ブラームス 交響曲第1番 第2楽章

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全体の構造

・[AB-C-AB-終止]の複合三部形式となる。調性はハ短調の同主長調であるハ長調に対しての三度調となる(Es dur)。

提示部(1-26)

第1主題部分(1-17)

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・第1ヴァイオリンで奏される長いメロディーラインの作り方に注目すれば、情緒の赴くままに自然に生み出されたような印象の旋律は、開始したフレーズが3-4小節目で[ドッペルドミナント下方変位]を経由して印象的な留めの状態にいたり、4小節最後から新たなフレーズが開始、さらに9小節目からも半音階上行の印象的な第3のフレーズに変わり、13小節からの終止フレーズにいたる。

・この間、例えば[1-9]小節に音価リズムを等しくする小節はひとつもない流動性が、[9-11]小節の3回繰り返される等しい音価リズムのもたらす、「フレーズの始めて留め置かれる印象」を見事に演出。終止フレーズの開始部分3小節目のフレーズを回想して締め括り、全体のプロポーションをまとめる。つまり非常に凝ったを職人芸的メロディーを、まるで自然と沸き上がったかのように仕立てみせる。2小節目に現れた付点リズムは、主題の続く部分でも活躍するが、楽曲全体に重要な動機として機能している。和声的にはドッペルがかなりの頻度で使用せられ、次の第2主題の管楽器の印象を高めるべく、管楽器はスパイス程度、もっぱら弦楽器で主題提示を行う。また6小節目からベースラインに登場する3連符の印象が、楽曲全体の終止最後の部分に印象的に回顧されるなど、単純だが見事な采配が行われるのにも注目したい。

第2主題部分(17-27)

・便宜上第2主題としたこの部分は、実際は第1主題の変位したとも取れ、その旋律はオーボエで印象的に登場する。その開始部分の印象的な音型は、明確に第1主題冒頭に由来する。第1主題に対して、伴奏を含めたリズムの安定性が高まり、穏やかな部分を形成するが、22小節目からこのオーボエ旋律に掛け合わせるように、第1主題冒頭が弦楽器に回帰する。したがって(1-27)小節目まですべてが第1主題の範疇にあり、ここで第2主題は仮初めの自立を与えられているに過ぎない。

中間部(27-66)

第1中間部分(27-38)

・2小節目の付点リズムにより分散和音が導入され、中間部分が開始。このリズムは第1中間部分に継続的に使用され、しかし後半次第に薄れて、第2中間部分のもう一つの伴奏リズムに道を譲ることになる。(ただし次のリズムは、このもとの付点リズムをシンコペーション化したものである。)

・提示部同様、弦楽器を主体とし、続く管楽器の印象的な部分に引き渡される。付点の連続の後に半音階上行形の続く第1ヴァイオリンの開始が、(8-9)小節目付近と近親的なのは、明確に由来する分けではないが、幾分意識的なものだろう。一方ここでは裏拍リズム、初めての16分音符主体のフレーズ(30小節から)などが登場し、さらに34小節から(cis moll)の短調領域へ移行するなど、発展的要素を多分に含んでもいる。

第2中間部分(38-66)

・オーボエで長い同音から16分音符が憧れのようなフレーズを奏でる時、弦楽器は、休符後のシンコペーションリズムをためらいのように伴奏する。この伴奏リズムは、第2中間部分前半で継続的に使用され、安定的な部分を形成。楽曲が中間部分のクライマックスを形成しつつ、再現部へといたる53小節から破棄される。

・調性的には、短調の(cis moll)のまま開始した第2中間部分が途中(As dur)(Des dur)と長調を回復しつつ、再度(cis moll)を経て(E dur)に到る点は注目に値する。中間部分を開始から(cis moll)とせずに、(E dur)から徐々に(cis moll)とし、また再現部にいたる前に(E dur)に回帰することによって、対比させるような楽曲構成ではなく、薄曇りの通り抜けるのに合わせて少し陰った日の光が、しばし隠れて再び姿を表すような、繊細な変化を演出しているからである。(またその言葉でかどわかす遣り口か、君は。)

・なお第2中間部分の旋律は、第3楽章開始主題を予感させるものであるし、49小節からのベースラインの半音上行後跳躍上行、という特徴的なバス進行は、第1楽章に見ることが出来るなど、他の楽章との関わり合いも心に留めておく必要がある。

再現部(66-128)

第1主題部分(66-90)

・再現の開始は今度は管楽器によって行われ、弦楽器が3連符のピチカートと8分音符のなだらかなフレーズで魅惑の瞬間???を演出。他に特に記す点として、71小節目からのやはり弦楽器の16分音符のピチカート分散和音の印象や、主題の終止部分が弦楽器でなされた後、さらにもう一度回想されるところなどがある。

第2主題部分(90-114)

・楽曲全体のクライマックスを築く第2主題部分の主旋律は、第1ヴァイオリン、オーボエ、ホルンで行われ、チェロ伴奏に3連符のピチカート音型を加えるなど、提示部に対して十全な発展を遂げ、しばし推移の後、もう一度ホルンによって100小節から回想される。これに合わせて第1ヴァイオリンが音価の細かいフレーズで駆け上る印象は見事だ。最後に第1主題部分が回想されるが、これも提示部に対して拡大している。全体として、提示部では仮初めの独立を与えられていた、第2主題部分は、ここにいたり第1主題に対比すべき印象を、聴覚上築くことになる。それゆえにこそ、提示部の第2主題は、やはり第2主題とすべきなのである。

終止部分(114-128)

・中間部を開始した分散和音による付点のリズムが終止を告げると、楽曲事象を弱めつつ、その最後にいたりピチカートの分散和音上行形が3連符で印象的に高音へと舞い上がり終止する。こうして全体としては
[二部形式のAー中間部BーA再現(-終止)]
という複合三部形式となっている。

2008/11/28

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