交響曲第41番ハ長調、第2楽章

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概説

・ソナタ形式で書かれた緩徐楽章

提示部(1-44)

第1主題部分(1-27)

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・第1主題(1-18)は、初めの4小節で最も単純化された骨格的な旋律を、極めて薄い部分伴奏で提示し、5小節目からその骨格旋律を修飾した豊かなメロディーとして繰り返しつつ、7小節目から弦楽器の豊かな伴奏が参加するやいなや、木管楽器もヴァイオリンの主題旋律を重ねて、色彩を増す。ここで旋律は冒頭の分散和音を離れ音階順次下行型を大枠に置いた豊かなメロディーを奏でつつ10小節でカデンツを踏む。という方法で、一番最初分散和音構成音だけで単旋律で開始した旋律が、主題主要旋律(1-10)の区切りである10小節のうちに、どれほど成長していくかという、生成の極致のような作曲が興味深い。しかもこの主題は前半の分散和音と後半の順次進行という、定番の遣り方を極めて見事に表現している点も、作曲の教科書のようである。続く11小節からは第1主題を繰り返しつつ終止する役割を担っていて、主題冒頭が低声に移され、ヴァイオリンの豊かな修飾メロディーが加わり、管楽器が8分音符の伴奏を引き継ぐなど、継続的に主題を成長させながら主題を締め括る。
・続く(19-27)は第2主題への推移にあたるが、緩徐楽章のソナータ形式では、よくこの部分が自立した一つのエピソード部分を形成して、第2主題に引き渡す。ここでも前の動機の使用による推移ではなく、分散和音音階上行型を特徴とする簡単なフレーズを木管楽器に使用した短調部分を形成して、伴奏型にシンコペーションの裏拍と、冒頭が休符の3連符などによる揺らぎの効果が探求されている。

第2主題部分(28-38)

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・分散和音の単純化の極致で開始した第1主題に対して、どうも驚く、こちらは音階メロディーの単純化の極致を使用して第2主題を形成する。つまり主題旋律が「ドレミファ」と開始するのに対して、バスが「ミレドシ」と進行して、第2ヴァイオリンがⅠ-Ⅴ7-Ⅰ-Ⅴ7の分散和音伴奏を加えてしまったら、この進行は初級和声教科書の見本そのものではないか。この音階上行2小節がもう一度繰り返されるのだが、しかも第1主題が分散和音の原型を5小節目から順次進行修飾して滑らかにしたのとは反対に、第2主題の続く部分では、音階順次進行を分散和音によって修飾発展させている。続けて32小節目から、美しい半音下行に始まる16分音符の囁きが8分音符で跳躍上行すると主題後半へ移行する。さらに驚くことに、この部分全体は開始の音階上行に呼応して、階名で云えば「シb-ラ-ラb-ソ-ファ-ミ-レ-ド-シ」と半音階を交えた音階下行型から成り立っていて、これが35小節からもう一度開始の「シb」に回帰し、今度は「シb-ラ-ラb-ソ-ファ-ミ-レ-ド-シb-ラ-ソ-ファ-ミ-レ-ド」まで下降する。つまり第2主題は前半の音階上行と後半の音階下行で成り立つ単純美の極致だったのだ。

提示部終止部分(39-44)

・第1主題が分散和音から順次進行型に、第2主題が順次進行の上行下行で作曲された楽曲は、第2主題を挟んで第1主題と対称の位置にある終止主題を、順次進行から始めて分散和音型で応答する終止旋律を使用している。極めて戦略的であり感性ではなく作曲技術を感じさせるプロットだが、聞いているとそんなことはまるで感じないから職人芸とは恐ろしいものだ。
・ここではヴァイオリンが順次上行で開始して3連符で短いフレーズを終えると、次の小節はこれに答えて木管楽器が分散和音下行型と上行型の反行形で応答し、3連符で短いフレーズを終える。この2小節が一つの単位となってもう一度繰り返され、最後に第1ヴァイオリンがソロカデンツ風に単旋律を残しながら展開部に移行するのも、緩徐楽章では良くやる方法だ。ここではさらに2小節+2小節の4小節を単位にフレーズを形成していた第1主題・第2主題が、終止旋律で1小節1小節の短いフレーズの応答になっている辺りも、作曲者の明確な意志を感じさせる。

展開部

・第2主題への推移で使用されたエピソードを使用して、短調領域を次々に転調する短い部分を抜けて、再現部に返すというのがこの展開部の方針だ。ここで推移エピソードが使用されたことによって、楽曲全体の構図が
[第1主題ーエピソードー第2主題ーエピソード展開ー第1主題ーエピソードー第2主題]
という安定したプロポーションになっている。

再現部

・緩徐楽章ソナータ形式では再現された主題には美しい修飾が加えられたり変奏された発展型を見ることが出来る。これはいわばセオリーだ。ここでは第1主題において弦楽器が32分音符の豊かな修飾パッセージを主題の合間に挟みつつ進行し、以後は提示部と同様に進行し、最後に第1主題冒頭を回顧しながら終止風フレーズで曲を締め括るのであった。

2006/07/17
2006/10/27改訂

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