ひと筆書の祈り

ひと筆書の祈り

僕が僕だって思えることが
どんなに大きな幸せだって
ありきたりの毎日が
どこまでも続いていくって

いつしか甘えていたんだ
好き嫌いとかけだるいとか
食べたいものに夢中になって

お祈りの呪文さえもう
かた言も思い出せないくらい

笑い合えれば幸せだって
淋しい野原を歩いていた頃の
ほほえみだっていつの頃からだろう

ただ快楽を求めるみたいに
もっと美味しい物が欲しいなんて
笑い求めるような毎日……

はぐるまが少しだけ
かたちを変えたいびつみたいに
ひたむきなものは穢されて
嘲笑ばかりがさえずる夕暮

僕は憑かれたみたいに
そこから離れようとしたけれど
どこへ向かっても閉ざされた
メビウスの帯の物語

どうして生きているのだろう
どうして生まれて来たのだろう
それでも明日は来るのだし
歩いていかなければならないとして……

握りしめた指先の
ぬくもりが暖かくて
あなたのいることがうれしくて
生きていけたらそれだけで

そうして僕だって思えることが
あなただって感じられることが
どれほど素敵な奇跡だって
そんなあたりきの毎日が

たったひとつの本当の毎日で
たったひとつの本当の生き方で
たったひとつの僕の幸せだって

路傍の石を蹴りながら
落ちぶれちまっても、祈っているのです
愚かしくもあざ笑う、椋鳥の嘲笑の中で
ひとりさみしく祈っているのです

P.S.
読み返すことさえしたくない
そんなひと筆書きがしたくなる
そんな夜もあるものです

赤ワインのほのかな酔いと
誰かの素敵な歌にそそのかされて
落書きしてみたけれど……

つじつま合わせや
しがない縫合や
切磋琢磨した言葉の結晶など

しったことかと思うのです。
ただその刹那の真実に、
(たとえ不明瞭に犯されようとも)
ゆだねたい時だってあるのだから。