歌う百人一首038番「わすらるる」

歌う百人一首038番「わすらるる」

 こちらは、「大和物語」におなじ和歌がエピソード付きで掲載されています。

 あなたに忘れられた自分のことを、あれこれ述べたりはせん。ただ約束を破ったあなたが、罰を受けて命を落とすのが惜しいばかり。結句の「惜しくもあるかな」という表現には、「本当はまだ悲しいのです」くらいでは済まされ得ない、ある種の拒絶の心が見え隠れしているようです。

 この詠み手は、相手が捨てるとなったら、たとえ自らの悲しみを引き換えにしても、けっしてよりを戻したりはしない。こっちから願い下げだくらいの、強気を見せるような精神の持ち主のなのかも知れませんね。

 愛するが故に復讐を遂げることが出来る。そんなタイプの和歌のように思われます。

小倉百人一首038番「わすらるる」

忘らるゝ 身をば思はず
  ちかひてし 人のいのちの
    惜しくもあるかな
          右近

[忘れられてしまう 我が身を思ったりはしません
   ただ約束を破って 罰を受けるべきあなたの命が
     惜しく思われるばかりです]

解説

 解説はこちらから、
   ⇒大和物語084段