あなたに触れたくて
干からびた大地が求める恵みのような
萎れかけの花がすがりつくなぐさめのような
ただ染み渡るような一滴のいのちのしずくが
僕らをよみがえらせたんだ
そのときすべての世界は裏返り
しらふの誓いは逢魔が時のまやかしとなり
ひたむきな宣誓は悪魔のささやきにも似て
ただいのちのしずくの喜びだけが
にごった現世の淀みを
澄み渡らせる浄化溶媒のように
錯覚されるなんて誤りであるみたいに
信頼のより所となってしまうなら
僕らはいつもあいつにやられるんだ
ささやきもせずただぶっきらぼうな
僕らを見下すみたいなあいつにどうしても
ときめきは引きつけられてしまうから
ほんの指先が触れ合うだけでも
鼓動が高鳴るのを感じるんだ
たちまちあなただけがすべてになって
他のあらゆることは
いつわりのように想われたんだ
口づけを交わしたくなったんだ
もつれ合うあなたとの時間だけがすべての
究極の定理のように感じられて
それ以外のことは何もかも
いつわりのように想われたんだ
ただそのひとみに酔いどれて
うれいのない喜びの島をさ迷うとき
翌朝目覚める味気ない世界がただ
いつわりのもののように哀しくて
僕はまたそっと待ちわびる
真実にそそのかされる瞬間を。