夢の翼、あるいは二十の詩

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夢の翼、あるいは二十の詩

インデックス

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[夢の翼19]     [夢の翼20]

一. セイキロスの歌

いのちある限り
楽しくありたい
煩(わずら)うことなど
何もないように
人生は束の間で
夢は終わりを求めるもの
    (読み人知らず、紀元1世紀頃)

二. カプチーノ

残念だけど僕にはこんな
たわいもない言葉しか残せない
思いだけが波寄せては
つかみ取る前に泡へと消える
築きかけてた夢のかけらも
さらわれて形をなくす

黒塗りのっぽの椅子たちがそっと
コーヒーを揺らしながら人影をなくす
帰り支度をわすれ煙草の煙があんな
背広の窓ガラスにただよっている
町あかりのぽつりぽつりには
見つめるシルエットが揺れる
誰も気づかないわずかに手を振れば
呆れた影法師だけがそっとほほ笑んだ

残念だけど僕にはこんな
たわいもない言葉しか残せない
思いだけが波寄せては
つかみ取る前に泡へと消える
築きかけてた夢のかけらも
さらわれて形をなくす

ミルクみたいなコーヒーを楽しみながら
くだり眺めればヘッドライトの群れが
瞳をうつせばほっそりとした三日月が
群青にかえす町なみを見守っている
このあたりはまぶしくて
秋の夜空の淡いまたたきなど
知りもしないで夜が更けゆくのだろう
けれども忙しなく帰り支度の人波にも
虫たちのはかない歌声ばかりは
やがて小さな合奏を奏でることだろう

あの三日月がまあくなる頃には
近くの草むらの空き地いっぱいに
虫たちのコンサートが開かれるだろう
むしり取られたススキ残りが揺れながら
町あかりにさえきっと負けないくらい
青白いひかりを天から注ぎ込むだろう
それに答えて秋風がひとしきり
枯れ野をゆらすみたいなカサカサとした音を立て
拍手を楽団たちに送ることだろう

未来をさらわれたみたいな燻りを
確かめるみたいにつぎはぎしながら
ノートの落書きはもう終わりに近づいた
仄かな気持ちがときおり溢れては
つかみ取る前にさっと泡へと消える頃
わずかに浮かんだ小さな祈りさえも
はじけて夢をなくした
   (原作「秋の歌」 2003/9/6)

三. 終着駅

あなたの思いばかりが溢れて
時が夢のようにうつろう
列車がいつまでも揺れて
プラットフォームに近づく頃には
様々の駅を眺めつくした
おぼろげな記憶だけがさ迷う
振り返れば錆びかけの路線が
長い軌跡を描いている

  季節の香りだけを残して
  景色が夢のように揺らめく
  かすかにブレーキがきしんで
  プラットフォームに近づく頃には
  希望に待ちわびた駅だとは
  知らないままの列車が止まる
  終着駅の歌声が響いたら
  小さな夢もはかなく消えた

とびらを抜ければあの頃と
変わらぬくすんだ町なみが
改札口の向こうから
つらなり始めの通りまで
列車に疲れた旅人は
ずるずる足を引きづって
人の流れに消えていく
夢の終わりに消えていく
  (元歌 2004/1/22)

四. 女王マブ(ロミオとジュリエットより)

夢の精霊束ねる夜に
 女王マブが舞い降りる
  ノミより小さい数百万の
 眠りの粉(こな)が降り注ぐ
灯りも静か星降る頃に
 ベットにそっとしのぶなら
  ラララあなたに届ける夢を
 夜(よ)が明けるまで歌いましょう

  想いのあの子に焦(こ)がれて眠る
   若者たちには恋の夢
  政治の参加を憧れ願う
   貴族たちには世辞の夢
  人を出し抜き阿漕(あこぎ)に渡る
   商人たちには金の夢
  唇さみしと恋しく笑う
   乙女たちにはキスの夢

私の招きを断る者は
 目覚めたままの幻覚を
  私の言葉を罵(ののし)る者は
 呪いの悪夢を届けよう
ラララあなたに届ける夢を
 星降る拍子(ひょうし)に合わせるように
  ラララあなたに届ける夢を
 夜が明けるまで歌いましょう
  (元歌 2006/12頃)

五. 白い原っぱ

粉雪舞い散る原っぱは白く
踏みゆく足音も分からない
石灰さらさら傘をすべって
降りますのは寂しかろう
かさなる屋根の色さえ隠して
日頃を忘れた辺りいちめん
白粉(おしろい)うすく塗りまして
見上げる雲まで変わるまい
ため息するほど清められ
大気をふっと吐きだせば
憧れ浮かべた煙(けむ)が立ち
白くふくらむもやのよう
まるで心が軽やかの
綿菓子となってふくらんだ

この原っぱのまわりには
いろんな色彩がありまして
この原っぱのまわりには
いろんな思い出がありまして
ひとりぼっちの雪あかり
こころの中の壁紙に
走馬燈(そうまとう)みたいに浮かびゆく

