七夕への返信

今はこれにて

雲は西に
  鳥は東へ しのゝめに
    わずらう犬は 錆びた鎖を

星に指を
  伸ばしてみても 冬銀河(かさゝぎの)
 慰めさえも こぼれきらめく

生まれ日の
  ひと巻き糸の 星巡り
    もつれゆきます 歳のしがらみ

ろうそくの
  世迷いごとの ともし尽き
 誰もが人で なくなるものかは

夕焼けは
  不思議な星して とんぼ色
    眺め尽くした あの日いずこへ

ほおずきは
  はるかな君の 頬の色
    ゆらゆれゆれて 風のまにまへ

ほたる火よ
   葉かげは風の せゝらぎよ
  かすかな夢は ながしながされ

果ての香よ
  酒上の夢よ まぼろしと
    あざ笑うもの 夢に果てよと

ときかゞみ
   盛りの夢は 幻影の
  ともしも尽きて やがてまぼろし

      (時乃旅人)