・わたしは結局、ただあなたのよろこぶ顔が見たくって、歌を詠んでいただけのような気も、今となってはするのです。わたしの手元には、あなたへ送った手紙やらメールの下書きだけが、沢山の残されて、それでいてもう歌を詠うだけの勇気は、何かを糾弾するほどの気力は、無くなってしまったらしいのです。いまはただ、何もかもが淋しい……
「さっちゃんへ」の中では、岩波新書より出版されている渡部泰明(わたなべやすあき)氏の「和歌とは何か」という書籍が、参考書として使用されています。古典の和歌を知るためには、分かりやすい書籍だと思います。物語では出版された日に買ったことになっているけれども、わたしがこれを読み始めたのは、二〇〇九年の一二月なので、実は古典和歌と修辞法の知識については、二三ヶ月の知識しか持たない点は、一応注意しておいた方がいいかと思います。