さようなら、小さな僕の家(いえ)
さようなら、走り回ったこんな原っぱ
いま、万感の思いを胸にいだき
いま、新しい夢を心に秘め
僕はふる里を後にする

粉雪舞い散る原っぱは白く
踏みゆく足音も分からない
でも一歩ずつ確かめながら
今はひたむきに歩いてゆこう
  (元歌 2007/4/2)

六. 幸せの青い鳥

  幸せの青い鳥よ
  優しい夢を運んでおくれ
  幸せの花咲く丘にまで
  わたしを遠く運んでおくれ

朽ち果てた大地のまわりには
優しい花たちが寄り添って
陰(かげ)ろう太陽に望みたくして
痩せたその葉を懸命に広げ
ひたむきに光をもらいながら
冷たい風に震えながら
互いの心を温めあって
幸せを探しておりました

 友たちと手をたずさえながら
 夢見る今こそが幸せだとは
 気づきもせずに明日(あす)を願って
 暖かい朝を待ちわびておりました

朽ち果てた大地に群がって
快楽の花が咲き乱れました
養分のない娯楽を餌として
見る見るうちに肥えました
雨に恵まれ祈りを忘れ
風を遠ざけ感謝を棄てて
互いの姿を罵り合いながら
大地を奪ってゆきました

 手をたずさえた友たちと
 語り合うべき仲間は消えて
 新しい住人に媚びを売っては
 娯楽と快楽に溺れ始めました

  幸せの青い鳥よ
  優しい夢を運んでおくれ
  幸せの花咲く丘にまで
  わたしを遠く運んでおくれ

呪われた大地を太陽が見捨てると
優しい花の最後のひとかたまりも
次々に大地に崩れ落ちました
快楽の花がいっせいに
笑いあっては手を叩きました
精神的な愛情だとか
真面目とか懸命とかいう言葉が
彼らにはどうしても許せなかったからです

 思いやりや優しさを説く
 奴らの夢を燃やしてしまえ
 他人を愛せなどと説く
 奴らの息の根を閉ざしてしまえ

朽ち果てた大地のまわりには
優しい花たちが力尽き
こころを震わせ茎を折られて
罵りに胸が張り裂けそうになりながら
また一本崩れ落ちてゆきました

泣きながら名前を呼んでみますと
もう誰の答えも返ってこないのです
懐かしい友たちのささやきが
もうどこにも響かないのです
優しい花たちは消えてしまいました
そうしてたった一本の花が残されました
もう風にさえ折られそうになりながら
閉ざされた空に向かって歌うのでした

  幸せの青い鳥よ
  叶えるべき夢はみんな消えてしまいました
  あなたを願う優しい花たちを
  どうして見捨ててしまわれたのです
  あなたを思う優しい花たちを
  どうしてお助け下さらなかったのです

 それは本当に美しく
 それは本当に悲しい
 夕暮れの溜息のような歌でした
 でももう花は萎れかけて
 でももう茎は折れかけて
 最後の力で祈りつづけるのでした

快楽の花たちは見逃しませんでした
美味しそうな餌を見逃しませんでした
さっそくスケッチに写し取って眺めだしました
自分たちの緑葉を色とりどりに塗りたくって
穏やかな花の色を蔑ろにするような
不気味な香りづけを楽しみながら
鏡に映ったおのれの姿にはほれぼれ致し
寒そうに震えるスケッチの花を眺めながら
肥満気味に栄養を吸収して笑っておりました

やがて花の歌がふっと途絶えて
どさりと大地に崩れ落ちたときなどは
喚起に咽(むせ)んでいつわりの涙をさえ
かりそめにたれ流して見せたのです

 なんて可哀想なんでしょう
 なんて可哀想なんでしょう
 スケッチを眺めながらささやき合いました
 それから大勢で集まって
 あの花のいのちを糧として
 その日いち日の退屈を紛らわそうと
 あれやこれやとうわさ話に
 日もすがら興じておりました

守るべき花が死んだなら
僕らはどうすればいいだろう
花を惜しんで歌い始めれば
あなた方は寄りどり群がって
新しい生贄を写し取ろうとして
宴の準備をでも始めるのだろうか
けれども遠く広がる大地のかなたに
震える誰かがたった一人きり

  幸せの青い鳥よ
  優しい夢を運んでおくれ
  幸せの花咲く丘にまで
  わたしを遠く運んでおくれ

震える声をして歌っているならば
僕らはあの優しい花のかわりに
震える手と手をたずさえながら
あの幸せの青い鳥を見つけて
幸せの花咲く丘にまで
辿り着く希望だけはどんなに辛くても
暖めてゆかなければならないのです
  (元歌 2007/12/09)

