20世紀の音楽

20世紀の音楽

20世紀の音楽
………資本主義的競争の極まった帝国主義ヨーロッパは富と近代科学の急激な伸張と現代的都市市民社会の形成に合わせるように、新しい芸術運動を引き起こした。芸術のイデオロギーが重大視され、芸術家達は自覚的に自己芸術に指向性を与えた。様々な芸術運動が華開き、音楽においては和声語法の拡張の果てにドビュッシーのパラレル的な和音配置や、ストラヴィンスキーのリズムと和声の実験、さらに無調性が模索されシェーンベルクは無調性を一歩進めて、組織的な12音技法を編み出した。 一方アメリカでは西洋音楽の潮流を引き継がない無頓着な新モダンスタイル音楽が模索され、これがヨーロッパの作曲家と思想的交流を果たし、旋律を重視しない音楽、不確定性音楽、演奏者任せの音楽などをも生み出す原動力となった。さらに録音、シンセサイザーなどの新技術が新しい音楽を生みだし、採取された音を元にしたミュージック・コンクレートというジャンルも生まれた。
 しかし伝統の排除は作品の底辺を浅くし(芸術作品は共有される伝統の上に新機軸を打ち出す時にこそ深みを増す傾向がある)、情緒の揺さぶりを度外視した誤謬(ごびゅう)的な数学その他の導入により、自ずからその価値を減少し、演奏者の自由な裁断に委ねる音楽は、本来自由即興を旨とするジャンルに対して硬直した偽りじみた作品を生みだした。空論によって味付けされた諸作品が、伝統の延長線上に作品価値をこね回す学者達によって音楽史上に連なり、多くは社会受容を無視した価値を認められているに過ぎないようにも思える。しかし、20世紀的であり同時にすぐれて芸術的な作品は多々存在し、結局は学者ではなく人々によって、正統に淘汰されているように見える。
 一方で人々の関心は圧倒的にポピュラーミュージック、さらに伝統的な過去のクラシック音楽に向けられた。その意味で、現代はまさに調性音楽の時代である。調性のエネルギーは、人間の情緒をもっとも効果的に動かすことの出来る音楽的な武器であり、西洋音楽が生みだし、人類の共通語法に到ることの出来る、唯一のユニークな技法であったと言えるかもしれない。なお、ヒットソングとしてのポピュラーソングは最下層の音楽を形成しているだけのものも多いが、同時に芸術的に過去の遺産に匹敵し、時代の象徴たり得る作品も存在し、ポピュラーソングであるという理由で、芸術的音楽史のジャンルから外すことは、全くもってナンセンスである。
 付け加えるなら、21世紀にもなった今日、20世紀の音楽、特に大戦直後頃の音楽を指して、現代音楽と呼ぶのはあまりにも時代錯誤が過ぎるように思われる。
第20章 20世紀ヨーロッパの主流
………中欧、民族主義的音楽。ベラ・バルトーク、コダーイ。ソビエト圏の作曲家達。プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ。イギリスのホルスト、ヴォーン・ウィリアムズ。ドイツのヒンデミット、カール・オルフら。そしてフランスの新古典主義運動と、ストラヴィンスキー。
第21章 20世紀ヨーロッパにおける無調性、音列主義および最近の発展
………アルノルト・シェーンベルクによる無調性の発展から12音技法へ。アルバン・ベルク、アントン・ヴェーベルンらの活躍。メシアン、ブーレーズ、シュトックハウゼンらの登場と、トータル・セリー技法の確立。ヘンリー・カウエルのトーン・クラスタや、ジョン・ケイジの不確定性。テープレコーダーの登場によるミュージック・コンクレートと、シンセサイザの使用。連続体としての音の使用など。
第22章 アメリカの20世紀
………アメリカ固有の音楽。ラグ・タイム、ブルース、ジャズ、そしてロックの登場など。チャールズ・アイヴズによる国民的作曲家の登場。ヘンリー・カウエル、エドガー・ヴァレーズらの追随。戦後ロジャ・セシャンズ、エリアト・カータらの活躍。電子音楽と、ジョージ・ガーシュインに始まるジャズとの融合の道、サード・ストリーム。そしてお騒がせなキノコおじさんこと、ジョン・ケイジと不確定な仲間達。コンセプト・アートもよろしくね。テリ・ライリ、スティーヴ・ライヒらのミニマニズム音楽など。そして時代はポストモダンへ。

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