2016年和歌拾遺

2016年の和歌拾遺

 自ら落書きし、サイトのコンテンツにも採用されず、置き去りにされた和歌を、ここに残し置くもの。

3月頃

枯れ葉踏む夜来に遠き犬の声

     「あるいはまた」
枯れ葉踏む
  夜更けてすさむ犬の声

[完成前の思案を幾つか]
枯れ葉踏む夜更て遠く犬の声
  夜更けして枯葉にわたる
  遠夜に響く犬の吠え
  遠吠え渡る
  夜来に渡る犬の声

朽ち殻を
  白砂へかへし 納めして
見送る君へ 祈るともなく

ぬくもりは
  羽ばたき鳥の 夢見して
    ねむるみ空に かけ/\の月

銀河の果て
   アルカディアめざした 素粒子の
 さみしさくらいを 道しるべとして

振りまけて
   振りだしにする 双六の
 さいの目ほどの いのちともがな

いつか僕の
  還元される 分子には
 またそれぞれの いのちともがな

ほのか/\
   ともし/\して うた歌う
 ひとりひと夜の ひとしずくの夢

とも人も
  はらからさへも ぬばたまの
    星なき夜を ひとりつまづく

こわれかけ
  その場にあゆむ 単三の
    うつろな夢した あやつり人形

朝の夢
  夜ふけは風の すさびして
    折れたつばさの
  あとしまつに似て

9月以降

酔ひ起て
  朝日を厭ふ 魔物かな

振り石の
  三段跳びや初氷

君の腕
  おぼろの髪のもつれかも

赤ふうせん
  のぼる御空を つかむ手を
 あやす御母の いのりやさしさ

好き人の語りも尽きて寝待月

      「炭焼な落書」
ブリキのおもちゃと足蹴にされて
  転げ落ちる階段から飛び散る火花の
    散り積もるみ墓となるのがオチである

花誘う
  眠りは春の 恋をよみ
    まだ見ぬ人を 待ちわびるかも

かくのみしことのみまさる師走かな