交響曲第41番ハ長調、第1楽章

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提示部(1-120)

第1主題提示部分(1-55)

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・23小節の半終止によるフェルマータまでが第1主題(1-23)を形成するが、最重要素材は冒頭4小節であり、その開始2小節は強拍部分でC音を3回、「ドンドンドン」とティンパニも動員した総奏によって、勇み立った開始の合図を鳴らす。これによって同音連打的、リズム的な冒頭動機が提示されるが、同時に強拍のC音に対して、下の(g)音から順次上行し滑り込む滑走の3音が早い3連符により組み込まれ、これがあることによってこの部分は、リズムだけではない「ドソドソ」の分散和音の要素と、旋律的な要素を織り込んで、楽曲の開始と第1主題の開始を同時に告げてる、冒頭動機の役割を果たしている。この冒頭2小節の(C-G)の分散和音的傾向の大枠と、休符による断続的なリズム性に対して、これに続く2小節は弦楽器だけで提示され、連続的で順次進行的な滑らかなフレーズで形成、強弱においても冒頭2小節のフォルテと、続く3、4小節のピアノが対置される。開始の冒頭動機がユニゾンという最も単純な1つの線で登場するのに対して、この部分ではメロディーラインに対してバスが(d-c-h)と順次下行し、非常に簡単な和声課題のようなシンプルさで、初めの単旋律に対して、和声が導入され、この点でも対照をなしている。この対比される2つの部分の要素が第1楽章全体を生成していくのが、このソナータ・アレグロなのである。
・この4小節が、(C)の5度上(G)を起点にして繰り返され、この合わせて8小節の間、冒頭のリズム的で総奏的なエネルギーが、ピアノの旋律フレーズ優しくなだめられては、再び燃え上がり、燃え上がってはなだめられる感じだったが、この波がかえって冒頭動機のエネルギーに溜(ため)を作る効果をもたらし、ついに9小節目から冒頭動機的傾向を持つ力強い祝祭的ファンファーレの楽句に発展。同音連打的、リズム的、和音的な総奏フォルテの中にあって、弦楽器が冒頭動機部分に対比させられるような、早い32分音符の音階順次下行パッセージを織り込み、16分音符3連符の上行音階パッセージだった冒頭動機部分に応答している。この部分はそのまま拡大され、そのまま滑走パッセージのない和声的リズム的主題終止に発展して、クライマックスに盛り上がり詰めたところで半終止。1小節引き延ばした23小節と付け加えられたフェルマータによって、一端休止して新たな楽句を導入するような印象を与えている。
・続いて第1主題を使用した推移が開始するが、第1主題の繰り返しを行ないつつという、よくやるパターンを使用。ただしこの繰り返しは音量をピアノに下げて奏され、使用楽器も少なく、主題エピソードによる推移の様相を濃くし、その代わりこの部分には、木管楽器がオクターヴ上行してから、音階順次進行で降りてくるという対旋律と、ホルンに分散和音型の短い対旋律が織り込まれ、ホモフォニースタイルで提示された主題が、対位法的発展を遂げた姿を見ることが出来る。この対位法的エピソードは主題冒頭8小節を使用し、そのまま8小節目のフレーズをさらに繰り返しながら和声を推移しつつ(G dur)の属和音に半終止。続いて(G dur)の主音上でエピソードの冒頭が繰り返されるが、実際は(G dur)は(C dur)の属和音上に過ぎず、冒頭主題の2,3小節目を繰り返しながら(C dur)の保続属音上に至り、最後に最後に改めて(G dur)に転調し直し、第1主題の9小節目以降の後半部分を使用して第1主題提示部を締め括る。つまり、第1主題の推移部分は、完全に第1主題の前半と後半から成り立っているが、同時に対位法的発展により大きな発展を遂げた印象を与える訳だ。

第2主題提示部分(56-100)

