祖父の身まかりたるに詠める

2015年師走

2015年12月25日
   祖父の亡くなりたる夜も更けて
 日の移り変はりたるによめる

ますらをの黄泉路も歳の果ならむ

撃たれし友がもとへかきみが魂

わかれては
   けがれなくして なきがらの
 天(あま)へと馳せる きみがみたまは

あるじなくて
   師走にひらく さつきかな

汝と吾
  時瀬の波に 酔ふ酒は
    語りも尽きず
  朝ぼらけかな

幼き頃
  敬意に満ちたあなたへの
    わすれた思いつかの間よみがえる

切りし菊のみたまも影となりぬべし

冬の夜の竹に消えたるほたるかな

   「線香一本」
ゆらゆれるけむりのかげを聞く身かな

墨染めの
   すゞり文字して ひと筆の
 竹がこゝろか きみの生き方

朽ち殻を
  白砂へかへし 納めして
 見送るきみへ 祈る友垣

あるじ失せて
  咲き乱れたる さつきかな


 いくさよりもどりたる祖父の長寿の果てに亡くなりたるに際し、即時的にものしたる歌に過ぎざれば、その生涯に及ばざる事はるかなれど残しおくものなり。