あなたに触れたくて

あなたに触れたくて

あなたの声がつらいよ
そのほほえみが遠くって
朝焼け色した鳥たちの
ささやきが切ないよ

あなたの声が哀しいよ
そのやさしさが遠くって
夕焼け色した三日月の
やるせなさがひとみにじむよ

人のいのちは知性だって
ふざけた学者が高らかに述べるよ
あふれるような想いがすべて
言葉が結ばれたにすぎなくって

あなたの声がいとしいよ
その切なさがあらゆるすべてで
冗談じゃなく、生きるということの
心理は知性なんか知らなくって

あなたの声が欲しいよ
あらゆるあなたを奪いたくって
けれどもそれはわがままで
あなたの幸せにならないなら……

ただあなたを祈るよ
あなたを歌うそれだけが
本当のいのちの欲求で

図書館のあまたの落書きなんて
いつわりのでくの坊に過ぎなくって
がらくたみたいな知能とかなんとか
おびえるべき価値はみじんもなくって

こころからあなたを
ただあなたのことだけを
触れずに愛して祈っているのです。

ただそれだけが
わたしのいのちのすべてなのですから。

   [P.S.]
あなたは知るよしもないでしょう。
  いつでもあなたのことを、
    歌い続けているのですから。