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・第2主題は(56-79)まで連続的に旋律が派生していくような開かれた形式(歌謡的主題のようにフレーズが閉ざされていない形式)で作曲。次々に広がっていくようなこの楽曲の性格を担(かつ)いでいる。主題の一貫性は常に第2ヴァイオリンが受け持つ分散和音型の8分音符伴奏と、常に主題旋律を受け持っている第1ヴァイオリンに見ることが出来る。主題第1の部分は半音階上行2小節の後で分散和音型を開始するフレーズが、その後階段を下りるような2度上行を交えた階段型下行音型で締め括って、属和音に至ったところで半音階上行の繋ぎを演出するという6小節が単位になっている。これが第1主題と対比的に作成されていることは簡単に分かるが、特に第1主題冒頭2小節のリズム的・分散和音的・同音連打的傾向に対して、主題開始が半音階上行の旋律型になっている点や、第1主題の続く部分が上行指向であるのに対して、第2主題は下行指向であること。そして第1主題3、4小節が階段を上るような2度下行を挟む上行であるのに対して、第2主題の下行部分は第1主題部分の音価を1/2にした階段下行型であること。さらに第1主題が総奏的なのに対して、第2主題が順次導入的であることなど、軽く見ただけでも非常に多くのことが云えるから、楽曲解析の文章を作るのも楽なくらいだ。もちろん主要主題小節数そのもの、第1主題の8小節に対して第2主題の6小節もあげられる。この第2主題冒頭6小節が、フルート、ファゴットを主題旋律に加えもう一度繰り返され、続く(68-71)の短い中間的推移フレーズは冒頭6小節の最後の階段下行型のリズムから生み出され、その後の主題を締め括る新しいパッセージ部分は、丁度第1主題後半の総奏的部分に対応していて、性格は大きく異なるにもかかわらず、第1主題で登場した早い音階パッセージのフレーズと、同音連打リズム的傾向を見て取ることが出来るだろう。しかもこの第2主題最後は、まだ次のフレーズが紡ぎ出されそうなところでゲネラルパウゼで不意を打った総休止で時間を止め、続く推移部分の登場のためのドラマを演出している。さらにこの第2主題後半部分には、ベースラインに第1主題の階段上行型(3-4小節目)のフレーズが、第2主題フレーズの途切れ目に合いの手のように加わり、その設計プランは非常にきめ細かく、それが音楽として訴えてくるから見事だ。
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・第1主題が総奏で締め括った後に、少数声部の第1主題に基づく推移に移行したのとは対照的に、管弦総奏的で和音的で同音連打的、リズム的の力強い部分が、ここだけ短調に移行して導入され、一瞬轟音とどろくような雷と嵐の部分を演出。果たしてジュピター、つまり大神ゼウスの雷鳴とどろく登場の演出の意味あいから、この交響曲は「ジュピター」と愛称されているのではなかったか、すると楽曲を告げる力強い冒頭リズムとこの部分が呼応して、雷帝の笑いと怒りを表わしているのでは無いか、そんな妄想さえ頭をよぎるくらいだ。この部分は急な夕立のように、すぐに晴れ渡り長調に復帰すると、同時に分散和音上行型で大きく跳躍し、88小節でフレーズ終止する。しかしこの短調部分のヴァイオリン、フルートの線などを見て貰えば、これが第2主題冒頭半音階上行から来ていることが分かるだろう。その後(G dur)の保続主音上で、先ほど第2主題ではベースの応答に沈んでいた第1主題冒頭3、4小節目の階段上行型がメインに躍り出て、93小節でカデンツを踏むと、今度はヴァイオリンに裏拍リズムを加えて、事象を豊かに拡大しクライマックスを形成しながら99小節で属7和音に至り、ヴァイオリンが自由カデンツ風に分散和音下行パッセージを奏すると、再び100小節で全楽器が鳴り止み音楽の流れを引き留める。

提示部終止部分(101-120)

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・再び新しい主題が導入され、第1主題、第2主題と対等な終止主題を形成する。この楽章では特に終止主題の自立性が前の2つの主題に匹敵するため、第3主題部分と命名しても差し支えないくらいだが、それでも同時に終止の役割を全うしていることは事実だから、何時ものように終止主題と呼ぶことにしよう。主題は弦楽器で導入され、次第に管楽器を導入しつつ、低音が分散和音伴奏を加える上で、110小節まで継続し終止部分前半を担う。すると続いて終止部の後半部分は旋律的な終止主題に対して、リズム的な総奏が提示部全体のクライマックスを形成し、その最後には第1主題後半の16分音符音階下行パッセージを織り込んで提示部を締め括る。

展開部(121-188)

・(Es dur)に転調した途端に、先ほどの終止主題が再現する。しばらく同じ進行を見せたと思えば、これが引き金になって動機の展開が開始。すなわち主題最後の1小節が、連続的に繰り返されながら転調を重ねる部分に至り(133-)、管の合いの手の中でヴァイオリンと、ベース&ビオラが交互にこの動機を応答し合う。同様の和声進行(あるいは類似の和声進行)を繰り返しながら転調を重ねる部分。つまり反復進行という、展開部お気に入りの遣り方だ。この反復進行の果てが(C dur)の保続5音上で長い属和音領域を形成するならば、目出度く第1主題回帰の再現部が登場するところだが、しかしそれではあまりにも率直で性急だ。ここでは153小節目から見せかけの保続音である(a moll)の保続5音上で、属和音とドッペルドミナント和音が繰り返され、フェイントを掛け(F dur)に転調し、偽りの主題再現が行なわれる。かつて提示部推移部分が第1主題に対位旋律が加わった対位法的遣り方で行なわれたことを踏まえ、本来の調性ではない(F dur)で、推移的要素を込めた第1主題推移部分の対位法展開をここに登場させ、これはその途中から(g moll)、(a moll)と転調し短調領域に突入。ここでも対位法で登場した第1主題前半に対して、続く部分(171-)が後半のリズム的な激しい部分を形成し、3連符と16分音符の滑走音階パッセージの上行下行が繰り広げられ、展開部で一番劇的な部分が形成される。
・181小節目からようやく(C dur)の属和音とドッペルドミナントの交替に至る。不意に終止主題の後半のワンフレーズがピアノで登場し、これが繰り返しつつ再現部への回帰が図られるが、管楽器を主体に引き継がれるこの動機の扱い方とその響きは絶妙だ。そして第1主題が返ってくる。

再現部(189-313)

第1主題再現部分(189-243)C dur

・同様の進行だが推移の調性プランや、特に推移で第1主題冒頭が繰り返された後の推移部分などが変化している。

第2主題再現部分(244-288)C dur

・再現部は主調(C dur)で第2主題を行なうほか、大枠は提示部を踏襲。

再現部終止部分(289-313)(C dur)

・「踏襲することは正義である。再現部の本質は提示部が返ってくる喜びにあるからだ。」とばかりに突き進み、終止部分が自立的な第3部分の様相が濃いので、十分楽曲終止を全うできると判断するやいなや、コーダは必要とせず主和音を総奏で拡大して楽曲を終止するのだった。

2006/07/07
2006/08/03改訂

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