同一精神上のアリア

同一精神上のアリア

弱り切ったその人は
  酒を飲ませてももう駄目で
 意気消沈を友として
   怠惰を抱えて揺らいでた

風前の灯火なのだと
  ちょっと笑った笑顔には
 やつれたような能面の
   いつわりの表情が浮かんでいた

ただ歳月に流されて
  朽ちゆく枯葉を待つような
 その精神は干からびた
   がさがさとしたけがれして

遠くみずみずしい頃の
  おもかげと結びついた記憶ばかり
 最後のよすがに寄り添って
   毎日はあてもなく流れ去るのだった

弱り切ったその人は
  まもなく必死にしがみついた
    たましいの糸さえぷっつりと
  断ち切られるには違いなく

後はあの例の薄汚い
  大同小異のがさがさとした
    枯葉どもは大地に寝そべって
  霜にまみれて笑いながら

無意味な一生を終えるだろう
  もう生まれてこなければよかったなんて
    そんなみずみずしい感性すら
  無くした醜態の末路に

無様な一生を終えるだろう
  かさかさと干からびた手の甲を
    大したものだとなぐさめ合うような
  不気味な宣伝に寄り添いながら

みずみずしいものを憎みながら
  心の本当はただうらやましいばかり
    「近頃は」なんてローマ時代からの
  自らにおもねったような台詞……

その口吻のうちに滅ぶだろう
  それこそあなたがた同一精神上の
    レールのなれの果てに横たわる
  あまたの実例に彩られた

やがては訪れるべき
  悲しい末路には違いありませんから。

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