シューマン 交響曲第4番 第2楽章

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提示部(1-26)

主題提示(1-12頭)a moll

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・(a moll)のⅣ2転で開始し、Ⅳ2転とⅠの交替の中で主題が開始するが、旋律はチェロとオーボエが担当する。弦楽器の伴奏部分のピチカートの印象、さらにサブドミナントとトニックの和音の交替が、6小節目からドミナントとトニックの進行に変わりながら(G dur)から(e moll)に流れ込む印象の美しさは、まさにシューマン。10小節目から主題に対するこだまのように低音で繰り返される主題応答の締めくくりは非常に隙がない作りだ。(そりゃ当たり前か。)

中間逸脱(12-22)a moll

・第1楽章の序奏旋律を使用した中間的逸脱により、楽曲全体の精神的統一を高めるが、これは動機的結合方法に対して共通楽句による結合方法で、交響曲の純器楽形式を損なうどころか、逆に非常に印象を高めているシンプルな作戦として成功を収めている。第1楽章の主題部分ではなく序奏部分だからこそ、明確にその印象を引き継ぎながらも、同時に第2楽章の中間的逸脱部分として、主題を殺さずに再現に引き戻す。しかも聞いていると直ちに第1楽章冒頭を思い返すから、印象により楽曲の構成密度は非常に高められる。なぜなら音楽における構成は製図や幾何学の出来ではなく、耳が判断するものだから。ちょっと逸脱するが、仮にこの部分を由来のない中間逸脱にする場合と、第2楽章の主題に由来する中間逸脱にする場合と、現在の形と、かりに小節数と中間逸脱という役割が同じだとしても、楽曲自体の構成は変化するのである。ここに音楽の面白さがある。
・ここではホルンの保続の響きと、遅れて入ってくる管楽器の印象などをお楽しみ下さいな。和声的には属和音とⅠ2転の交替が、16小節でベースラインが動き出すと同時に(a moll)のⅥ調(F dur)の長調の印象を与えながら、その場面で管楽器が投入される美しさ、そして21小節から和声交替密度が高まって主題を再現する所などは、譜面で理解してから謹聴すると、一層面白みが増すかもしれない。

主題再現(23-26)a moll

・非常に短い主題の再現は、主題冒頭部分だけを使用して、形式的に回帰した印象を与えるやいなや、最後に(D dur)に移行して、中間部に至る。この主題再現が短すぎる物足りなさは、中間部の旋律に振れる前の物足りなさや、寂しさを強調しているようだ。中間部を越えた後の再現では、ただ一度主題が完全に再現されるため、この部分では中間回想のように出して、楽曲のコンパクトな設計図を全うしている側面もある。

中間部(27-42)D dur

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・中間部は提示部の中間逸脱部分、すなわち第1楽章の序奏部分をベースにして、ヴァイオリンソロに豊かな修飾を加えた美しいものだ。そして一度生み出されたら、歌謡的にこのフレーズで己惚れ続けて中間部を終えてしまうのは、シューマンの真骨頂だ。美しい旋律には、どっぷりと浸りたいではないか。和声も豊かな表情を作るのに参加している。それは27小節後半から8分音符ごとに和声が連続的に交替し、これによって大きな和声変化の中で旋律が修飾された時とは異なり、微妙な陰影を付けて割り切れない揺らぎを表わしている。これは始め保続(A)音の上で行なわれ、和声を平行順次下行させていく時に生じた偶成和声によるが、中間部で長調に変わった和声が、27小節の後半の方に1回準固有Ⅳ和音の短調を挟み、再び28小節の頭で準固有のドッペル9和音を使用するなど、響きの陰影が印象的だ。さらに調性が(A dur)に変化したところでベースが(A)音を離れ、カデンツを踏むために動き出す印象など、細かく見ていくと興味深い点が沢山あるが、まあこのぐらいにしておこう。
・この部分は十全な中間部になっていて、始めに主題提示部分(27-34)が置かれた後、短い逸脱(35-38)があり、主題再現(39-42)が置かれている。主題提示部分はリピートが無いが、これは小説線の関係でリピート記号を使用できないためであり、主題は2回繰り返されているので、通常の中間部定型AABBの形を全うしている。

再現部(43-53)d moll

・最後に主題がもう1度確認されて曲を終える。調性的には提示部の(a moll)ではなく(d moll)で主題が登場し、それが最後に(A dur)で曲を終えるが、つまりこれが次の調性の属和音になっているから、アタッカでつなぎ合わされている。ただし音楽は完全に切れている。
・非常にコンパクトな設計を見せた2楽章は、古典派の楽曲のオーソドックスなスタイルである
[提示部(主題、中間逸脱、主題再現)ー中間部ー再現部(主題、中巻逸脱、主題再現)]
を大幅に濃縮して、形成される。初めの中間逸脱が発展して中間部が形成されることから、
[主題ー中間逸脱ー主題回想ー中間逸脱発展による中間部ー主題]
のような見方が出来るかも知れない。いずれ第1主題旋律と、第1楽章序奏の旋律だけを使用して、非常にコンパクトな形式を持っているが、さらにこれが第1楽章に強く関連づけられている点、自立した形式と共に、他の楽章と結びついた複合的な形式があるように思えてくる。だからこそ、この曲はアタッカが必ずしも必要とは言えないにも関わらず、循環形式的、単一楽章的形式を予感させる楽曲になっているわけだ。

2006/10/28
2006/11/06

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