七. 機械整備工のおじいさん

機械整備工のおじいさんの所には
毎日毎日古くなった機械たちが
疲れ果てた部品を錆びつかせて
呻くように担ぎ込まれるのでした
軋んだ歯車は悲鳴をあげて
固まったモーターはぎしぎし揺れて
我慢できない痛みをこらえて
泣きながら働かされ続けた
その苦しみを訴えるのでした
おじいさんは来る日も来る日も
優しく研き直して油を差して
ある時ははんだを使って
ある時はねじを廻して
つらい体の痛みを辛うじて
取り除いてあげるのでした

でも本当はもう部品全体が
すっかり疲れ果てているのですから
いっそ休ませてやりたい気もするのですが
その機械から仕事を奪ったらきっと
後は解体されるばかりですから
おじいさんはきっと送り返して
もう少しのあいだだけ頑張って
ぎしぎしと働いてもらうのでした

おじいさんにも若い頃があって
おじいさんには夢がありました
青年の情熱をひたむきにして
年老いた機械たちを引き取っては
懸命にその体をいたわりながら
優しくリハビリをおこなって
持ち主のもとに送り返しました
時には努力にもかかわらず
機械は死んでしまうこともありました
時には何年も前の友人が
再び転がり込むこともありました
おじいさんのところに来る人は
それはもう商売のことですから
当然の顔をして修理を依頼するのですが
なかには感謝の気持ちを込めて
年賀状をくれる人もいたのです
そうやっておじいさんは長い間
日本が戦争に負けて立ち上がって
いつしか豊かな復興を手に入れるまで
ひたむきに機械を送り返しながら
長い歳月を歩いてきたのです

そしていつしか体もきしみ
機械に触れる手も醜くしわくちゃで
足もずきずきと痛んで瞳(ひとみ)も辛く
体じゅうがぎしぎしと疲れ果ててしまい
あの壊れかけの機械たちみたいに
病院で必死にリハビリをしながら
それでもまだ工具を握りしめて
整備を続けているのでした

自分の直してきた機械たちの
自由に動けない惨めさと
錆びてはすり切れそうな間接のきしみが
ずきずきと痛むひじの苦しみが
ようやく分かったような気がするのですが
もしここで手を休めてしまったら
もう自分の歩みの向こうには
この鼓動を止める静かなスイッチが
静かに控えていることを考えれば
今はまだ誰かのために少しだけ
震える指先に工具を握りしめて
今日も送り込まれる老いた友達を
せっせと直し続けようと思うのでした

P.S.
ただそれだけが私たちの夢の正体で
他には何一つないのですから
何かせっせと命果てるまで
繰り返すことの出来るような手に職を
掴まえられたらいいのだけれども
  (元歌 2008/01/07)

八. ブレンド珈琲

人気(ひとけ)の絶えた夕暮れの町なみを
しずくは静かにしたたるでしょう
まばゆく街灯を映しかえす路面を
傘もささずに自転車が過ぎてゆく

変わりゆく信号のまたたきが
ガラスしずくに濁って煌めけば
僕は幼い頃に膝もとから眺めた
おとぎ話じみた雨ふりの夕ぐれの
宝石のようなイルミネーションを思い出す

町明かりがあんなにもきらきらと
夢が溢れるようにはずんでいた頃の
幸せと今の寂しさをブレンドして
コーヒーのようにかき混ぜたら
砂糖とミルクの柔らかさまでも
苦くなって消えゆくだろうか

信号が点滅したり黄色を跨いで
音もなく赤に染まるみたいに
青葉もいつしか夕焼けに色づいて
秋風に吹かれて舞い散るものならば

もう二度と蒼には戻れない
歩み続ける私たちにとって
魂だけが研かれもせずに
不似合いの歪(いびつ)さのまま
ほほ笑みと快楽だけを求めながら
歩き続ける私たちにとって
瑞々しさを損ない始めた
くすんだスプーンをそっと
くるくる回す寂しさだけが
積もるばかりのこの夕暮れにとって

煩うような窓をつたって
涙みたいにしずくがこぼれ落ちて
コーヒーの香りが淋しいくらいに
ほのかに舞い上がるのです
  (元歌 2008/04/12)

九. 幻想交響曲

原作、エクトール・ベルリオーズ

初めて僕を理解してくれる人
あの子のほほ笑みを見初(みそ)めてから
野原に逃れようと町角を曲がろうと
彼女の姿ばかりがこころを時めかせ
暗闇に怯えるたましいが震えるのだった
小さなこの部屋にうずくまりながら
憧れのあなたの唇だけを願って
せめて一夜(ひとよ)のまどろみでもいい
あなたを抱き寄せて眠りたいと
羽ばたく妄想の翼にまかせて
あなたの姿をもてあそんでいた
真っ暗な闇を彼女が包んでくれるなら
恐れもせずに抱きしめてくれるなら
そんな甘い誘惑に満たされて
歪みかけのこころを慰めるとき
初めての幸せの予感におののいて
妄想を夢から解き放とうとして
真っ赤なワインを震わせながら
孤独の歓喜に酔いしれていた

