本当の歌とは

それは不体裁な姿して

 けれどもわたしだけには、本当のたったひとつの歌だから。どれほどの嘲弄にもてあそばれても、譲ることの出来ない信念なのかも知れません。それは例えば、

星の果

あの日あなたを 抱きしめておけばよかった
  秒針はあの日と 変わらない刻みをしたけれど

あなたはいつしか 別のあなたに
   わたしもいつしか 別のわたしになって

それでもいつまでも生き延びて
  もし星のかなしみの終わり日に
    あなたと二人きりで
  最後のふたりでもしいられたなら……

もう生き物の気配さえなくした
   静かな凪の朝焼け色した海さえも

なんだか愛おしくって涙です。
  そうして最後のあなたのぬくもりだけが

此の世の最後のすべてですから。
  あなたとわたしの終わり日ですから。

生き延びてきた嫌な気持ちも
  はじけ飛んではしおさいです。

そうしてただあなたのぬくもりだけが
  幸せの意味だったことを悟るでしょう。

ようやくそれに気づいたから
  僕は「ごめん」といって打ち明けて

口づけをしてふたりはきっと
  星のかなたへと消えてゆく

最後のふたりを誇らしく
  愛おしくしては果てるでしょう。

消えても残される砂粒の
   きらめく星河原を信じるなら

しあわせ以外の何も無くて
  終わりのお日様にも挨拶を交わすでしょう。

おはようございます
  そうして本当にさようなら

ふたりの旅立ちの夜明けです。

すがすがしくてなみだです。