蛾の唄

蛾の唄

わたしの時間が過ぎていきます
いつわりのきらびやかさしたあそびして
大切な時間が流れていきます
砂粒のきらめきをもてあそびながら

与えられたものばかりが肥大して
ほたるのともし火を奪い去るみたいに
与えられた快楽に舞い踊る
遊ばれたがりやの虫の習性みたいに

未来は定規で引かれた
まっすぐな線のように安全な
舗装道路のしきたりを
疑いもせず明日へと向かって

ベクトルに従う規律みたい
砂糖に群がる行列みたい
おなじ仕草の蟻のよう
識別番号を個性として

同一線上のアリアを奏でます
天然と人工のまだらした
滑稽なペイントで塗りたくって
唯一のみずからの証として

それが個性とはしゃぎます
鱗粉にまみれたあざやかな
模様をおしゃれと集います
おなじ光に舞をして

ほんのわずかなその外に
広がる夢は知りません
ほんのわずかな暗闇に
またたく星は分らない

おとぎの国の夢がたり
黄金をむさぼる着ぐるみに
抱かれていればしあわせな
液肥みたいな養分です

みずから基準のひとり言
会話としてはひと筆の
傷つき恐れる臆病な
探り合うような動物は

人の言葉のそれでなく
ゼンマイ仕掛のお人形
自動採取の会話より
逸れることさえなくなって

おなじ素材のカラフルに
競い合うような単質の
光に群がる文様が
互いのすべてと成り果てて

ぶきみな鱗粉をまき散らし
不自然なジェスチャーを友として
道化師みたいな表情で
奇声を上げて笑います

群がるほどにそれでしか
個を保てないそのことが

分らないほど単一の
習性をした夏の夜の
哀れな舞は舞い踊る
悲しく眺める星の下で