あの人だけは震えるたましいを
きっと受けとめてくれるのだ
あの人だけはこころの傷を
優しくなだめてくれるのだ
想いが春先の花みたいにして
ぱっと咲き乱れるような錯覚が
暖められた茨(いばら)みたいにして刺さるとき
僕は窓辺にそっと囁いてみた
あなたが好きです
あなただけを愛しています
あなたがいてくれたなら
どんなことだってしてみせる
あの大空をだってきっと
羽ばたいて希望を夢みて
穏やかな家庭を築いて
一生を送ってみせるのだ
溢れるなみだは空へと昇って
星となって流れるだろう

あなたが腕に飛び込んでくれて
悲しみを紛らわせてくれるなら
か細い肩を温めるみたいにして
果てしなくい抱きとめるだろう
あなたの瞳が急に輝きを増して
ふたりは口づけを交わすだろう
天使が舞い降りたような静けさ
そうして僕らは服を脱ぎ捨てて
まどろむ温もりのまま眠りたい
けれどもそれは儚いまぼろしで
次第に酔いに負かされるように
うつろな瞳で床に伏したときの
味気ない夢から覚めるのだった

崩れかけの想いが軋むような発作
眠れない夜に繰り返されるならば
夢は現実と混じり合って灰色の
粘土質の景観を生みだすだろう
溢れかえる無形(むぎょう)の生き物が
幻聴みたいな狂乱をけたたましく
合唱となって頭にこだまするとき
沢山の腕が床からまさぐりだして
心臓をじかに弄ぶような感覚
あまりのおぞましさにこころは干上がり
生きたまま棺桶に閉ざされて
墓場に埋められたように苦しんだ

幸せは発作によってうちのめされた
奴らの腕を振りほどいて逃げ出した
両手と両足はピエロみたいになって
違った影をしながら僕を追い立てた
靴音が時間軸をさかのぼるみたいに
町びとの嘲笑に追い立てられながら
夕暮れに戻りゆく石橋を渡りきって
入日さすあの草原へ辿り着いたのだ
恐怖を拭い去るような風はさやかに
触れられたこころの感触を遠ざけた
鳥たちの歌声がありきたりの風景を
ぼくに思い出させてくれるのだった

遠くには仕事がえりの牧人どもが
いまでも夢と戯れる角笛みたいに
羊飼いの調べを風にこだまさせた
墓地の幻想を振りはらうみたいに
僕をそっと宥めてくれるのだった
悪魔の影をこころから追い払って
両手と両足を草原に投げ出すとき
仰向けの雲はどこまで去るだろう
夕暮れの空へと口笛は昇るだろう
いつしか雲さえあの子の姿をして
はるかはるかへと流れ去るならば
羊飼いの角笛は役目などわすれて
あの子への祈りの際を奏でるのだ
僕はまた口づけを交わす夢のなか
うとうととまどろんでいるばかり
けれども微かな遠雷がとどろいて
嵐の予感となって僕を起こすとき
羊飼いたちの角笛はもうとぎれて
懸想の予感は裏切られるのだった

僕は毎日彼女を探し回った
姿さえ見れば心が満たされた
拳銃はいつもポケットに入っていた
もはや生きるか死ぬかの問題だった
貴婦人たちの華やぐ季節
貴族たちの集う社交会場に
ワルツの響きがこだまする
僕はついにあなたの手を取って
舞踏を奏でる瞬間を得たのだった
歪んだたましいを必死に隠しながら
青年の振る舞いで彼女を誘ったとき
あなたは何の気なしに手を握りかえし
僕の鼓動は張り裂けそうに高まった

触れ合う指先から暖かい
あなたの優しさが伝わってくる
こころは崩れ落ちそうなくらい
愛しさばかりが降りつのって
こころを白く変えていくようにさえ思われた
ワルツのリズムがだんだん高まって
こころに巣くった虫は息をひそめるのだった
交響楽団の甘い旋律がひとしきり
二人の時間をそっと奏でるように
幸せの予感におののく一刹那を
歓喜と共に迎えていたのだった

この人だけはきっと分かってくれる
僕の震えるこころを貶すこともなく
暖かい愛情で包んでくれるのだ
母に刺された傷跡が痛んだ
恐くなって握りしめたその指を
助けて欲しいと握りしめた手の平を
気づきもせずに彼女は踊っている
僕はもう耐えられなくなって
いきなり彼女を抱き寄せた
あなただけがすべてであり
あなただけが生きる目的だった

いきなり遠くへ突き放された
怯えるような瞳が僕を咎めている
母の憎しみが不意に溢れかえった
彼女はいきなり走り出したのである
いつもの男の胸もとに飛び込むと
彼女の腕がまっすぐ指さした
つかの間ひきつっていた男の顔が
急に呆れたみたいになって笑い出した
それから彼女の口もとがほころんだ
僕の姿を指さしながら……

