交響曲第41番ハ長調、第3楽章

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Menuetto(1-59)C dur

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・ベートーヴェンのメヌエットはスケルツォだとはよく言われるが、強弱の対比、旋律型とリズム型の対比、2小節をひとまとまりに短いフレーズが併置されていく傾向、さらに非舞曲的な様相など、すでにモーツァルトのこのメヌエットだって十分スケルツォ風である。第2ヴァイオリンの分散和音伴奏に乗せて、半音階で始まる順次下行型の滑らかな2小節に、スタッカートを使用しリズムを増強する伴奏楽器によって対比された2小節が続き、この4小節を最小単位としてメヌエットが形成されていく。途中9小節目から(G dur)に転調し、続く中間部分(17-27)は冒頭の順次下行型で進行しつつ(C dur)に回帰、すなわち(C dur)の保続5音上で主題の順次下行型を反行させた順次上行形を使用して中間部クライマックスを形成すると、最後に分散和音の特徴的なフレーズを合図に主題再現に繋がる。
・短いながらも手の込んだメヌエットは、主題をそのまま回帰させず、冒頭2小節の順次下行型をヴァイオリンとベース(及び合わせて演奏する木管楽器)で小節ごとに交替するという方針が取られている。しかも主題を担うヴァイオリン旋律は、冒頭では順次下行型の後にリズム的部分で僅かに上行するが、ここでは主題の対旋律として主題と同時に順次上行形が重ね合わされ、線的な連続性と密度を持った再現になっている。これに加えて(D dur)、(G dur)と転調密度も高めつつ(C dur)に復帰すると43小節で主題再現を締め括るわけだ。
・主題再現部分は提示部より拡大され、全体として[主題再現ーエピソード部分ー主題による終止]という構成になっている。すなわち44小節からは木管楽器が主題冒頭2小節の順次下行型を1小節ごとに導入していく薄い対位法的部分を形成し、52小節から輝かしいホモフォニースタイルの総奏により主題を終止風に変更しメヌエットを終えるのである。冒頭の簡単な半音階を含んだ順次下降主題が、Menuetto全体を見事に纏め上げているのは、密度に隙がなく見事である。

Trio(60-87)C dur

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・そんな密度の濃いメヌエット部分だからこそ、トリオは単純さと素朴さによって対比される。極めてまっとうな意見だが、ここまで単純化すると、かえって作曲するのに勇気がいるくらい音が少ないのがトリオである。Trio主題はまず属和音から主和音に和声的部分が解決すると、音階パッセージが下行型で答えるという4小節が、2回繰り返される簡単なものだ。しかもその旋律はやはりMenuettoの主題(G-F#-F-E-D-C-B)から由来しているから、非常に単一主題的傾向を持つスケルツォになっている。そしてこれに続く中間推移は、どうも驚く、(a moll)の保続属音(E)上で和声進行の中に「ドンドドドン」のリズムが繰り返されつつ、最後にバスが(E)音を離れ動き出し、トリオ主題が回帰するというシンプルなものだ。ここまで無駄なものをそぎ落としつつ楽曲の完成度の高さには改めて驚かされる。
・そしてメヌエットに帰って行くわけだ。

2006/07/19
2006/10/27改訂

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