あなたへ贈る歌
その人が認められていればうれしくて
その人が褒められていればしあわせで
その人が中傷されたら許せなくて
その人がけなされていたらいたたまれなくて
でもその人からしたらわたしは関係なくて
わたしはその人のためにはなにも出来なくて
その人が悲しんでいることはわたしには
どうすることも出来ないことなのに
その人が認められていればうれしくて
その人が褒められていればしあわせで
その人が中傷されたら許せなくて
その人がけなされていたらいたたまれなく
それはその人と同じなりした人形が
同じ声をして笑いたててみせても
同じ歌声をしてさえずってみせても
まるでわたしには関係のないことで
ひたすらその人でなくてはいけなくって
それなのにその人にはどうしても伝えられなくって
けれどもその人でなくては生きていれなくって
ただその人を守りたくって、守りたくって……
そうして自分にはなにも出来なくって
もどかしくってまたささやいてみる
あなたが幸せでありますように
せめてそう祈っているのです。
[P.S.]
あるいは世界主義とやらが
そんな愛をマージナルなものだと糾弾して
全体人類愛のゆがんだ姿と定義しても
わたしには関係の無いことです
わたしはわたしの思いだけを
ひたむきな結晶とかかげて
さみしく滅んでゆくでしょう
それがわたしの望みなのですから。