右手で拳銃を確かめると
冷たい感触が不気味だった
y構えようと思った瞬間
彼女の血潮がこころに飛び散った
指先が震えてならなかった
もうしどろもどろのもつれ足で
僕は会場から走り出したのだった
拳銃はやはり恐ろしい
自分にも他人にも恐ろしい
僕は部屋に戻るなり隠しておいた
小瓶の薬を飲み干したのであった

砕けかけた精神がさらわれる発作を
いくつ噛みしめたあかつきには
夢はどす黒い憎しみで満たされて
積怨(せきえん)の波を返すことだろう
地中の虫どもが息を吹き返す
小さな鬼どもが集まってくる
千本の腕が心臓をまさぐっている
血潮がずるずると床を這い回る
悪魔どもの狂乱のカーニバルが
僕のたましいを贄(にえ)として
奪い去ろうとしてはしゃぎ出すのだった
あまりのおぞましさに声は干上がって
括り付けられたようにもがき苦しんだ

異端審問官の黒装束が両肩をつかみ
引きずるように魔女裁判に連行する
大地は轟くように鐘の音(ね)を響かせて
奇妙な鎌を携えた角の生き物たちが
一斉に鎮魂歌(ちんこんか)を奏で始めた
僕は両手と両足を四方にしばられて
逆さギロチンの処刑台に突き出される
審問官が有罪の判決をラッパで告げ
周囲の聴衆が一斉に金切り声をあげた
僕は悪の英雄に仕立て上げられ
悪魔も観衆も執行の大合唱を
行進曲のリズムで奏でるのだった
また歓声が高く響いたとき
魔女に身をやつした黒ずくめの彼女が
厳かな足並みで入場を果たすのだった

あなたが見下ろして笑っている
尖った銀の刃(やいば)が光っている
それは雲間から差し込んだ太陽の
スポットライトの不気味さだった
僕は狂ったような雄叫びを上げる
群衆は狂乱の歓声をもって答える
地獄のラッパがけたたましく
首切りのファンファーレを奏でだす
魔女の両手が振り上げられ
斧は頭上にかかげられた
にやりとほほ笑んで振り下ろしたとき
瞳がまるで実験室の学者みたいに
冷徹なまなざしでこちらを眺めていた
ギロチンのシャーッという音がする
蛇の迫りくるような音がする
ギロチンのシャーッという音がする
見ひらいた瞳が刃を睨み返す
ギロチンのシャーッという音がする
それから金切音(かなきりおん)がして
僕は恐怖を噛みしめながら
あなたの歓喜する叫び声を
切り裂く音と共に聞いたんだ
視界がぐるりと回って
ごろりと大地から眺めたとき
僕の胴体は血潮を噴き出して
彼女に踏み付けにされていた
母が突き刺したときの
紛れもないあの表情で
彼女は勝利を宣言した
瞳を見ひらいたままたしかに僕は
死を前にこころを砕かれていた
ぐしゃりという鈍い響きと共に
もはや地獄の住人となったのだ

砕け散ったこころが組み合わされる呪い
ギロチンの上で繰り返されるならば
狂乱は狂騒と手を取り合って
僕を迎える鎮魂歌(レクイエム)を奏でるだろう
斬られた首はふたたび結合されて
ギロチンの上に括り付けられている
泥まみれの血潮がずるずる這いのぼって
口をつたって僕へと戻ってくる
おぞましい感覚が全身を駆け巡る
こころを素手で触られたような恐怖
あなたが母の顔で笑っている
あなたが斧を振りかざし
あなたが斧を振り下ろす
ギロチンのシャーッという音がする
見ひらいた瞳が刃を睨み返す
ギロチンのシャーッという音がする
それから金切音(かなきりおん)がして
僕の首はごろりと転げ落ちる
あなたが母の顔で笑っている
あなたが台の上からおりる
あなたはまた首を拾ってくる
僕はいっそ殺してくれと懇願する
けたたましい歓声が響きわたる
虫たちが一斉に合唱を奏でる
僕はまた首を縫い合わされる
まぶたを決して閉ざさないように
誰かがその瞳を押さえつけた
血潮もしたたるギロチンが
またシャーッという音を立てた
金管楽器がいっせいに鳴り響き
観客どもがいっせいに歓喜した

絶望とは刹那の恐怖ではなかった
その狂乱が未来永劫に果てしなく
執拗に繰り返されながら
死ぬことすら許されない恐怖に
僕は生きたまま埋葬されるのだ
カーニバルに添える生贄として
  (元歌 2008/07/26)

