ある夏の日の思い出

ある夏の日の思い出

 日頃のニュースには戦争の惨事を伝えるとき、かつての面影と混じり合い、つかの間の幻想は、いくつかの落書きへと化すだろう。

砕け散る
  夢のことさえ 燃え尽きて
 廃墟と化した 街は夕闇

雨音は
  おとぎ話の お人形
 つんざくように よぎる銃声

姉の手を
  握りしめては 階段に
    うずくまります 真っ赤な人形

空赤く
  がれきに生えた 右腕に
   刻み続ける 生きた秒針

きらびやか
  花火とはしゃぐ 子はただれ
    かなたの空に 消えゆく夢ども

腕もがれ
  首をなくした 肉片の
    ポッケに朽ちた 写真一枚

爆風に
  あるじ亡くした 野良犬の
    声も立てずに 染まる夕暮

お日さまは
  がれきの山の けぶりして
    焼けただれてた ひまわり畑よ

誰をかは
  信じるものか 四つ辻に
    焼け転がるは 首無し地蔵よ

水をくれ
  水をください どす黒く
    焼けただれては うごめく人形