子供しか知らない世界

子供しか知らない世界 走書

子供しか
  知らない世界 見つめても
    気づかれない夢 花のささやき/街角のワルツ

お空に僕
   見たんだでっかい ねり歩く
 僕に手を振る 雲の神さま

雪だるま
  おそってくるぞ 秘密基地
 迎え撃ちます いのち掛けして

遊び疲れ
  寝そべる膝に おぼろ月

春めく妹の仕草に困る坊やかな

おぼつかず満月つかむ仕草かな

11月の雪 (11/24)

 酔いどれの朝、何十年ぶりかのこの地の雪を眺めて、
  干からび掛けの感慨に、わずかなる清らかさを得て。

汚れた手/穢れ手を
   つのる御雪に うづめては
  おさなき頃を 思う侍/思ふ侍

天と地の
  白く交わる 不思議さに
    はしゃぐこころも 亡くしたけれども/今は亡くして

ぼた雪の
  重さにゆがむ もみじ葉の
    しぐれも知らず 折れる夢かも

ただ君と
  笑い合ったり ふざけたり
    それがいのちと 信じたくても

きよらかな
  ただきよらかな つかの間の
    まぼろしの影 汚れた靴あと

いつわりの
  聖者いつわりの 静寂と
    いつわりの唄に はしゃぐクリスマス

 それよりひと月前に
   降りつのる月の朝よ……

祖母の儀を
  週贈りして 雪の朝

あの子らは
  かつてのわたしの はしゃぎして
    遊んでいますか ふるさとの唄

わたしには
  眺める雪の 白ささえ
    塵や芥の 淀むさみしさ

もう二度と
  白くなれない こころして
    足を引きずる 老いぼれの犬

しあわせを
  転がす夢よ 雪だるま
    ほころびに付く 泥の見にくさ

それでも穢れた
   思い引きずりながら
      歩いていきます
   倒れるその日まで

朝雪を
  投げ合う子らの けがれなさ

俳人ども
   雪さえ泥の 詞書

あらゆる悪より
  汚れたたましい
    あらゆる汚物より
  醜い落書

それさえ覆い尽くして
  雪は白く染めてくれるでしょう

お前の醜さの
  慰めみたいに……
    あるいはまた……

わたしの醜さの
  慰めみたいにして。

お吸い物
  祓い雪して 三つ葉摘む
    一番出汁の かおり静けさ

夕べ君に
  贈ったメール 嘘だねと
    でもほらごらん 雪を贈ろうよ

愛し合う
  ふたりの肌の ぬくもりは
    もみじ雪した ふくよかさして

わさびして
   蕎麦欲しくなる 秋の雪

飲みかけの
   ボジュレこぼして しぐれ雪

山椒の
  もどり香りや しぐれ雪

すべからく
  いつも怠惰な 落書を
   繰り返しては 雪の秋かも

君の鼓動
   確かめたいな 秋の雪

老い朽ちて
  恋歌歌う そほどかな

雪を見て
  明日を夢みる 子どもらと
    今憂いする パラレルワールド

朝過ぎて
  歯磨きしながら 見る雪は
    醒めかけ酒の つまらなさして

大福を
  五つ並べて 雪もよい

そばがきの
  ずっしりまとまる はしり雪

投げられて
   てへと舌出す 恋人の
 笑い声さえ ゲレンデにして

夢にもつれ
  絡まる雪の ゲレンデに
    恋人たちの キスも喧嘩も

賛美歌を
  奏でる雪の 静けさは
    秋の夜更の 軽便鉄道

りんどうに
  飾り雪して ほのかかな