十. 小春日和

にゃんこの眠りはどんな色
 毛玉をまわしているのでしょう
  あるいは魚の夢ばかり
   捕らえてはしゃいでいるでしょう

隣のお犬も昼下がり
 両手に乗っけた鼻の先
  止まったとんぼを知りもせず
   丸くなってはおりました

床の上さえ日だまりの
 風もないような陽気には
  うとうとまどろむ文庫本
   ページひとつに止まってた

遠くにバイクの排気音
 郵便配達しながらも
  眠くなるようなおやつ時
   なにをポストに贈り物

夢見て笑えば幾とせを
 繰り返すうちに僕たちの
  浮き世を息つく若草も
   色をかえしてゆくのでしょう

あのころ庭には二羽の鳥
 花梨(かりん)の花さく枝のうえ
  瞳を閉ざして寄り添って
   愛を語っておりました

風の薫りを柿若葉
 哀しさ知らずの夢ばかり
  ゆら揺れながらに青空を
   染め返すような緑です

梅雨をたたえて雨だれも
 初夏をいろどる提灯も
  お盆をなげいた風鈴も
   それぞれ夢のひとさかり

今またようやく秋空も
 高く高くと突き抜けて
  伸びゆくばかりのあの頃も
   ちょっぴり遠くなったけど

小春日和の長閑さと
 日だまり僕らの穏やかな
  陰りの頃の夢ひとつ
   雲はながれてゆきましょう

十一. あなたの夢を叶えましょう

あなたの夢はなんですか
 あなたの夢を叶えましょう
  そんな言葉をいつまでも
 叫んでいるのは誰ですか

 原稿用紙の一杯に
  夢を描けと脅します
   年のあらたの抱負にも
  夢を描けと脅します

幾つになっても夢だけは
 諦めないこそいのちです
  そんな不気味なことばかり
 述べ立てるのは誰ですか

 子供のあふれる夢の頃を
  保って生きろと脅します
   けれども子供の夢なんて
  嘘っぱち(or しゃぼんだま)ではないですか

  僕らの幸せのほんとうは
   夢になんかはないのです
    その日その日の喜びの
   連なりのなかにあるのです

夢をなくしたカナリアは
 お山の奥へと捨てましょか
  いえいえそれはなりません
 夢をなくしたカナリアは

 きわめてあたりきのカナリアで
  きわめて普通のカナリアで
   なんの捨てるにも及びません
  ただただ鳴いておればよい

  そうして毎日毎日を
   鳴いては餌を啄んで
    ほほ笑むばかりが生き方と
   思ってなにが悪いのです

あなたの夢はなんですか
 あなたの夢を叶えましょう
  そんな言葉の持ち主を
 どうか殴ってくださいな

 そうしてのびのび歩きましょう
  僕らのいのちは夢を叶える
   ためにあるのではありません
  僕らのいのちは毎日の

  喜びのためにあるのです
   夢を追うなら追えばいい
    それはその人の喜びです
   僕の喜びではありません

 僕らのいのちは自由です
  夢を描かせてはなりません
   勝手に描いたものだけが
  勝手に羽ばたいたらよいのです

それをまるで行進の
 統制みたいに脅すから
  みんな疲れてしまうのです
 みんなやつれてしまうのです

 僕らは自由に歩きだす
  行進なんかは必要ない
   気ままに歩いて行けばよい
  疲れたならばその場にて

 お弁当を開いたってよいのです
そうして、お茶でも飲んだらよいのです

十二. ほどけた夢

ほどけた糸の悲しみを
気づかぬままの影法師
肩を組んでもあの頃の
ときめき心は帰らない

ほどけた夢の悲しみを
気づかぬままの日暮時
握るなかゆび冷たくて
僕らに別れの季節です

二人毛布にくるまって
夢の中でもはち合わせ
嬉しいままの朝が来て
頬笑みあったあの頃の

面影すらも浮かばない
二人は遠くの夢ばかり
白々しくもくちづけを
最後に一つするのです

ほどけた夢の悲しみは
二人の涙に溶かされて
長い月日をうしなった
憧れみたいに溢れてた

さよならきみの面影を
さよならぼくの面影を
ほどけた指の悲しみと
もう戻れない季節です

ほどけた夢の悲しみと
もう戻れない季節です

十三. 夢で逢えたら

夢で逢えませんか
ねえ、あなたはきっと
夢のなかではまだ幼くて
僕はそれこそ伸び盛り

あの頃みたいに土筆(つくし)とか
摘んではお皿に盛りつけた
ふたりの姿でもう一度
屈託もなく遊びたい

いろんなしがらみが出来まして
深刻がってる毎日のうちに
僕らの生活はすっかり味気ないものに

置き換えられたのはいつの日か
だってあの頃はまるで屈託なんか
ふたりにはなかったものでした

もいちど夢で逢えませんか
もいちど、一緒に遊びませんか
それは朝から喜びに満ちた
新しい発見の連続であり

桜に登ってはピンクに包まれて
