交響曲第41番ハ長調(K551)

モーツァルト、交響曲第41番ハ長調(K551)

概説
 C・P・E・バッハ滅亡の年である1788年。その年の6月に譜面化された、最後の三つのシンフォニーのラストを飾るのがこの曲である。恐らくモーツァルトの活動地点であるヴィーンや、あるいは1790年のドイツ旅行で演奏された可能性もあるが、明確な資料が無いために、モーツァルトは己の心のままに羽ばたいてしまったという都市伝説が生まれ、これは今日でもぬぐい切れていない。
 ハ長調の威厳ときらびやかな効果にも関わらず、対位法を駆使した終楽章など、3曲のうちでは(そして彼の交響曲の中で一番)緻密に作曲され、この曲を持って交響曲が高次の芸術的ジャンルにのし上がったのではないかと錯覚さえ覚えるほど、モーツァルトの交響曲の中でもずば抜けて手の込んだ作品になっている。
 例えば交響曲39番の第1楽章を振り返ってみよう。序奏部分から始まり、不意に登場する優しい3拍子のフレーズで、人々にああそう来るのかと思わせ、その直後から、序曲的シンフォニーで聴衆が求める疾走する快活な楽曲が登場するし、最終楽章では早いテンポ内での同一動機の繰り返しと、楽句の滑走と停止のもたらす効果など使用されている。いわば、当時、演奏会場で求められるようなシンフォニーの最上の作品を作曲したように思われてくる。
 それに対してモーツァルトは、このハ長調交響曲では、交響曲にそれ以上の役割を持たせ、本来玄人好みであるような弦楽4重奏を仕上げるような綿密さを持たせるような作品を仕立てたのである。しかし同時に、外向的で力強いシンフォニーの効果も生かしながら、技巧的に練り上げていった作品であるから、同時に一般の人々にも強く訴えつつ、後にベートーヴェンが交響曲に対した作曲態度と同じ高さまで、シンフォニーを引き上げたと思われる。

初演
……どこかで初演された可能性があるが、証拠が無いので何とも云えない。
楽器編成
……弦5部、フルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニー1対
演奏時間
ロジャー・ノリントン指揮
ザ・ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ(1990)
  第1楽章-11:10
  第2楽章-8:31
  第3楽章-5:14
  第4楽章-11:39

楽章ごとの解説

第1楽章
ソナタ・アレグロ形式
C dur、4/4拍子
Allegro vivace
第2楽章
緩徐楽章
F dur、3/4拍子
Andante cantabile
第3楽章
Menuetto
C dur、3/4
Allegretto
第4楽章
ソナタ・アレグロ形式
C dur,2/4拍子
Molto Allegro

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