歌詞に見る全体の見取り図

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歌詞に見る全体の見取り図

 歓喜の主題を中心とする変奏形式で楽曲の統一性を持たせた、歌詞と共に形成されるオラトーリオ的合唱形式なので、出来の悪い子供のように絶対に入らない形式に当てはめて、解説をぶちこわして泣き出すのは止めて欲しいそうです。
 ここでは器楽部分を1として、大きく4つの部分に分けて見取り図を提示し、その各部分から詳細の解説にリンクを張っておくことにしましょう。しかしその前にまず歌詞自体を考察する必要があるので、さっそくこちらに飛んでみて下さい。
<<シラー「歓喜に寄せて」からの歌詞選択>>

1.器楽序奏から導入部分(1-236)d moll

<<器楽序奏楽曲解析>>

器楽序奏(1-215)

・破壊的な序奏に続いて、レチタティーヴォ的にベースが目的旋律を探すようにして前3楽章の回顧が行なわれ、歓喜主題の器楽提示と変奏が合わせて4回提示されると、破壊的な序奏が再び提示されるが、次のレチタティーヴォで声楽が導入されその響きを否定する。

レチタティーヴォ(216-236)d moll

友よ、このような響きではない!
もっと心地よい響きを奏でよう、
もっと喜び溢れた旋律を。

2.「歓喜に」の歌詞全提示部分(237-654)

<<歌詞提示部分楽曲解析>>

歓喜の主題による各詩節前半提示(237-330)D dur

(Allegro assai.)
[詩節1前半 -歓喜の主題による]
(ソロ)
歓喜、美しい神々のきらめき、
エーリュシオンの娘達、
炎に酔い我らは踏み進む、
聖なるもの、貴方の神殿に!
神秘の力で貴方は結び戻す、
激しく時代が引き裂いたものを。
すべての人は兄弟となり、
貴方の翼に抱かれるだろう。
(合唱)
神秘の力で貴方は結び戻す、
激しく時代が引き裂いたものを。
すべての人は兄弟となり、
貴方の翼に抱かれるだろう。

[詩節2前半 -歓喜の主題変奏1]
(ソロ)
大きな勝利の恩恵を授かり、
一人の親友の信頼を掴(つか)んだもの、
一人の優しい妻を勝ち得たもの、
共に喜びの歓声に加わるのだ!
ただ一つの魂でも我が友と
地上に呼ぶ者が居るのならば!
しかしそれが出来ないような者は、
密かに涙してここを立ち去るがいい。
(合唱)
ただ一つの魂でも我が友と
地上に呼ぶ者が居るのならば!
しかしそれが出来ないような者は、
涙して密かにここを立ち去るがいい。

[詩節3前半 -歓喜の主題変奏2]
(ソロ)
すべての生命は歓喜を飲み
自然の乳から歓喜を啜(すす)る、
善き人々も、そして悪しき者も、
バラ咲く道を辿(たど)るのだろう。
口づけとワインを授けた歓喜は、
生死を分けた友さえも与えてくれた。
虫けらさえ官能の喜びを授かり、
智の天使ケルビムは神の前に立つのだ。
(合唱)
口づけとワインを授けた歓喜は、
生死を分けた友さえも与えてくれた。
虫けらさえ官能の喜びを授かり、
智の天使ケルビムは神の前に立つのだ。

詩節4後半提示による中間部(331-542)B dur

(6/8拍子、Allegro assai vivace,alla Marcia.)
[詩節4後半]
(ソロ)
楽しく太陽が駆け抜ける、
天上の壮大な規則に従って、
駆け出せ、兄弟よ、己(おの)が道を、
喜び溢(あふ)れ、勝利に進む英雄のように。
(ソロ+合唱)
駆け出せ、兄弟よ、己(おの)が道を、
喜び溢(あふ)れ、勝利に進む英雄のように。
(器楽によるフゲッタ部分が続く)

詩節1全体と詩節後半提示による後半部(543-654)

(6/8拍子のままD dur)
[詩節1前半再現 -歓喜の主題変奏3]
(合唱)
歓喜、美しい神々のきらめき、
エーリュシオンの娘達、
炎に酔い我らは踏み進む、
聖なるもの、貴方の神殿に!
神秘の力で貴方は結び戻す、
激しく時代が引き裂いたものを。
すべての人は兄弟となり、
貴方の翼に抱かれるだろう。

[詩節1後半(3/2拍子、Andante maestoso)G dur→F dur→C dur]
(合唱)
抱き合え、すべての人々よ!
そして口づけを世界に!
兄弟よ、星空の遙か彼方にはきっと、
一人の愛(いと)しい父が居るだろう。

[詩節3後半(Adagio ma non troppo,ma divoto)g moll→F dur→g moll→D dur]
(合唱)
ひれ伏すのか、すべての人々よ?
万物の創造主を感じるか、世界よ?
星空の向こうに創造主を求めよ!
星々の先に必ず彼が住んでいるから。

3.詩節1全体の歌詞による歓喜への讃歌部分(655-842)

<<残りの部分楽曲解析>>

2重主題によるフゲッタ部分(655-729)

(6/4拍子、Allegro energico,sempre bin marcato.)
[詩節1前半後半による対位](歓喜の主題に基づく主題による)
(合唱、①②を同時に対位法で)
①歓喜、美しい神々のきらめき、
エーリュシオンの娘達、
炎に酔い我らは踏み進む、
聖なるもの、貴方の神殿に!

②抱き合え、すべての人々よ!
そして口づけを世界に!

詩節3と1の後半による中間部分(730-762)

(B dur→d moll→F dur→g moll→A dur→G dur)
[詩節3後半]
ひれ伏すのか、すべての人々よ?
万物の創造主を感じるか、世界よ?
星空の向こうに創造主を求めよ!
[詩節1後半の後半]
兄弟よ、星空の遙か彼方にはきっと、
一人の愛(いと)しい父が居るだろう。

4.詩節1による歓喜に満たされた祝祭歌的部分(763-940)

詩節1前半による祝祭歌(763-842)

(2/2拍子、Allegro non tanto)
[詩節1前半]
(ソロ)
歓喜、美しい神々のきらめき、
エーリュシオンの娘達、
炎に酔い我らは踏み進む、
聖なるもの、貴方の神殿に!
神秘の力で貴方は結び戻す、
激しく時代が引き裂いたものを。
(合唱)
神秘の力で貴方は結び戻す、
激しく時代が引き裂いたものを。
すべての人は兄弟となり、
貴方の翼に抱かれるだろう。
[poco adagioの合唱によるカデンツァ→Tempo Ⅰ]
神秘の力で貴方は結び戻す、
激しく時代が引き裂いたものを。
すべての人は兄弟となり、
貴方の翼に抱かれるだろう。
(ソロによる、poco adagioのカデンツァ)
すべての人は兄弟となり、
貴方の翼に抱かれるだろう。

コーダ的、詩節1後半による熱狂的な祝祭歌(843-940)

(2/2拍子、Poco Allegro,stringendo il Tempo,sempre piu Allegro)
[詩節1後半]
(合唱)
抱き合え、すべての人々よ!
そして口づけを世界に!
兄弟よ、星空の遙か彼方にはきっと、
唯一の愛すべき父が居るだろう。
[詩節1前半1行目]
歓喜、美しい神々のきらめき、
エーリュシオンの娘達

2005/07/11

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