まどろんだことさえありました
川に入ってはザリガニばかり
探したことさえありました

けれどもあなたはハサミが恐いから
岸から見守っていましたっけ
けれども蛍は嬉しいものですから
あなたから誘ってくれましたっけ

僕らはいつしかそれすら忘れて
あなたは今もうあなたの家庭を築き
僕は今もう自分の家族を築き

けれどもなんだか味気ないような
生真面目な毎日を歩むばかりです
何かが足りないのはなぜでしょう

ねえ、夢で逢えませんか
せめて、夢のなかでふたりして
もう一度あの頃のままで
慣れ親しんだあの木の下に

くだらないおしゃべりもしてみたい
朝から晩まで遊びつづけたい
そうして僕らもしかしたら

夢のなかでならあの頃の
僕らのままで木の下で
愛していますの告白を
夢のなかでなら口づけを

あなたと二人で歩み続けるような
道さえあるいはあったのでしょうか
今でもときおりあなたの姿だけが

僕のこころをそっと吹き抜けるのです
そうして、夢のなかには今でもきっと
あなたへの想いがひそんでいるのです

もう、遅すぎるのでしょうね
今は、もう秋も終わりです

十四. あたいの歌

   あたいは愛を信じない
  勝手に体をまさぐって
 お金をくれたらそれでいい
あたいは愛を信じない

   あたいは夢を信じない
  人間なんて快楽を
 貪(むさぼ)りながらに朽ちるもの
あたいは夢を信じない

   あたいの胸をもんだって
  心がすり減るものじゃなし
 食事とおんなじことなのに
罪悪なんて馬鹿げてる

   空っぽなのが幸せさ
  お金もあるほが幸せさ
 若さばかりが花なのさ
ファッションだけが生きがいさ

   あたいの体は安くない
  けれども金さえくれるなら
 博愛精神のなんとやら
胸も開いてみせましょう

   あたいは神を信じない
  なのにあいつらはこの胸を
 神さまみたいに崇めるの
馬鹿な犬っころほど可愛くて

   あたいはひとりは嫌いなの
  肩さえ包んでくれればいい
 一日メールが三往復
欠かさないならそれでいい

   あたいは愛を信じない
  淋しいときは人の手よ
 勝手にあたいをまさぐって
お金をくれたらそれでいい

十五. 秋の歌

時間がどこまで広がって、
 思いがルーズに溢れてた。
情熱なんてまるでなく、
 だらだら生きてたあの頃よ。

夢見ることさえ取りとめも、
無くして笑っているうちに、
時計の針さえぐるぐると、
 日付を回っていたのです。

くすぶる思いは空の雲、
それをようやく知る頃の、
小春日和の長閑さは、
 やりきれないほど暖かく……

わずかなこころの慰めを、
あくせくしても夢なんか、
もう描けない毎日を、
 あとどれくらい過ごしたら……

かげりを見せる未来へと、
 時は流れてゆくのでしょう。
語る言葉も浮かばないくらい、
 哀しくなっては雲を追いかける。

ひとっつふたっつ幸せみっつ、
 流れてどこまで漂うだろう。
手を振るでもなく見つめていると、
 西日が少しずつ陰ってゆくのです。

ああ、あの庭の外れの一輪ばかり
 花も咲かずにもう枯れてゆくのか……

十六. 片想い

ほのかな夢で逢えたなら
 あなたはやっぱり冷たくて
  後ろ姿はきっとまた
   誰かを待っているのです

   けれどもそれは僕でない
  やりきれないほど僕でない
 せめて夢だと知ったなら
無邪気に抱いても見たけれど

せめて夢だと知ったなら
 押し倒しても見せたけど
  くちびる奪って見せたけど
   思いをとげて見せたけど

   夢のなかでもこころには
  あなたを思うため息と
 近づけないようなあきらめと
遠くに眺めるばかりです

あなたは夢にもつれなくて
 起きても話せるあてもなく
  鏡を見るたび告白の
   勇気の欠けらも挫けてた

   あなたはきっとたくましい
  腕に抱かれて眠るだろう
 ため息ばかりの僕ひとり
夢にあなたを追うだろう

いつか忘れるその日まで
  いつか忘れるその日まで

十七. ひめごと

   懐かしい日だまりの夢を見ました
    あの人のわずかに触れた髪の毛に
   温もりだけが伝わってくるのです

 すがたさえも浮かびきれない夢でした
  誰かがそっと並んでいてくれるような
 それでいて輪郭は思い描けないような

   例えばいつしかあなたはあの道を
    例えばいつしかわたしはこの道を
   歩出したのはあの日の二人でした

もうほかの誰かに抱かれた毛布のなかで
 あの人の夢を日だまりにそっと見ました
あなたもきっと他の誰かともつれながら

  ときおりはその温もりだけでもいい
   わたしもあなたの夢に密かに訪れて
  あの日だまりのなかに二人でそっと

