ただひとり
消えゆく花の わびしさに
まつりがこゝろ 今はなくして
気づけばまた
ひとりぼっちした 宵闇に
誰(たれ)ひと言も 雉の鳴き声
人でなし
結ばれた手の みじめさは
おなじ色香に 染まる花園
風の声 もう聞こえない
星の歌 けがれた空に 聞き耳立てゝは
おかしいね
ひとり言して 答えてた
今日の唯一の 言葉なのかな
もう誰に
話しかけても 通じません
舞い狂います 誘蛾灯のした
三日月の
まねして口を にこやかに
またなみだする わたしなのかな
朝起きて 顔を洗えば
包丁に 小指を刺して
ふいになみだ目
いちずな いのちでなくて
堕天使の 嵐の前の キャンドルに似て
いまはいま 歩いて行きます
明日は今日 歩みの影を 染める夕焼
よろこびを 明日は夢みて 歩いてく
いつか歩みを 止める宵まで
なぎ倒す 嵐は過ぎて
街灯に ブリキを踏めば 軋むもの影
ふるさとは
花の気配に 包まれて
やさしく笑う 果て待ちの人
風祭
神宿り木の 旗折れて
闇の祠(ほこら)に すさぶ荒潮
山裾は
夕べ野分の 折れ幹を
掛け声あげる 古き男ら
/呼び声あげる 古きものゝふ
最果て
港は凪の きな臭さ
うらぶれ船に 干れ藻取憑く/藻塩取憑く
風は荒び
ずぶ濡れに泣く 猫の子に
不意のブレーキ 耳をつんざく
忘れかけ 胸の痛みは
砂時計 あの日の夢を
起きてまさぐる
忘れかけ 痛んだ夢は
砂時計 起きてまさぐる
あきらめに似て/きれずに
ただ○が
描きたかった よろこびを
忘れて描く 画家の生涯
ただ○が
描きたかった よろこびも
木の葉枯れては 散りゆくこの頃
真っ白な
夜更け窓べの 清らかさ
けがれを祓う 深雪ばかりは
錆び鉄の
いつを閉ざしてはつ氷
はしゃぎした
日だまり慕う 猫の老
かわになの
夢さへ食らう ほたるかな