのためにふるものか
         なにやらにんじん捧げては
       ポターのうさぎにやるものか

   そのころポターはノイローゼ
     うさぎのゆくえを訊ねれば
       枠にはまったマナーやら
     子どもごころの矯正に……

  わたしを使うものならば
    わたしはわたしでなくなるの
      それはこどもためでなく
        親におもねるばかりです

     偽善にこねる独善の
        どっぷり染まった描きして
           わたしを遊ばす筆さきの
       舗装道路の俗っぽさ

   ああ、あの頃の、はじまりは
     そんな思いも、ただになく
       ただわたくしの、ありのまま
     描いてみせた、ものでした。

 欲にまみれたミッキーの
   笑顔に群れる子供らを
     かどわかしては跳ねまわる
   黄金(こがね)をむさぼるしぐさして……

それを逃れたポターです
  はしたなくては駄目なのです
    うさぎは懸命にさとします
  ポターはうなずくことでしょう

    それならポターはポタージュの
      名前の由来ではないですか?
        いかさまそれは駄洒落して
      娯楽の国の語呂合わせ?

  それにしたってポタージュの
    とろけるみたいなこころいき
      江戸っ子ならばべらんめい
    それならポターも粋なのです

うさぎはポターにもどります
  そうしてお皿になるでしょう
    わたくしのお皿はうさぎらの
  絵柄にみちてゆくでしょう

   ただそれだけの朝食を
     お皿を見つめ思い立ち
        いてもたってもいられずに
      記して見ましたわたくしの……

  (妄想みたいな情熱の
     欠けらのうちにもきっとわずかな……)