  小さなひめごとなどしてみませんか
   未練でなくってただ懐かしいだけの
  小さなひめごとなどしてみませんか

十八. 一歩がおもいよ

一歩がおもいよ 宵の町あかり
  忙しなく行き交う 靴音に捨てられて
一匹のノラが 餌をあさってる
  あざとく見つけられ 横腹を蹴られてた

一歩がおもいよ 信号は色を変え
  足並みも揃えずに 人波があふれ出す
一匹のノラは その場にうずくまり
  もう一度蹴られては 負け犬の顔をした

泣き出しそうなほほ笑みと すがりつきそうな顔つきで
必死になってアピールする 従順なわたくしっぷりを

駆けていたあの頃の 面影も色褪せて
 宵は闇へと橋渡し 町のあかりは華やいだ
編年体みたいな スーツ姿の一群が
 忘年会にはまだ早い 儚いはしゃぎを見せていた

人の縮図を 眺めるでもなく
 屈託もなく 奴らは笑うのだ
人生とはそんなもの 一生とはそんなもの
 勝手にそう決め込んで 幸せそうに笑うのだ

無意識のへつらいと 取り入り慣れたしゃべりくち
必死になってアピールする 従順なわたくしっぷりを

一歩がおもいよ 友だちは消え失せた
  忙しなく追い立てる 人間どもに蹴飛ばされ
一匹のノラは 夢さえ忘れちまった
  どうしてこんな つまらない世の中に

一歩がおもいよ 蹴られた腹が痛いよ
  靴音を逃れながら 路地裏をとぼとぼと
一匹のノラは けれども本当は
  翼の折られた こころが痛むのだ

翌朝、首を折った ノラは車道に横たわる
人通りさえまだない頃に 奴はゴミ箱へ捨てられた

十九. 折られた翼(クロノスの秒針より)

夢とか希望とかそういうんじゃなく
ただ一つだけのことのためにすべてを
捧げることが打ち寄せる脈の
唯一の意味だって信じてたんだ

夢とか希望とかそういうんじゃなく
本当を求める魂をあざ笑って
足を引っ張り合ってヒエラルキーの
どん底に群がるような群衆が
今を生きるなんて知らなかったんだ

こんな不気味な国を作っておいて
誰ひとり作りかえようとしないのか
嘲笑のこだまばかりが
奇声のように酒場にあふれ出す

自分で耕すより楽だった
眺めて暮らすことのほうが
死ぬまで眺め続けて
命は干からびていったんだ

動物のように振る舞うことが
最新式だなんて精神が
自発的に生まれる国を
俺たちは始めて見つけたんだ

雄叫びが町じゅうにこだまする
真面目なものを排除する
意味を戦わせるでもなく
刺し殺して排除する

誰もものを言わなくなった
動物園はいつの日かきっと
世界中から封鎖されながら
滅びの季節を迎えることだろう

俺はもう誰も信じない
負け犬みたいにとぼとぼと
蹴られながらに歩っていく
こんな国に生まれちまったら
それがもう本当の生き方だって
今は信じているからだ

たぶんもうすぐ鐘の音(ね)が
俺を埋葬するだろう
墓のなかには残飯が
否応(いやおう)なくも投げ込まれ
奴らは勝利に酔いしれるだろう
夕暮れの居酒屋はひとしきり
俺のウワサで持ちきりになるだろう
嘲笑をさかなにして乾杯の
盃は高く掲げられることだろう

夢とか希望とかそういうんじゃなく
ただ一つだけのことのためにすべてを
捧げることが打ち寄せる脈の
たった一つの意味だって信じていた

夢とか希望とかそういうんじゃなく
本当を求める魂をあざ笑って
足を引っ張り合ってヒエラルキーの
どん底に群がるような蟻どもが
この世に居るなんて知らなかったんだ
道具になることが生きがいみたいな虫けらが
この世に居るなんて知らなかったんだ

二十. プリズム

ね 君 なにを 思うの
そんなこと 分かりません
夢を見ましょう 虹の向こうまで
思いはうしろから
付いてくればいいのさ
プリズムをかざしたなら
七色のひかり笑うよ

ね 君 どこへ 向かうの
そんなこと 分かりません
夢で逢えたら 虹をあなたまで
届けてみたいよな
憧れもあるのです
プリズムに託したいな
あなたへのひそかな思い

あ また 君が 笑うよ
答えなど いらないけど
手をつなぎたい 虹のかなたまで
恋はいつの間にか
大空を羽ばたいて
プリズムで解析した
この思い君へ届けよ

ね その 指を ください
つかの間を 踊りたいな
肩抱き寄せて 夜が更けるまで
打ち明けることなど
やっぱり出来ないから
吸い込まれそうな瞳
ずっとずっと眺めている

あなたが好きでたまりません
そっと打ち明けてもいいですか
頷いてくれると知っていたら
まだしも鼓動を宥められるのに

        (おわり)
          (2009/11/18-/11/30)

2009/12/04

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