浅き夢見し
(注.読み返しなし)
僕のこころが振り出しに戻れたら
見えすぎたまわりから浴びせられた
泥まみれのみすぼらしさに
打ちのめされずにいられるでしょうか。
僕のこころが青ずっぱいあの頃の
感傷から抜け出せずにいられたなら
あきらめみたいな悲しみを
身にまとうことはなかったのでしょうか。
けれどもこんな自分のままで
しどろもどろに浜を蹴り上げる真似して
あの頃の輝きを取り戻そうとしても
かもめの笑うような夕ぐれです。
消えゆく悲しみが寄せ返す、
秋のなぎさのわびしさが、
いつしか自らの友となって、
わたしのこころとなずみます。
抜け出せないまま沈みゆく、
真っ赤な太陽が水平線へ、
にじんでゆくような終わりです。
それを逃れようと鳥たちが、
いつわりの歌詞を奏でても、
それはただ鳥たちの、
感傷という名の逃避です。
真実は消えゆく太陽と、
おとずれるもの静寂の、
星と風とのなぐさめと……
夢へと返すなぎさです。
いつわりのまばゆさの物語……
気がつけば語るその手には
消されないあざが重ね合い
本当の情熱の残骸も
むなしくくすぶるばかりです。
やがておとずれるあきらめと
たわむれるような夜も更けて
静かに横たわるその人の
憑かれたような悲しみに
いつわりの情熱をゆだねても
いびつな夢の気配です。
それなら今はただ静かに、
二度と戻れないあの日を
二度と真実とはならない
あの日の素敵な感情を
なぐさめにして眠りましょう。
だってそれだけが今のあなたの、
たったひとつの本当なのですから。