   あるいはポターの真実を
      あるいはうさぎのまごころを
     わたしひとりは知っている
       それならそれでいいじゃない

  それからわたしはうさぎらの
    ポターの寄り添う友となり
   春野のもぐらとたわむれて
     いっしょにぴょんぴょん跳ねるでしょう。

子供だまし

子供だましにあいました
  子供だましは笑います
    俺くらい子どものたましいを
  奏でたものはいないのだ

子供だましは笛を吹く
  ねずみの歩みむらむらと
    子どもはつられてゆきました
  ハーメルンの行列です

    子どもの夢はねずみより
      いつしかものへといたるでしょう
        ほほえむ毛皮を身にまとい
      無邪気に語りかけるから

子供だましはひたむきに
  子供のたましいゆさぶります
    愛やら正義や滑稽の
  しぐさをまとったヒーローです

    釣られる子供は懸命に
      しもべとなって追いました
        おしゃべりねずみの背後には
      黄金(こがね)をあさるよだれさえ

  隠れていました笛の音に
    ごまかされては坊やらの
      アイドルみたいな慕いして
    追いかけましたハーメルン

笛に吹かれておどります
  朝から晩までおどります
    おどり疲れた夕ぐれに
  夢みるものは笛吹きの

     みこしをかつぐねずみです
       メディアのやさしいほほえみで
         おさなごころをかどわかす
       もとはといえば子供らの

   親のさずけたまやかしです
     なぜなら彼らもおさな日の
       あこがれねずみのたましいに
     どっぷり染まって暮れかけの

 笛におどった狂騒の
   植え付けられた憧憬に
     メディアのかなたのご奉仕に
   かたちづくられたものだから……

    ねずみはいよいよはしゃぎます
      しっぽをふってはかどわかし
        おっきな耳でくすぐって
      それからグッツの吟味です

  なすすべもなく子供らは
    おしゃべりねずみのかたちして
      笛吹くピエロに寄り添って
    なま暖かくねむるでしょう

あやつられるのはねずみです
  あやつるものは笛吹きです
    ピエロの仮面におどらされ
  ねずみを追うのはみんなです

  ねずみの夢にうずもれて
    はぐるまみたいな小ねずみの
     行進しましょかハーメルン
   笛にしたがうみたまです

    子供だましに会いました
      子供だましは相棒の
        おどるねずみと笛吹いて
      それは着ぐるみのねずみなのに……

      清らなこころを子ねずみの
        あさりの夢へとすり替えて
          連れそうみたいにマーチする
        はぐるまみたいな作りかえ

    渦の中へと誘い込む
      誰もがおなじ子ねずみの
        あっぷあっぷとおぼれては
      それさえ快楽と思うのです

  それをながめる親たちの
    気づきもせずに笛吹きに
      みつぎを送るしぐさして
    今日も讃えておりました

子ねずみどもはいつの日か
  かつての親のすがたして
    笛におどったよろこびを
  自らの子に与えましょう

 あらたな黄金(こがね)のみのりです
   子供だましはにやけては
     着ぐるみマウスと踊ります
   未来はすべからく安泰です

     そうして未来のこどもらは
       ねずみを慕う渦のなか
         どっぷりメディアに消えるでしょう
       ほほえみながら消えるのです。

シロエが夢にみたものは

シロエが夢にみたものは
  終わらない記憶の連鎖です
 あるいはそれはシナプスの
   幻想みたいなものかしら

おたまじゃくしの親ならば
  幼なじみと我が子さえ
    やがては見分けもつかなくて
  あらたな卵も産むでしょう

おたまじゃくしも知らぬふり
  親のことなどはなっから
    プラトンじみた概念の
  かなた向こうへおよぐでしょう

触れあうばかりの情熱を
  抑えきれない遺伝子で
    宿したおろかなシロエです
  ネバーランドの夢ばかり……

ピーターパンとあなたとは
  すがたのたがわぬ子供です
    あなたを導くはずもない
  はしゃぎまわるがすべてです

ピーターパンは子どもです
  あなたのすがたの子どもです
    あなたがなにかをもとめても
  答えられない子どもです

シロエはそれに助けてと
  お願いするのは子どもです
    連れて行ってと言われても
  ピーターパンも子どもです

報われないとか叶うとか
  そんなことなど知りもせず
    走りつづけた毎日の
  そのことだけがいのちなら

ピーターパンも生きたのです
  そうしてシロエも生きたのです
    それを笑ったたくさんの
  まがいものした蟻たちは……

よくよくみればミナリウム
  ショート回路の火花して
    人口無能のおしゃべりと
  レディーメイドのお人形

夜空の星はどちらにも
  ひとしくまたたくばかりです
    お空に思いはありません
  こころという名の落書きは……

シロエのなかにあるのです
  ピーターパンにあるのです
    ネバーランドにあこがれる
  おろかな希望にこもるのです

    それならわたしも叫びましょう
      おたまじゃくしやありんこの
        押しくらまんじゅうのにぎやかさ
      こころのなかは空っぽの……

  レディーメイドは恐くって
    ただ助けてと叫ぶのです
      くるしく震えるそれだけが
    いのちのあかしと泣くのです

ただそれだけがほんとうの
  なくしたくない砂の粒
    ネバーランドのかなたから
  流れついて来たものだから

いつしかあなた

いつしかあなた
  訊ねたいことがありました
 それはいろいろなかたちして
   わたしを悩ませていたけれど

いつしかあなた
  打ち明けたいことがありました
 それはさまざまなかたちして
   わたしを惑わせていたけれど

  なによりもっとまがたまの
    きらめくみたいな思いなら
   ふるえる指さき広げては
     おおぞらいっぱい羽ばたいて

いつしかあなた
  寄り添いたいと願うのです
 それは伝えられないmessage
   あきらめのない秘やかさ

  風にゆだねてさりげなく
    ささやいてみたい、メールして
   挫けてはまたちゅうちょして
     触れるまもなくすり抜けて……

いつものように粉雪の
  つのりゆきます恋ごころ
 さわらびみたいな情熱で
   いつしかきっとあの人へ……

  震える指さきさしのべて
    わたしのいのちを明かせたら
   ながめ暮らしたことばかり
     ノートをつらねた生き方に……

 別れを告げてなにもかも
   消えてしまっても構わないから
     いまはなんだかがむしゃらに
   あなたに向かって羽ばたきたい。

(おわりにします)

2014/01/08 掲載完了
2014/01/31 改訂
2014/06/04 推敲完了
2016/02/23 朗読掲載

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